「ロシアもウクライナも両方悪い」は不適切。細谷雄一教授の連続ツイートが「WEBで読める決定版と言える論考」と反響
20世紀の国際社会は、1928年の不戦条約や、1945年の国連憲章、そして国際人道法など、国際社会で共有するべき価値や正義を強化する方向で動いてきました。例えば、「政策の延長としての戦争」を禁止する戦争違法化(個別的自衛権、集団的自衛権と、集団安全保障を除いて)などは、国際社会で広く共有される「正義」となりました。 ですので、国際社会で、共有すべき価値や正義が一切ないわけではないが、全てが共有されているわけではない。その意味で、solidarityとpluralismとの双方が存在する。時代によって、それが破壊される時代と、それが強化される時代がある。今はそれが破壊されている時代です。 とりわけ国際社会において守るべき最も重要な規範である、戦争の違法化が、根本から破壊される可能性がある。それは、国際法上の合法性を担保する努力をほとんどしていないロシアのウクライナ侵略によって引き起こされてい
(2020年11月15日に書きましたこの論考について、その後さまざまな新しい動きや情報を入手して、大幅に改訂しました〔2020年11月17日2時40分〕。基本的な主張は変わっていませんが、細部で新しい情報をもとにして一部修正しました。) これまでかなり懸念していたことが、実現してしまうかもしれません。おそらく日本外交にとっての一つの大きな転換になってしまう可能性があります。 首相官邸から、次のような報道がだされました。 「ASEANと日本で、平和で繁栄したインド太平洋を共に創り上げていくための協力を進めていくことで一致しました。拉致問題については、心強い支援を得ることもできました。 明日、RCEP協定に署名します。自由で公正な経済圏を広げるとの日本の立場をしっかりと発信していきます。」ここで二つの点に注目したいと思います。第1は、「平和で繁栄したインド太平洋」という、従来の「自由で開かれた
2020年08月16日 中国の影響力工作という深刻な問題 「影響力工作」あるいは「誘導工作」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? ここ数年、安全保障や外交に関連した国際会議に参加すると、必ずと言ってよいほど中国による「影響力工作」についてのディスカッションとなります。英語では、「インフルエンス・オペレーション」となり、まだ定訳もなく、日本のメディアで扱う機会もそれほど多くはありません。というのも、水面下での活動ですし、情報公開ももっともなされない領域ですので、これについて深く知る機会が限られています。 この「インフルエンス・オペーレーション」を体系的に扱ったおそらく最初の一般書が、読売新聞の飯塚恵子さんが書いた、『誘導工作 ー情報操作の巧妙な罠』(中公新書ラクレ、2019年)ではないでしょうか。実態がよく分からないので、なかなか研究対象として深く知ることは難しいと思いますが、この著作は
家族葬が行われた増上寺には一般献花台が設けられ、多くの人が訪れた=7月12日午前、東京都港区(松井英幸撮影) 凶弾に倒れた元首相の安倍晋三。来月27日に米元大統領オバマ、フランス大統領マクロン、ドイツ前首相メルケルら各国の要人数百人が来日して国葬が挙行される。外交安全保障で積極的平和主義を掲げ、国際協調路線の枠組み作りを主導して「民主主義世界の擁護者」と肯定的に評価されたためだ。月刊各誌も改めてそうした功績に焦点をあてた。 7月9日付英フィナンシャル・タイムズ紙は社説で「安倍晋三は日本を再び世界の舞台に押し上げ、経済と外交で並外れたレガシー(遺産)を残した。とりわけ、安保政策は先見の明があり、安倍の名前は世界に生き続ける」と評価した。 慶応大学教授の細谷雄一は『中央公論』で「戦後日本外交の基礎を作ったのが吉田茂だとすれば、冷戦後の日本の外交路線をアップデートしたのが安倍晋三元首相」と指摘し
