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  • なぜ人類は国家を作り、発展させられたのか?──『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 - 基本読書

    反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー 作者:ジェームズ・C・スコット出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/12/21メディア: 単行本我々人類の大半は今は家畜を飼い、農耕を行い、足りない分を輸入することで定住生活を営んでいる。一般的に、そうやって定住して生活をすることは文明的であることの証である。なぜなら我々人類は、狩猟採集生活から、動植物の家畜化・作物化が発生し、そこから固定した畑での農業、定住に繋がったと思われているからだ。 だが、定住は動植物の家畜化・作物化よりもずっと早かったし、初期文明とされる農耕-牧畜文明の連合体が発生する4千年前には、飼いならしによる家畜化や作物化はすべて行われていたのである。つまり、人間は農耕の技術を得てから即、国家を作り始めたわけではない。その後長い年月をかけてようやく国家らしきものが成立しはじめたのである。国家を作り上げることで人間

      なぜ人類は国家を作り、発展させられたのか?──『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 - 基本読書
    • 日本の競輪、その特殊性と、だからこその魅力についてを英国人記者が語る──『KEIRIN: 車輪の上のサムライ・ワールド』 - HONZ

      日本の競輪、その特殊性と、だからこその魅力についてを英国人記者が語る──『KEIRIN: 車輪の上のサムライ・ワールド』 この『KEIRIN: 車輪の上のサムライ・ワールド』は、英国人記者が語る日本の競輪論である。日本でどのように競輪が生まれ、育ち、危機を乗り越え、そして日本ならではの独特な魅力はどこにあるのか、それを一冊を通して語り尽くしていく。 それにしても、なぜ英国人記者が日本の競輪を語っているんだと疑問に思うかもしれない。その理由は簡単で、著者のジャスティン・マッカリーは日本研究で修士号を取得し、読売新聞で編集者や記者として活躍。その後ガーディアンに入社し日本特派員として活動する、日本在住歴が30年にも及び、同時に競輪の熱狂的ファンだからだ。 本書の「はじめに」は2017年に平塚競輪場で行われた日本競輪最高峰のレースKEIRINグランプリの描写からはじまるが、その熱量ある文章は競輪

        日本の競輪、その特殊性と、だからこその魅力についてを英国人記者が語る──『KEIRIN: 車輪の上のサムライ・ワールド』 - HONZ
      • 「いろいろこんがらがって…」玉さんが初めて明かす「ビートたけし」「水道橋博士」との離別 別居の妻とは修復中 | レビュー | Book Bang -ブックバン-

        厄介すぎる芸名を背負って生きてきた男が、自らのデリケートゾーンに踏み込みまくる一冊。なにしろ帯文からこの調子である。 「殿(ビートたけし)と相棒(水道橋博士)と離れ、独りになった。コロナ禍で(自ら経営する)スナックには閑古鳥が鳴いた。初孫が誕生し、母親は施設に入った。カミさんは、オレに愛想を尽かして出て行っちまった」「それでもオレは、酒を呑んで、笑って、時に打ちひしがれながら、生きてゆく――」 前作『粋な男たち』の発売から5年半の間に起きた触れづらいエピソードの数々。それを、「オレが長年にわたり心血を注いできた漫才コンビ『浅草キッド』は、正式な解散宣言こそしていないものの、実質的な“解散状態”にある」「どうしてこんなことになっちゃったのかな? 自分でもよくわからないよ」「ふたりで漫才をすることが絶対に不可能ではないにせよ、かなり難しい状況であることは間違いない」「いまの状況はボタンの掛け違

          「いろいろこんがらがって…」玉さんが初めて明かす「ビートたけし」「水道橋博士」との離別 別居の妻とは修復中 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
        • 米紙が辛口批評「村上春樹は井戸の中に落ちてしまったらしい」 | 最新短編集『一人称単数』を、村上ファンの批評家はどう見た?

          2020年に刊行された村上春樹の短編集『一人称単数』の英語版が、2021年4月にイギリスとアメリカで発売された。それにあわせて、英米諸紙が書評を掲載したが、なかでも「村上の大ファン」を自称する批評家が、米紙「ロサンゼルス・タイムズ」に手厳しい意見を寄せている。彼女がこの最新作を酷評する理由とは? 村上作品に登場する、中年の、どこまでも平凡なパスタを茹でる主人公たちは、わりとよく井戸に落ちるハメになる。 『騎士団長殺し』の主人公のように、何日もそこに囚われたり、『ねじまき鳥クロニクル』の岡田亨のように、はしごを外されて思考にふけるしかなくなったりするのだ。 村上作品における井戸は、記憶や忘却へと続くトンネルの入り口だ。そして今、村上自身がその暗くて湿った井戸の中に囚われ、過去の作品への完全なる追憶に浸りきるあまり、未来へと続く道を見失ってしまっているようだ。

            米紙が辛口批評「村上春樹は井戸の中に落ちてしまったらしい」 | 最新短編集『一人称単数』を、村上ファンの批評家はどう見た?
          • 黒川みどり『被差別部落認識の歴史』 - 西東京日記 IN はてな

            中学で公民を教えるときに、教えにくい部分の1つが被差別部落の問題です。 問題を一通り教えた後、だいたい生徒から「なんで差別されているの?」という疑問が出てくるのですが、歴史的な経緯を説明できても、現代でも差別が続いている理由をうまく説明することはできないわけです。 もちろん、地域によっては子どもであって差別を身近に感じることもあるかもしれませんが、東京の新興住宅街などに住んでいると、差別が行われている理由というものがわからないのです。 本書はそのような疑問に答えてくれる本です。 本書の「はじめに」の部分に、結婚において差別を受けた部落出身の女性が、差別する理由を重ねて尋ねると、相手の母親が「すみません、なんで今でも差別があるんでしょうか?」と、差別をしているにもかかわらず、その理由を差別している相手(女性の母親)に訊くというエピソードが紹介されているのですが、差別している本人が差別している

