筑波大学と弘前大学の研究チームが研究費と研究成果の関係を調べたところ、高額を少人数に集中して配るより、少額を多くの研究者に配る方が画期的な成果を出せることがわかった。国は「選択と集中」を進めてきたが、基礎研究では「薄く広く配った方が効果的だ」としている。政府が優れた研究テーマを公募する競争的資金の中で、主要な事業である科学研究費助成事業(科研費)を分析した。科研費は文部科学省所管の日本学術振興
京都大学の附置研究所である霊長研は、1967年に愛知県犬山市に設立され、1975年に完成した。野外研究と実験室研究を架橋する学際的なアプローチを推進し、さまざまな画期的成果をあげてきた。中でも飼育チンパンジーを対象とした研究は高い知名度を誇っていた。この分野のリーダーであるA教授とその研究グループは、巨額の研究資金を獲得し、最先端の研究設備を整えるとともに、国際的な人材育成・交流を推進していた。 しかし、大型研究プロジェクトを推進する過程で「研究資金の不正使用」と、別の教授による「論文の捏造」が発覚。21年10月、京都大学の総長は、これらの不正行為を見逃した霊長研全体の責任を問い、研究所の改編を決定した。 実験室研究の教員は新設のセンターに集約され、野外研究の教員は学内の関連部局に分散された。不正事件に直接関わった部門は廃止となり、教員の補充人事も凍結。この措置により多数のポストが消滅し、
鈴鹿医療科学大学の豊田長康学長は、国立大学法人化や新医師臨床研修制度などの科学技術政策による研究力低下を可視化した。経済学などで使われる自然実験という観察研究手法を用いて、政策の対象群と非対象群の大学を比較した。すると国立大学法人化による負の影響が最大となった。研究力を引き下げている可能性がある。 2004年の国家公務員総定員法と大学院重点化に加え、国立大法人化、新医師臨床研修制度の導入、06年の薬学部6年制の導入の4政策の影響を検証した。この前提に04年ごろから日本の研究論文の質と量を掛け合わせた研究力指標が低下しており、その背景には研究者の正味の研究時間と研究者数が減少していることがある。 4政策の対象となっていない早稲田大学などの私立で医学部や薬学部のない総合大学15校と、政策対象となった国立大学を比較した。すると00年から21年で非対象群の私大は1・3倍ほど研究力が伸びているのに対
Posted December. 25, 2023 08:20, Updated December. 25, 2023 08:20 「大学の都合により2024年度の新入生募集は行わないことをお知らせします」 大学入試の出願受付けを控えた今年9月8日、江原道太白市(カンウォンド・テベクシ)の江原観光大学のホームページにはこのような知らせが掲載された。同大学は数年間、新入生不足でいくつかの学科が閉科し、赤字状態だった。地元では同大学の廃校の噂も飛び交っている。 学齢人口減少の危機は大学も例外ではない。特に地方大学は存続の危機に瀕している。学生数が急速に減り、大学進学希望者が大学の定員を下回るようになった。地方国立大学の中には、大学修学能力試験(日本の大学入学共通テスト)の成績がなくても入学できる学科もある。ある地方大学の関係者は「地元の高校生たちも『首都圏の大学に行けるのに、地方の大学に行くも
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*****これは野球コラムである 「東大と京大が落選!」 大学の業界を大きなニュースが駆け抜けていった。文部科学省が進めていた「国際卓越研究大学」の最初の選定から、日本国内における最有力大学として知られる二つの大学、東京大学と京都大学が落ちた、というのである。この「国際卓越研究大学」とは、世界トップクラスの研究力をめざす大学を数校選び、政府が支援するものだ。原資は政府が支出する10兆円規模の大学ファンド、この運用益等を基に年に数百億円を配る計画である。支援は2024年度から始まり、最長で25年間にわたるという。 選ばれたのは「いつもの大学」ではなかった 預金貸出金利が0%に近いこの時代、果たしてファンドがどの程度の利益を出せるのかは不明であり、更に悪い事にこのファンドは、昨年度には600億円もの赤字を出している。筆者が運用している投資信託でも、もう少しは利益を出しているから驚きである。しか
少子化により私立大学が定員割れしていることを受け、文部科学省は、大学同士が連携や統合する相手を見つけるためのマッチングシステムを開発する方針であることがわかった。 2022年の春に、入学者が定員割れした私立大学は、全国598校中284校に上り全体の47.5%を占め、過去最多となった。 この問題をめぐり、文科省は他の大学との連携や統合を検討している大学が、条件の合う大学を見つけるためのマッチングシステムを開発する方針を固めた。 私立大学の情報を管理する事業団が、システムの開発を進めるということだ。 日本私立学校振興・共済事業団の福原紀彦理事長は取材に対し「いまこそ正念場だと私は思う。合併や統合が進むように、できるだけの情報共有は図りたい」と述べた。 文科省は、システムの開発を含む大学の支援策として、来年度の概算要求におよそ3000億円を盛り込む方針で、「少子化が進む中で私立大学は留学生の受け
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少子化で18歳人口の減少が続く中、中部9県(愛知、岐阜、三重、静岡、長野、滋賀、福井、富山、石川)に主要なキャンパスを置く私立大の計88校のうち、61%にあたる54校が2023年度に定員割れとなっていたことが、本紙の調べで分かった。全国の割合と比べて8ポイント高く、21年度の45%から約16ポイント上昇しており、中部地方で学生募集が急激に厳しくなっていることがうかがえる。私立大の運営は学費収入への依存度が高く、将来的な大学経営にも影響する恐れがある。 日本私立学校振興・共済事業団(東京)が毎年度、全国で定員割れとなった私立大の割合などを公表しているが、各大学の数字は明かしていない。本紙は、各...
