・はじめに 統計学の歴史では、頻度主義とベイズ主義という異なる立場の方法が存在し、違いに論争を繰り広げてきました。しかし、近年の統計学者の中には「現代の統計学は数理的な方法に基づいているから、主義の争いは解決した」と考える人もいるようです(この立場のことを、この記事では便宜的に「統計数理による主義不要論」と呼ぶことにします)。この記事では、「統計数理による主義不要論」に対して私なりの反論を考えてみることにします。論点は、以下の3つです。 1. 「“数理的な方法”を使っても、主義の争いが解決しない」ということを示唆する事実が存在する 2. 頻度主義とベイズ主義の論争を「どちらの方法が正しいか」という争いとして捉えると論争の全体像を見誤る 3. WAICに代表される現代ベイズ法の意義は、「数理によって主義の争いを解決した」のではなく「仮にあなたが頻度主義的な価値観を重視