              黒川みどり『被差別部落認識の歴史』 - 西東京日記 IN はてな
            • 青春と読書 - 集英社新書『シングルマザー、その後』黒川祥子 「貧困という宿命を背負わされて」

              「黒川さん、女性の貧困元年って、いつだと思いますか?」 2017年夏、大阪・梅田の喫茶店。取材で対面していた社会学者、神原文子(かんばらふみこ)さんから発せられた突然の問いだった。そしてこの問いこそ、新刊『シングルマザー、その後』の出発点となったことを今、改めて思う。 予想もしない問いに瞬間、虚をつかれた私は、ぽかんとした表情を浮かべたに違いない。女性の貧困はすでに可視化されていたし、私自身、大学生の息子を持つシングルマザーとして、「働けど働けど……」を実感する日々を生きていた。 私の掌(てのひら)にある貧苦にまさか、「元年」という視点があったとは。不安定な収入下、教育ローンの支払いに追われる汲々(きゆうきゆう)とした日々には、もしかして、何か大きな仕掛けがあったとでもいうのだろうか? 急(せ)くように、神原さんに畳み掛けた。 「全くわかりません。女性の貧困に、“元年”があったなんて思いも

                青春と読書 - 集英社新書『シングルマザー、その後』黒川祥子 「貧困という宿命を背負わされて」
              • 推薦システム実践入門

                情報化時代が到来し、日常で意思決定をする回数と選択肢の数が急増したことで、推薦システムの需要が高まっています。そのため、昨今では多くのウェブサービスへ新たに推薦システムの導入が検討されることも増えました。本書では、推薦システムの概要から、UI/UX、アルゴリズム、実システムへの組み込み、評価まで紹介し、適切な推薦システムの実装ができるようになります。「実際の仕事に活かす」ことを目的に、著者たちが実務で経験した推薦システムの成功事例や失敗事例を交えながら、実サービスに推薦システムを組み込むという観点を重視した入門的な内容です。 正誤表 ここで紹介する正誤表には、書籍発行後に気づいた誤植や更新された情報を掲載しています。以下のリストに記載の年月は、正誤表を作成し、増刷書籍を印刷した月です。お手持ちの書籍では、すでに修正が施されている場合がありますので、書籍最終ページの奥付でお手持ちの書籍の刷版

                  推薦システム実践入門
                • 発行中止のトランスジェンダー本刊行へ 「不当な圧力に屈しない」産経新聞出版

                  心と体の性が一致しないトランスジェンダーの実態を取材した米書「IRREVERSIBLE DAMAGE」が4月上旬、産経新聞出版から刊行されることが分かった。邦題は未定。同書は昨年末、大手出版社のKADOKAWAから「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇」のタイトルを付けた翻訳本の発行が予定されていたが、「トランスジェンダー差別を助長する」という一部の強い批判や本社前での抗議集会の予告などを受け、発売直前に刊行が中止された経緯がある。 産経新聞出版では「多くの人に読んでもらいたい内容であることはもちろん、米国のベストセラーが日本で発行できない状態であることに疑問を感じている。不当な圧力に屈せず、発行を決めた」としている。同社にはすでにSNSなどを通じて抗議文や脅迫めいた書き込みが届いているという。 同書は米ジャーナリスト、アビゲイル・シュライアーさんによるノ

                    発行中止のトランスジェンダー本刊行へ 「不当な圧力に屈しない」産経新聞出版
                  • 読者が変えたベストセラー――『日本国紀』元版と文庫版を検証すると(後編)|じんぶん堂

                    記事:幻戯書房 『もう一つ上の日本史』と『日本国紀』単行本・文庫版 書籍情報はこちら 前回の続きです。 「前編」の最後で、私は、『もう一つ上の日本史』に対する『[新版]日本国紀』の反応を数え上げ、次のように書きました。 採用:300箇所以上 無視:100箇所以上 反論:50箇所以上 (……)(「採用」のカウントについては)助言の他、データの誤りの訂正、込み入ったニュアンスの反映、「〜である」という断言から「〜という説もある」といったトーンダウン、デマエピソードの完全削除、などを含んでいます。 今回はまず、「採用」の具体例をいくつか紹介しましょう。引用文による比較が続くので、記事として平板な印象を与えるかもしれませんが、よーく読んでいただければ、その影響がおわかりになると思います。 実際、どのように「修正」されているのか? さて、「助言」は前回挙げたので、「データの誤りの訂正」から。(以下、

                      読者が変えたベストセラー――『日本国紀』元版と文庫版を検証すると(後編)|じんぶん堂
                    • 書評 プロフェッショナルTLS&PKI 改題第2版 (PR) - ぼちぼち日記

                      はじめに 『プロフェッショナルTLS&PKI改題第2版(原題: Bulletproof TLS and PKI Second Edition)』が出版されました。今回は出版前のレビューには参加していませんが、発売直後にラムダノートさんから献本をいただきました。ありがとうございます(そのためタイトルにPRを入れてます)。原著のサイトでは前バージョンとのDiffが公開されており、今回は翻訳の確認を兼ねて更新部分を重点的に読みました。このエントリーでは、改訂版のアップデート部分がどのようなもので、今後どう学んだらよいかということを中心に書いてみたいと思います。 短いまとめ: HTTPSへの安全意識が高まっている今だからこそ『プロフェッショナルTLS&PKI』を読みましょう。 長文注意!: 書いているうちに非常に長文(1万字以上)になってしまったので、長文が苦手な方は、GPT-4要約(400字)を