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特集「本当に強い大学」の他の記事を読む 竹内洋氏はこれまでの大学改革の問題点を指摘している。実際この30年間にどんな改革が行われてきたのか。国立大学を中心に振り返りたい。 現在まで続く大学改革の出発点は1991年の大学設置基準の大綱化だ。これにより、画一的だった教育カリキュラムが柔軟化され、各大学が自主的に改革に取り組みやすくなった。それとともに、大学の自律的な変革を求める政策がじわじわと増加していく。 科学技術政策に詳しい広島大学の小林信一副学長は「2000年以降の改革の本質は経費削減と放任だ」と言う。 負のスパイラル 04年の国立大学法人化では運営上の制約を解消し、各大学が自由に改革を進められるようにするとうたわれた。 一方で、人件費など経営の基盤的な経費を賄う補助金である運営費交付金は年1%ずつ減少、その代わりに科学研究費補助金といった競争的資金が増やされる。大学を拡充させるために、
年俸制で流出防ぐ 地方の理工系単科大学は地域の産業界から頼りにされる半面、学術研究で存在感を出しにくい傾向がある。しかし室蘭工業大学はコンピューター科学分野で業績を急伸させ近年、旧7帝大の平均を上回る論文引用率をキープしている。歴史の浅い分野で若手・中堅研究者のやる気を引き出し、トップクラスの実績につなげた方策について空閑良寿学長に解説してもらった。(編集委員・山本佳世子) 室蘭工大が注目するのは、学術論文出版社のエルゼビアによる研究業績分析ツール「SciVal」(サイバル)のデータだ。コンピューター科学分野で、被引用数の多い「トップ10%論文」の総論文数に対する割合をみると、旧7帝大平均は9%ほどで変化がない。対して同大は2014年を機に躍進し、ここ数年は約15%を維持する。同大のコンピュータ科学センターなどで活動する若手・中堅研究者らがけん引している。 施策で最も効果があったとみるのは
文部科学省で博士号取得者を3倍に増やす「博士人材活躍プラン」が始動する。約30年前の「ポスドク1万人計画」と異なるのは博士人材の需要を学術界の外に作ろうとしている点だ。大学などのポストはほぼ増えないことを前提に、産業界や教育界に採用拡大と処遇改善を働きかけ、多様な場面で博士人材が活躍する社会を作る。この多くは文科省の手の届かない領域だ。実現には在野の博士人材の協力が欠かせない。(小寺貴之) 「日本では『博士=研究者』というイメージが強過ぎる。国際機関では修士号は当たり前で半分くらいは博士号を持っている」と盛山正仁文科相は指摘する。博士号は専門人材としての出発点に立ったという証で、海外では博士号がないと相手にされない場面が多々ある。盛山文科相は運輸省(現国土交通省)時代に経済協力開発機構(OECD)に派遣され、博士号がベースラインとなる海外での“当たり前”を経験してきた。 その後、政治家に転
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1.日時 令和6年3月27日(水曜日)10時から12時 2.場所 Web会議 3.議題 今後の高等教育の在り方について その他 4.配付資料 議事次第 (PDF:99KB) 【資料1-1】これまでの特別部会等における主な意見の整理 (PDF:672KB) 【資料1-2】高等教育の在り方に関する特別部会(第3回)で出された主な意見 (PDF:382KB) 【資料1-3】中央教育審議会大学分科会(第177回)で出された主な意見 (PDF:286KB) 【資料2-1】大学教育の多様化に向けて(伊藤委員提出資料) (PDF:730KB) 【資料2-2】少子化の急速な進行と高等教育のあり方(両角委員提出資料) (PDF:787KB) 【資料2-3】韓国の高等教育政策に関するデータ等 (PDF:1.2MB) 【参考資料1】参考データ集 (PDF:8.3MB) 【参考資料2】参考資料集 (PDF:9.4
国立大学法人法の改正案が今国会に提出された。運用によっては、政府の統治が強まり、大学の自治や学問の自由を損ないかねない。大学のあり方に大きく関わり、重大な疑念が拭えない。 改正案は、一定規模の大学に「運営方針会議」の設置を義務付ける。この会議は大学の中期目標・中期計画、予算・決算を決議し、それに基づいた運営でない場合、学長に改善を要求できる。また、学長選考に関して意見を述べることもできる。強い権限だ。 会議は学長と委員で構成。委員は学外者も想定されており、学内の協議後、文部科学相の承認を得て学長が任命する。大学への政府の関与がさらに強まる可能性がある。 設置が想定されているのは東北大、東京大、京都大、大阪大、名古屋大と岐阜大を運営する東海国立大学機構の5法人だ。他大学も、希望して承認を受ければ設置できる。 法案に対して、大学の教職員らからは、政財界の意見を反映した大学運営となり、研究力や教
