天守閣が現存する城は全国に12しかない。城をテーマにした著書を持つ評論家の八幡和郎さんは「文化庁は『木造復元』を求めているので、天守の復元をあきらめている自治体も少なくない。しかし鉄筋コンクリートの大阪城天守閣は、昭和の名建築として登録有形文化財になっている。木造復元にこだわるのではなく、地元自治体の選択が尊重されるべきではないか」という――。 日本人の美的感覚の原点とも言える城下町 城下町を故郷に持つ人は、日本人のなかで羨望せんぼうの的である。白亜の天守閣は華麗にして清冽、曲線が美しい石垣と碧い水を満々とたたえたお堀の見事なコントラスト、凛とした町並みのたたずまいなど日本人の美的感覚のひとつの原点とも言えるものがそこにある。 だが残念なことに、世界文化遺産・姫路城(兵庫県)のように、創建当時の美しさをそのまま今に伝えているのは例外的だ。天守閣が残っているのは姫路城に松本城(長野県)、犬山