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                      • キャメロンがスピルバーグ、ノーラン、リドリー・スコットらに聞く!──『SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座』 - 基本読書

                        SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座 作者:ジェームズ・キャメロン発売日: 2020/09/30メディア: Kindle版この『SF映画術』は、『ターミネーター』や『アバター』など数々のSF映画をとってきたジェームズ・キャメロンが、「なぜ、今SFが重要なのか」と、現代、過去にSF映画を撮ってきた巨匠たちに問いかけるSF✕映画インタビュー本である。 SF創作講座とか、映画術とか、なんか「これを読めばSF映画の撮り方がわかる」みたいな書名になっているが、基本的にはキャメロンが巨匠らにどんな映画や小説に影響を受けてきたのか、また巨匠らがどのような思惑でこれまでのSF映画をとってきたのかを掘り下げ行く内容で、特に「術」とか「方法論」っぽいものがメインで語られているわけではない。まあ、参考にならないということもないのだろうけど。 しかし、取り上げられて

                          キャメロンがスピルバーグ、ノーラン、リドリー・スコットらに聞く!──『SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座』 - 基本読書
                        • 書籍紹介:大規模データ管理(エンタープライズアーキテクチャのベストプラクティス) | フューチャー技術ブログ

                          最近読んだ書籍の中で非常に良質な内容でしたので紹介したいと思います。少しでも多くの方に興味を持ってもらえることを期待しています。 O’Reilly Japan はじめに私自身がデータ管理(データマネージメント)という観点でここ数年様々な検討を行ってきていますので前提としてその背景について簡単にまとめてみます。 かつてオンプレミスで運用を行っていた時は企業内のデータは完全に管理されていました。データウェアハウスを導入してデータの集約・加工は行われていましたが、専門チームがデータ仕様確認やデータ提供までもすべての責任を担っていました。品質は高いのですが利用者からの要望(新しいデータの提供、仕様の変更)の対応についてはスピード大きな制約がありました。また大規模なデータを扱うためには多大なコストが必要という制約もあります。 クラウド技術による「スモールスタートを可能とするインフラ」「大規模なデータ

                            書籍紹介:大規模データ管理(エンタープライズアーキテクチャのベストプラクティス) | フューチャー技術ブログ
                          • 東大教養学部の集中講義『歴史学の思考法』

                            高校日本史の教科書で、鉄砲伝来の記述として正しいのはどちらか? 1543(天文12)年、ポルトガル人の乗った船が、九州南部の種子島に漂着した。 1543(天文12)年、ポルトガル人を乗せた中国人倭寇の船が、九州南部の種子島に漂着した。 答えは、どちらも正しい。Aは、1980年代の記述で、Bは近年のものになる。 だが、イメージが違ってくる。Aだと、ポルトガル人を乗せた西洋の船が漂着した、と想起されるが、Bの場合だと、橋渡し役として倭寇が登場する(※)。 なぜ、記述が変わったのか? 新たな史料が発見されたのか? 新しい史料が発見されたわけではない。南浦文之『鉄砲記』とガルヴァン『新旧発見記』とで、漂着した年に差はあるが、根拠となる史料は変わっていない。 同じ史料に基づいているにもかかわらず、昔の教科書では「中国人倭寇の船に乗って」いなかったのはなぜか? 史料を読み取る側の変化 東大教授陣の『歴

                              東大教養学部の集中講義『歴史学の思考法』
                            • 「Rust Atomics and Locks」を読んだ

                              「Rust Atomics and Locks」を読んだ #2023-02-05 発売前からすごく楽しみにしていた本で、発売日に買って年末から一生懸命読んでいた。 今なら以下から無料で読める。 https://marabos.nl/atomics/ 内容としては求めるものが分かりやすく書かれており、すでに2023 年に読んで良かった本の1つに入りそう。 目次書籍を通して得たかった知識 #例えば以下のようなコードを書いた際に、println!でどのような数値のペアが表示されるのか。結論から書くと0 0,10 20といった値がまずは思い浮かぶと思うが、0 20というペアで表示される可能性もあるとされており、その際以下のような疑問・不明点があった。 0 20と表示になるのはどのような条件で何が起こった場合なのか強いメモリモデルとされるx86でも0 20というペアは発生するのか本ケースにおいてx8

                                「Rust Atomics and Locks」を読んだ
                              • 【書評】反「女性差別カルチャー」読本 : 九段新報

                                九段新報 犯罪学オタク、新橋九段によるブログです。 日常の出来事から世間を騒がすニュースまで犯罪学のフィルターを通してみていきます。 広く表現の自由を守るオタク連合@hyougenmamoru届いたので読みます。 https://t.co/bVSBWeVing 2022/06/14 19:30:11 今回はこちらの1冊。入手にいささか難儀しましたが、手に入ったのでさっそく読みました。 本書は日本に蔓延する「女性差別カルチャー」とでも言うべきものに関して、多くの筆者が短い文章を寄せたものになっています。著者は小川たまか氏、隠岐さや香氏、能川元一氏などです。 『刊行にあたって』によれば、本書が制作されたきっかけは呉座勇一のハラスメントを契機として公開された、いわゆるオープンレターがバッシングを浴びたことでした。しかし、本書の内容は演劇界や映画界における性暴力からメディア批判、表現の自由戦士まで

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                                • 1400ページ超えの凄まじい物量で展開するパンデミック終末巨篇──『疫神記』 - 基本読書