政治的立場を超えて、多くの政治家、政党が、今回の事件で安倍元総理逝去に哀悼の意を示したこと、そして病院搬送直後には、それまで安倍元総理を政治的厳しく批判していた多くの方が無事であることを祈っていたことに、日本国民が有する美徳を感じました。またそれは、暴力で政治を動かそうとする行為に強い反対の意見を示すという、ゆるやかな幅広い国民的コンセンサスが示されたことを意味していて、賞賛すべき姿勢だと思います。 おそらく安倍元総理ほど、世界中で広く名前が知られ、また世界中の指導者や政府からその逝去が惜しまれ、悲しまれる首相もこれまでいなかったと思います。また、憲政史上最長の政権であった記録も、客観的な事実として長く記憶されていくのだろうと思います。 少ない回数ながらも直接接する機会があった立場から回顧しますと、安倍総理ほど細やかな配慮をなさって、繊細な感情を持ち、他者への敬意を示してくれる政治家の方は
2020年08月20日 Political WarfareとInfluence Operation 少し前に「影響力工作」についてのブログの記事を書いたのですが、それについて一部の方からかなり激しい反発と批判を頂いており、少しばかり驚いています。「そのようなものはない」あるいは「デマを流している」というような批判が多いのですが、これは裏返せば、日本国内ではpolitical warfareやinfluence operationについて、おそらく安全保障専門家外ではほとんど知られていないということなのだろうと感じております。 私はこの分野の専門家ではなく、あくまでも下記のような文献や報告書から学んだり、あるいは国際会議に参加してアジアの安全保障などをディスカッションする中で、食事の席や休憩時間などに、外交官、軍関係者、そして一部インテリジェンス関係者の方、そして安全保障専門家の方などと意見
終戦から70年以上が経過した。慶應義塾大学法学部教授の細谷雄一氏は、先の戦争を「主体的に総括し、それを世界史の中に埋め込むことが重要だ」と語る。自国の戦争を、世界史として捉えなおす重要性について論考する。 ※本稿は『Voice』2022年9⽉号より一部抜粋・編集したものです。 「先の大戦」とは何か 戦争が終わって70年以上が経過した現在においても、日本においてこの戦争をどのように論じ、どのような性質であったかを位置づけるのは容易ではない。 そもそもこの戦争の呼称さえも定まっていない。「大東亜戦争」から、「太平洋戦争」へ、そして「日米戦争」や「アジア太平洋戦争」と、さまざまな呼称が存在する。 いずれの呼称を用いても、日本国民の間でコンセンサスを得られるようなものはない。したがって日本の首相や明仁天皇(現在の上皇)は、「先の戦争」や「先の大戦」という呼称を用いて、歴史を語っている。 だが、日本
2020年08月18日 中国の対日影響力工作という深刻な問題(補足) 前の投稿で、中国の対日影響力工作についてここ数年で、欧米のシンクタンクや政府機関がかなりの程度関心を深めて、調査を進めているということについて書かせて頂きました。 沖縄の中では、必ずしも「インフルエンス・オペレーション」についてのそのような海外のメディアや、シンクタンクでの調査について広く知られているわけではないかもしれませんので、なかなかその実態がどのようなものか、ご理解を頂くのが難しいところがあるかもしれません。 他方で、そのような動向については、海外のリベラル系のメディアもフォローしてきました。 たとえば、すでに四年ほど前になりますが、アメリカのBloomberg Newsが、デヴィン・スチュワート氏のCSISレポートでも私がコメントしましたような、沖縄独立民族運動の運動家と、中国の組織との繋がりについて調査をして
朝日新聞がトラス辞任に関して細谷雄一のトンデモコメントを掲載していたらしい。 下記記事のコメント欄より。 kojitaken.hatenablog.com suterakuso 他の人のツイートで朝日にへんなトラス評が出ているのを知りました。 https://www.asahi.com/articles/DA3S15452290.html ><考論>英トラス首相辞任へ、背景は 細谷雄一氏、ティム・ベイル氏 有料記事 2022年10月22日 5時00分 ▼3面参照 ■ポピュリズム的政策、見透かされ 慶応大・細谷雄一教授 トラス英首相は、危機下の経済政策で貧困層と富裕層の両方を満足させようとした。大規模な財政出動を伴う社会民主主義的なパッケージだったが、トラス氏が政治的に合理的と考えた判断は、経済的には合理性がなかった。結局は両方から批判を受… この記事は有料記事です。残り1000文字有料会員
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