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佐賀県知事が県議会で要請した再議で、県立大構想に慎重な最大会派・自民党が提案した補正予算修正案は否決された=佐賀県議会で2023年12月21日午後3時28分、五十嵐隆浩撮影 地方自治体が設置する公立大が急増している。この30年あまりで2・5倍に増えて2024年度は101校となり、100校を超える。地域にとっては、若者の都心部への流出を食い止める「ダム」の役割を期待する声は根強いが、少子化で大学経営の先行きに不透明さが増すなか、多額の公的資金が注がれることに疑念の目も向けられる。やはり少子化で苦境に立たされる私立大との不公平も指摘され、文部科学省は新設要件の厳格化に乗り出す。 県立大構想、不退転の決意 「県立大の設置は佐賀県特有の構造的な問題解決に向けて直接アプローチできる」 佐賀県の山口祥義(よしのり)知事は23年12月の佐賀県議会で28年度の開学を目指す県立大の意義についてこう強調した。
ハーバード大の学長への圧力強まる、ペンシルべニア大の学長辞任受け Janet Lorin、Amanda L Gordon 米ペンシルベニア大学のリズ・マギル学長の辞任を受けて、ハーバード大学のクローディン・ゲイ学長に対する圧力が高まっている。マギル氏の辞任が9日に発表された後に、共和党のエリーズ・ステファニク下院議員(ニューヨーク州)は、「一人は辞任。あと2人だ」と指摘した。 ステファニク氏は5日、下院公聴会でペンシルベニア大とハーバード大、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学長らと対峙(たいじ)。ユダヤ人大量虐殺を呼びかけることは大学の方針に反するかとの質問に対し、同学長らが慎重な言い回しで回答したため、ホワイトハウスや民主・共和両党の議員ら、財界人、卒業生から非難を浴びたほか、バラエティー番組「サタデー・ナイト・ライブ」でも風刺される事態となっていた。 米国の一部名門大学は前例のない
IT(情報技術)分野など理系の人材不足が懸念される中、大学の理系学部・学科の新設や拡充などを財政支援する国の事業がスタートし、文部科学省は対象校を発表した。学部名など「看板」のかけ替えだけに終わらせず教育・研究の内容が伴う改革を断行してもらいたい。 3千億円の基金を設けており、高等教育機関(大学・高等専門学校)の組織改編を促し、情報や環境など成長分野を牽(けん)引(いん)する人材育成を後押しする。 具体的には、公私立大の理工農系の学部・学科の新設や拡充に必要な経費を支援する事業で、今回67校が選ばれた。このうち初めて理系学部をつくる大学は女子大を含め3割にのぼる。 また国公私立大と高専を対象に、情報系分野の高度な人材育成を行う大学院、学部・学科の定員増などを支援する事業で51校が選定された。基金により今後約10年で300の学部・学科などで新設や定員増を目指す。 学部・学科改組には設置認可手
2023年10月12日、大学図書館コンソーシアム連合と学術論文のオープンアクセス推進でオランダに本拠を置く学術出版社・エルゼビアは転換契約への合意を発表した。大学図書館が払っていた学術雑誌購読料を研究者が払う論文掲載料へ段階的にシフトする内容で、大学図書館連合会会員の京都大学、早稲田大学など57校がエルゼビアと交渉した。 大学図書館コンソーシアム連合運営委員会委員長の小陳佐和子大阪大学図書館事業部長は「各大学が契約を結ぶまでにはさまざまな検討や調整が必要になるが、合意内容の実践でオープンアクセスの推進に取り組みたい」とのコメントを発表した。 エルゼビアは学術分野の出版や情報分析を手掛け、「セル」、「ランセット」など2,800以上の電子ジャーナル、4万6,000以上の電子書籍を刊行する。 参考:【エルゼビア BV】大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)とエルゼビア、質の高い研究への継
現在位置 トップ > 会見・報道・お知らせ > 報道発表 > 令和5年度 報道発表 > 国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議(アドバイザリーボード)による審査の状況を公表します 国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議(アドバイザリーボード)において、初回の公募における国際卓越研究大学の認定候補として、一定の条件を満たした場合に認定するという留保を付して、東北大学を選定しましたのでお知らせします。 今後、東北大学においては、国際卓越研究大学法に基づく認定・認可に向けて、アドバイザリーボードが付す条件を踏まえた体制強化計画の磨き上げや、合議体の設置等の大学のガバナンス変更準備を行い、その状況について、アドバイザリーボードで継続的に確認してまいります。 なお、次回の公募は、大学ファンドの運用状況等を勘案し、初回の国際卓越研究大学の認定後、令和6年度中に開始予定です。 1.概要 大学ファ
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