                                  疫神記 合本版 (竹書房文庫) 作者:チャック・ウェンディグ竹書房Amazonこの『疫神記』は「ワシントン・ポスト」紙の年間ベストにも選出された、パンデミックSFの超大作長篇である。そのページ数は原著約800ページ、この邦訳版は1400ページを超え、並大抵の厚さではない。僕はKindleの合本版で読んだので物理的な厚さこそ感じなかったものの、ページをめくれどもめくれども右下の「%」がミリも動かないのをみて「なんじゃあこりゃあ!!」とビビったものだ。それぐらい厚い。 新型コロナウイルスが猛威を奮い始めてから、2019年頃に書かれた感染症を扱ったSFが「予言的な書!!」といって多数翻訳されてきたが、本作もその流れに連なる一冊で刊行は19年の7月のこと。本作では、現代を舞台に、巨大な彗星が空を通過したあとに一部の人々が呼びかけにも反応せず、夢遊病的に外に出てどこかを目指し始めるという奇怪な状況か

                                    1400ページ超えの凄まじい物量で展開するパンデミック終末巨篇──『疫神記』 - 基本読書
                                  • 萩尾望都「一度きりの大泉の話」書評「週刊朝日」8月 - jun-jun1965の日記

                                    一九九〇年前後、小学館の少女漫画誌『プチフラワー』に連載されていた萩尾望都の、少年への義理の父による性的虐待を描いた「残酷な神が支配する」を、私はなぜこのようなものを萩尾が長々と連載しているのだろうと、真意をはかりかねる気持ちで読んでいた。中川右介の『萩尾望都と竹宮惠子』(幻冬舎新書)を読んだとき、これが、竹宮の『風と木の詩』への批判なのだということが初めて分かった。 萩尾と竹宮は、一九七〇年代はじめ、少女漫画界のニューウェーブの二人組として台頭してきた。竹宮の代表作が、少年愛を描いて衝撃を与えたとされる『風と木の誌』で、萩尾も初期は『トーマの心臓』など少年愛かと思われる題材を描いていたが、その後はSFなどに移行していき、竹宮は京都精華大学のマンガ学部の教授から学長を務め、萩尾は朝日賞を受賞するなど成功を収めた。 二〇一六年に竹宮が自伝『少年の名はジルベール』を刊行し、漫画は描かないがスト

                                      萩尾望都「一度きりの大泉の話」書評「週刊朝日」8月 - jun-jun1965の日記
                                    • 『謎ときサリンジャー』は激ヤバ本 - 走れヴィンセント!敗戦処理だ!

                                      お久しぶりです。気付けば最後の投稿から4年経っていました。4年と言うと、鼻糞みたいなサイズで生まれたパンダが体重100kgに達するほどの期間なので、とにかく怖ろしいほどの時間が経ってしまったことになる。もちろん現在は昭和でも平成でもなく令和なので、「パンダの体重とは無関係に4年は4年だろ」という味気ない意見もあるかと思うが、多様な意見が出るのは決して悪いことではないので、富士山の頂上付近で「4年は4年だ!」と叫んでみると良いだろう。全国から集まった登山家からは「君の言うとおりだ!」という賛同の意見が出たり、「うるさい黙れ!」という厳しい意見が出たりするかもしれないが、多くの登山家は「ここで言うことかな」と思うことだろう。TPOは大事だから。 若干脱線してしまったが、兎にも角にも、この4年間元気に生きてました。そして今回は『謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか』(竹内康浩、朴舜起の共

                                        『謎ときサリンジャー』は激ヤバ本 - 走れヴィンセント!敗戦処理だ!
                                      • なぜ彼女は逮捕され、自殺してしまったのか 『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ──「よく知らない人」について私たちが知っておくべきこと』 - HONZ

                                        なぜ彼女は逮捕され、自殺してしまったのか 『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ──「よく知らない人」について私たちが知っておくべきこと』 2015年7月、アメリカはテキサス州プレーリー・ビューでの出来事。車を運転していたサンドラ・ブランドという若い女性が、ひとりの警察官から停車を命じられた。彼女が車線変更をする際に方向指示器を出していなかったというのだ。──そう、たったそれだけのこと。でも、たったそれだけのことが、それから思いもよらない展開を引き起こす。ブランドはその場で逮捕され、3日後に独房で自殺してしまったのだ。 本書『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ』は、アメリカでコラムニストとして人気を博しているマルコム・グラッドウェルの最新作である。グラッドウェルはこれまで、アカデミックな知見を活用しながらユニークな議論を展開し、一般読者や研究者たちから高い評価を得てきた。そんな彼が今回の本で

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                                        • 書評 「生物学者のための科学哲学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

                                          生物学者のための科学哲学 勁草書房Amazon 本書は生物学にかかわる科学哲学の主要トピックについて科学哲学者や科学史家たちが解説したもの.編者は科学哲学者のカンプラーキスと生物学者のウレルで,書名にもあるように想定読者としては生物学者が念頭に置かれている. これまでの生物学の科学哲学の入門書だと「種とは何か」「自然淘汰の単位は何か」「系統樹の推定はどのような営みか」「利他行動の進化とマルチレベル淘汰」「発生システム論」などの個別の各論のトピックが主要テーマになっているものが多いが,本書が取り上げるものは必ずしも「生物学の科学哲学」に限らないということで,「説明」「知識」「理論とモデル」「概念」などの基礎ブロック的なテーマが数多く取り上げられていてなかなかハードな内容になっている.原題は「Philosophy of Science for Biologists」. 第1章 なぜ生物学者は科

                                            書評 「生物学者のための科学哲学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
                                          • ChatGPT/LangChainによるチャットシステム構築[実践]入門

                                            本書籍を全ての章を読み思ったこと。それはこの一冊があればとりあえず入門から今抑えなければならないことは大体網羅できる。そう感じました。 ChatGPT、正確にはOpen AIとLangChain本の紹介となります。私が知るにLangChainとOpen AIを用いたチャットシステム構築の本格的な実践入門書籍としては初になるんじゃないでしょうか。 今回は、そんな書籍のレビューと実際に書籍通りチャットシステム構築をする中で感じたこと、さらなるチューニングについてをご紹介していきます。 紹介する書籍 2023年10月18日発売(書籍/電子)の「ChatGPT/LangChainによるチャットシステム構築[実践]入門」になります。 下記にリンクを貼っておきますので、興味を持たれた方はぜひチェックをお願いします 著者の紹介 本書籍なのですが、今LLM界隈でも情報のキャッチアップとアウトプットの先頭に

                                              ChatGPT/LangChainによるチャットシステム構築[実践]入門
                                            • 藤野裕子『民衆暴力』 - 紙屋研究所

                                              この本の趣旨は別のところにあるのだろうが、何と言っても同書を読んでぼくが一番に受けたインパクトは、関東大震災における朝鮮人の虐殺について書かれた部分である。 民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代 (中公新書) 作者:藤野 裕子 発売日: 2020/08/20 メディア: 新書 ぼくはこの事件について自著『不快な表現をやめさせたい!?』で次のように書いている。 不快な表現をやめさせたい!? 作者:紙屋 高雪 発売日: 2020/04/06 メディア: 単行本(ソフトカバー) ヘイトスピーチの怖さは、例えば「在日韓国人」「ユダヤ人」という「人種」としてくくられた人たちが丸ごと「二級市民」と見なされるようになって、その社会の中で「どう扱ってもよい存在」にされてしまうことです。これは単に個人が攻撃されるというだけにとどまらず、社会が壊れてしまうことを意味します。現に日本では、関東大震災の折に「人種

                                                藤野裕子『民衆暴力』 - 紙屋研究所
                                              • 大塚英志が語る、日本の大衆文化の通史を描く意義 「はみ出し者こそが権力に吸収されやすい」(リアルサウンド) - Yahoo!ニュース

                                                太平記から漫画、模型、アニメ、ボーカロイドまで、日本の大衆文化の通史を一冊の本で描き切った日文研大衆文化研究プロジェクトによる書籍『日本大衆文化史』(KADOKAWA)。 大塚英志 この本では、漫画の鳥獣戯画起源論など、現代の日本文化が中世や近世にルーツを持つとする説は、戦時下に政治的に必要とされて「創られた伝統」だと退けた上で、それとは別に一貫して存在してきた運動を描いていく。 「お約束」や共通前提(歌舞伎でいう「世界」)を踏まえながら新要素(同じく歌舞伎でいう「趣向」)を入れて作品が生み出されていくという、二次創作的とも言える仕組みこそが「文化」であり、それは有象無象の大衆=民俗学者の柳田國男がいう「群れとしての作者」が担ってきた、という見立てのもとで見えてきた「日本」「大衆」文化史の姿とは――主筆を務めた国際日本文化研究センター教授・大塚英志氏に訊いた。 ■『日本大衆文化史』は通史を

                                                  大塚英志が語る、日本の大衆文化の通史を描く意義 「はみ出し者こそが権力に吸収されやすい」(リアルサウンド) - Yahoo!ニュース
                                                • 『後味が悪すぎる49本の映画』を読んだら、なぜファニーゲームが大嫌いなのか理解できた

                                                  精神的ダメージがありすぎて、読んだことを後悔する小説のことを、劇薬小説という。生涯消えないほど深く心を傷つけるマンガのことを、トラウマンガと呼ぶ。 劇薬小説とトラウマンガは、このブログで追いかけているテーマだ。 最近なら、 [BRUTUSのホラーガイド444] あたりが参考になるだろうし、最高傑作は、 [ス ゴ本の本] の別冊付録で紹介している。許容範囲オーバーの激辛料理を食べると、自分の胃の形が分かるように、琴線を焼き切る作品を読むと、自分の心の形が分かるはず(痛みを感じたところが、あなたの心の在処だ)。 『後味が悪すぎる49本の映画』 は、この映画版だ。観ている人の気分をザワつかせ、逃げ道を一つ一つ塞ぎ、果てしない絶望に突き落とし、胸糞の悪さを煮詰める―――そんな作品が紹介されている(49は主に紹介される作品であり関連する他の胸糞も合わせると100を超える)。 ハッピーエンド糞くらえと

                                                    『後味が悪すぎる49本の映画』を読んだら、なぜファニーゲームが大嫌いなのか理解できた
                                                  • ドナルド・L・マギン、村上春樹/訳 『スタン・ゲッツ―音楽を生きる―』 | 新潮社

                                                    まとめとは? 日常的な身の回りの出来事から、世界を揺るがすニュースまで、本が扱うテーマは森羅万象。四季折々の年間イベント、仕事、暮らし、遊び、生きること、死ぬこと……。さまざまなテーマに沿う本の扉をご用意しました。扉を開くと読書の興味がどこにあるのか見えてきます。 日本のお宝からおうちごはんまで、最強の参考書3選! 〈とんぼの本〉は、1983年の創刊。 美術、工芸、建築、写真、文学、歴史、旅、暮らしをテーマにしたビジュアルブック・シリーズです。

                                                      ドナルド・L・マギン、村上春樹/訳 『スタン・ゲッツ―音楽を生きる―』 | 新潮社
                                                    • 『ゲバラ日記』=ボリビア日記 全種類比較 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                      Executive Summary チェ・ゲバラのボリビア時代の日記、通称『ゲバラ日記』は、邦訳が8種類もある。特に原著の直後1968年に出た5冊は、真木訳を除いて翻訳権がどうなっているのかまったく不明。いちばんありそうなのは、キューバ政府内でもそもそも権利の帰属が不明確/気にせず、プロパガンダとして他のバージョンを黙認、奨励したというもの。が、真相はいまとなっては闇の中。 また翻訳の中身も様々。コスパ的に最高なのは三一新書/中公文庫の真木嘉徳訳。訳も問題なく、付属資料も完備。最も最近に出た中公文庫の平岡新訳版は付属資料はまあよいが、細かい翻訳のミスが多い。その他、全邦訳に目を通してレビューしてみました。 はじめに 先日読み終わった、長大なチェ・ゲバラ伝の書評を書いて、まとまりがないと述べたところで他の伝記とかにも目を通したところ、むしろこれはかなりいいのではという印象に変わってきた。で、

                                                        『ゲバラ日記』=ボリビア日記 全種類比較 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                      • 「吾峠呼世晴が週刊少年ジャンプにやってきた!」|まついなつき

                                                        早く続きが読みたくて本屋やコンビニから家まで走って帰るという連載が、週刊少年ジャンプで現在連載されている。 29歳の女性作家・吾峠呼世晴による「鬼滅の刃」だ。 本作が初連載作である。 連載1回目、鬼に家族を惨殺され、命はとりとめたものの鬼の血を浴びて鬼になりかけた妹を、駆け付けた兄(主人公)が、「頑張れ!鬼になんかなるな!」と鬼の血の魔力に自我を失いかけて暴れる妹を押さえつけ、励ます。兄の呼びかけで妹の瞳から涙が溢れ出る。このシーンでいきなりわけもわからず落涙した。 なんだ?まだ何も始まっていないのに、いきなりなにかをわしつかみにされたぞ! まだ何も始まっていないのに!何も始まっていないのに! 動揺した。 当時、自分が鬼(自分がなりたくもないものに自分自身の弱さでひきずられてなるようなもの)になりかけていたからか。逃げ出したい、考えたくない、自堕落に今そこにあるものだけで自分の欲望を賄うと

                                                          「吾峠呼世晴が週刊少年ジャンプにやってきた!」|まついなつき
                                                        • 『隆明だもの』父親は「戦後最大の思想家」 - HONZ

                                                          全集は月報が面白い。月報とは、全集の各巻が刊行されるごとに差しはさまれる小冊子のこと。ようするに附録である。著者ゆかりの人物がエッセイでとっておきのエピソードを明かしていたり、著者の素顔について語られた座談会があったり、附録とはいえ内容は充実している。文学研究者のあいだでも、月報は作家の人となりを知ることができる貴重な資料とされる。講談社文芸文庫には月報だけを集めたラインナップもあるほどだ。 本書は『吉本隆明全集』(晶文社)の月報の連載をもとにしている。著者は吉本家の長女で、漫画家・エッセイストのハルノ宵子。吉本家は父・隆明、母・和子、長女・多子(さわこ:ハルノ宵子)、次女・真秀子(まほこ:吉本ばなな)の4人家族で、本書には、ばななとの姉妹対談もおさめられている。 吉本隆明(1924年-2012年)といえば、戦後思想界の巨人として知られる。とくに団塊の世代には神のように崇める人が多い。そん

                                                            『隆明だもの』父親は「戦後最大の思想家」 - HONZ
                                                          • 四コマなのに…『ののちゃん』いしいひさいち氏の自費出版本に「言い知れぬ感動」 | マグミクス

                                                            『となりの山田くん』や『ののちゃん』などで知られる漫画家・いしいひさいち氏が自費出版したストーリーマンガ『ROCA』が広く称賛を集めています。同作には大人世代の読者の心をゆさぶる「感情」が丁寧に描かれていて……? 「朝日新聞」朝刊の四コママンガなどで知られる、いしいひさいちさんの単行本『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』を、ご存知でしょうか。 2022年8月の発売以来、SNSなどでとり・みき氏ら漫画家や識者から称賛の声が多く寄せられ、宇多丸(RHYMESTER)さんの「アフター6ジャンクション」や伊集院光さんの「深夜の馬鹿力」といったラジオ番組でも話題に取り上げられました。カルチャー誌「フリースタイル」の恒例企画「THE BEST MANGA 2023 このマンガを読め!」では堂々の第1位に選出されています。 それでも、本作をAmazonなどの大手電子書店ではもちろん、一般的な書店でも

                                                              四コマなのに…『ののちゃん』いしいひさいち氏の自費出版本に「言い知れぬ感動」 | マグミクス
                                                            • 武井彩佳『歴史修正主義』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

                                                              11月23 武井彩佳『歴史修正主義』(中公新書) 9点 カテゴリ:歴史・宗教9点 既存の歴史の書き換えを図る「歴史修正主義」(revisionism)、近年この言葉を聞く機会が増えましたし、それが良くないことであるとの認識も広がっています。 ただし、「何が歴史修正主義なのか?」という難しい問題でもあります。ここ最近、織田信長について今までの「革命児」的なイメージが否定され、「意外と保守的で常識的な人物であった」との見方が研究者の間で強まっていますが、今までの歴史の見方を修正するものであってもこれを「歴史修正主義」とは言わないでしょう。 本書はこの捉えにくい概念である「歴史修正主義」と、さらにそれを一歩進めた「否定論」(denial)をとり上げ、その問題点と、歴史修正主義と歴史学を分かつもの、ヨーロッパで歴史修正主義の代表である「ホロコースト否定論」がいかに法的に禁止されるに至ったかを紹介し

                                                              • 『魚食の人類史: 出アフリカから日本列島へ』(NHK出版) - 著者:島 泰三 - 中村 桂子による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

                                                                著者:島 泰三出版社:NHK出版装丁:単行本(238ページ)発売日:2020-07-27 ISBN-10:4140912642 ISBN-13:978-4140912645 脳を育て氷期を乗り越えさせた魚料理は大好きだが、狩猟採集から農耕へと移行する人類史の中で、重要な食べものとして魚をイメージしたことはなかった。人類史は、最近数多くのデータが出され、正解を求めてのさまざまな物語が提案されている分野である。本書は、霊長類で積極的に魚を食べるのはH(ホモ)・サピエンスだけであり、そこに大きな意味があるという視点が、興味深い。 2000万年前に始まる大型類人猿の時代には魚食の記録はなく、人類でもそれが確認されるのは、H・エレクツスからである。アウストラロピテクス属からヒト属への移行の際の脳容量の増大を促したのが食物の変化、つまり魚食の始まりだったのではないかという説が出始めている。脳のはたらき

                                                                  『魚食の人類史: 出アフリカから日本列島へ』(NHK出版) - 著者:島 泰三 - 中村 桂子による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
                                                                • 「『難しい言葉』を排除しようという方向に…」現代人が“上級語彙”を使う文章をスラスラ読めないワケ | 文春オンライン

                                                                  『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』(宮崎哲弥 著)新潮選書 本書は「私は若い頃から単語帳を作るのが好きだった」と始まる。続いて『語彙ノート』という名の単語帳の写真が掲載されている。宮崎哲弥の活躍は広い分野に及ぶが、仏教研究家としてもよく知られる。仏教語の漢字の読みは呉音である。宮崎がこれを楽に読めるわけがよく分かった。 本書でいう「上級語彙」は言語学者鈴木孝夫の分類による基本語彙(日常生活の中で使う言葉)・高級語彙(研究者などが用いる難しい言葉)の「高級語彙」に触発されたものだ。高級語彙というほどではないが、少し硬い本や講演などに使われる言葉を宮崎は上級語彙とした。これが乱れていたり誤用されたりでは、思考や文化は衰弱するだろう。「ビジネスの世界ではわけのわからないカタカナ洋語が〈席巻〉し」と批判した後で、「席巻」について文学者の用例も紹介しながら解説している。 解説文中に、

                                                                    「『難しい言葉』を排除しようという方向に…」現代人が“上級語彙”を使う文章をスラスラ読めないワケ | 文春オンライン
                                                                  • 齋藤純一、田中将人『ジョン・ロールズ』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

                                                                    1月24 齋藤純一、田中将人『ジョン・ロールズ』(中公新書) 8点 カテゴリ:思想・心理8点 20世紀において政治哲学を復興させたと言ってもいいジョン・ロールズの評伝。 1971年に出版された『正義論』は大きなインパクトを与え、リベラリズム、リバタリアニズム、コミュタリアニズムといった政治思想の区分が生まれるきっかけを与えました。『正義論』そのものは読んでいなくても、その議論や『正義論』に対する批判のロジックを知っている人は多いはずです(自分もそう)。  しかし、時系列に沿いながらロールズの思想を解説する本書を読んで、実は意外と知らなかったことが多かったことにも気付かされました。 若い頃にウィトゲンシュタインの影響を色濃く受けていたこと、『正義論』へ寄せられた批判の中では、ノージックでもサンデルでもなく、H・L・A・ハートからの批判がもっとも重要だったこと、晩年に京都賞を辞退していたことと

                                                                    • 著者陣の視点からVision Transformer入門の執筆の背景と書評を書きます - Seitaro Shinagawaの雑記帳

                                                                      こんにちは、品川です。Vision Transformer入門という本の執筆に参加しました。いよいよ本格的な販売がはじまります。どんな本なのか注目してくださってる方もいらっしゃると思うので、著者陣の一人の視点から執筆の背景と書評を少しだけ書こうと思います。 gihyo.jp 執筆の背景 書評 第1章 TransformerからVision Transformerへの進化 第2章 Vision Transformerの基礎と実装 第3章 実験と可視化によるVision Transformerの探求 第4章 コンピュータビジョンタスクへの応用 第5章 Vision and Languageタスクへの応用 第6章 Vision Transformerの派生手法 第7章 Transformerの謎を読み解く 第8章 Vision Transformerの謎を読み解く 手薄になっている内容 執筆の背

                                                                        著者陣の視点からVision Transformer入門の執筆の背景と書評を書きます - Seitaro Shinagawaの雑記帳
                                                                      • すがやみつる『コミカライズ魂』【夏目房之介のマンガ与太話 その15】 | マンバ通信

                                                                        『コミカライズ魂 『仮面ライダー』に始まる児童マンガ史』 私と同じ1950年生まれのすがやみつるさんは、とんでもない人である。マンガの話を研究者などとしていると、「あ、それはね…」といって、誰も知らないような内輪話を始める。あっけに取られていると、じつは石ノ森章太郎、ジョージ秋山などのアシスタント経験があるとか、69年頃大手出版社の下請け的な〈日本初のマンガ専門編集プロダクション〉(P.72)と名乗る鈴木プロに就職して宮谷一彦の原稿を扱っていたとか、様々な現場にいちいち出没し関わってきた経験談を語る。そんなの誰もかなわない。 現場叩き上げの典型みたいな人で、その交友や現場体験は、どれも60年代末~70年代の激変するマンガ出版界の貴重な証言なのである。しかも異常なほどの記憶力で、細部まで憶えている。なので私は彼を、畏敬をこめて「マンガ界のフォレストガンプ」*1と呼んでいる。 70年代前半にマ

                                                                          すがやみつる『コミカライズ魂』【夏目房之介のマンガ与太話 その15】 | マンバ通信
                                                                        • 『Real World HTTP』が約三年ぶりに改訂されました

                                                                          Real World HTTP 第2版――歴史とコードに学ぶインターネットとウェブ技術 2017年に渋川さんにご執筆いただいた本書を改訂しました。絶賛、発売準備中です。電子書籍は発売日にリリース予定、もちろんEPUBもPDFもあります。 改訂というのはそれなりに売れていないとできないことなので、初版を買っていただいた皆さんには感謝しかありません。ボリュームが100ページ以上増えていますが、お値段は200円アップで抑えています。お買い得ですよ奥さま。 内容についてはここに引用している「まえがき」に書かれている通り、初版の出版以降で変化した内容をアップデートして、さらに新しい章を追加しています。1つはウェブアプリケーションについて、もう1つはクラウド環境についてなのですが、いずれも「HTTPについて体系的に学ぶ」という観点で見たときに必要となる周辺知識なので、ぜひこの辺も注目してお読みいただけ

                                                                            『Real World HTTP』が約三年ぶりに改訂されました
                                                                          • nix in desertis:書評:『グローバルヒストリーと戦争』(秋田茂・桃木至朗編著,大阪大学出版会,2016年)

                                                                            本書は並びが現代史から古代史にさかのぼっていくスタイルであるが,後ろの章ほど面白い。20世紀史はグローバルさが自明すぎて,グローバルヒストリーが面白さを発揮できないということだろうかとか考えてしまった。いくつか面白かった章を挙げておく。まず第6章,近世の東部ユーラシアではヨーロッパから伝来した火器を用いた「火薬帝国」が立ち並んだが,18世紀に入ると平和が訪れて火器の地位が低下していった。この17-18世紀に,銃火器を減らす周囲とは対照的に周囲からありったけのマスケット銃を吸収し,庶民にまで普及していった特異な地域がある。ベトナム北部の山岳地帯である。ベトナムの歴代王朝はその地形と武力に苦慮し,なんとか体制に取り込もうとしたが,それに成功したのは最終走者のベトミンだけであった。この山岳の戦闘集団の存在が最終的にディエンビエンフーの戦いに帰結するのだから,長期的な歴史の展開は予測がつかず面白い

                                                                            • 『友だちをやめた二人』(今井福子) - 児童書読書日記(仮)

                                                                              友だちをやめた二人 (文研じゅべにーる) 作者:今井 福子出版社/メーカー: 文研出版発売日: 2019/08/01メディア: 単行本タイトルとカバーイラストから、友だちをやめて恋人になるということかと脊髄反射で理解し、いや、普通に考えて親友になるってことだよねと思い直してから読みました。そしたら、いろんな段階をすっとばして右の子が左の子に「いま、わたしといっしょに×××くれる?」という激重なおねだりをしてきて驚愕。2019年の百合児童文学は、こちらの想定を軽々と飛び越えてくれるので油断できません。 気弱な性格の七海は、自分とは正反対の活発な性格の結衣とずっと仲良くなりたいと思っていました。家が近くて同じクラスになることも多く、一緒に捨て猫を拾ったりといったふたりの思い出もあるのに、5年生になってもいまひとつふたりの距離は縮まりません。 人は異質な他者に魅力を感じるものなので、捨て猫をみた

                                                                                『友だちをやめた二人』(今井福子) - 児童書読書日記(仮)
                                                                              • 宇宙論にも「タブー」と「忖度」あります💦【言ってはいけない宇宙論】 - カタツムリ系@エンタメ・レビュー (ポップ・サイエンスはデフォルト)

                                                                                こんにちは、カタツムリ系です🐌 「宇宙論」という言葉があるのですね。あまりに広すぎるカバー範囲をもつ、このワード。しかも「言ってはいけない」という、宇宙論のタブーを取材したもの。宇宙論にタブー?! 宇宙全般を扱っている点、テーマは壮大ですが、情報共有のジャンルとしては、なかなかニッチなアプローチ💦 こちらもタブーではないものの、しくじり系のトピック↓ 宇宙を始めとするサイエンス情報にも、多少親しみが生まれてきました そろそろ「これ、知ってます!」というトピックが増えてきました。宇宙のような超マクロなものから、量子のような超ミクロのものまで、驚きの連続ではあります。そのため、宇宙科学を始めとしたサイエンスが見せてくれる、一見非常識的な情報も、以前ほど「なんでもアリだなぁ」と思うこともなくなりました。 モノはすべてツブ(粒)であり、同時にナミ(波)だとか その考え方を延長すると、宇宙は無数

                                                                                  宇宙論にも「タブー」と「忖度」あります💦【言ってはいけない宇宙論】 - カタツムリ系@エンタメ・レビュー (ポップ・サイエンスはデフォルト)
                                                                                • <純利益初の1兆円超え>「失墜したソニーを復活させた男」の正体、過去には「世界のワースト経営者」と酷評されたことも | 文春オンライン

                                                                                  「(ソニーも)変化しなければ、隕石で滅んだ恐竜のようになってしまう」 そんな危機感から、同社のビジネスを製造業からデジタルにシフトしたのが、元ソニーCEO・出井伸之氏。今ではデジタルのような「無形資産」で儲けることは当たり前になったが、出井氏が社長に就任した1990年代はまだ夢のような、にわかに信じられない話だった。 ときには“世界のワースト経営者”と酷評される厳しい状況も。出井氏は当時をどう振り返るのか? ノンフィクション作家・児玉博氏による評をお届けする。 ◆◆◆ 「うちは製造業の会社なんだぞ」 個人、法人に対し金融サービスを提供する会社「マネーフォワード」。2012年に創業された新興企業だが、株式市場が低迷する中でも、時価総額は1800億円を超え、投資家からの信頼は厚い。 創業者の辻庸介は京大を卒業後、入社したソニーでこんな体験をしている。大学でバイオの研究をしていた辻はソニーの入社

                                                                                    <純利益初の1兆円超え>「失墜したソニーを復活させた男」の正体、過去には「世界のワースト経営者」と酷評されたことも | 文春オンライン