今回の記事の趣旨は、表題の言葉に尽きている。私の個人的な推薦図書を五冊、称讃の為に羅列したいということである。少なくとも、読んで後悔することはないだろうと思われる選書の積りである。 ①坂口安吾「堕落論」(角川文庫) 堕落論 (角川文庫) 作者: 坂口安吾 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 2007/06/23 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 10回 この商品を含むブログ (26件) を見る 坂口安吾という作家の魅力は、その自由闊達で機敏な思索の破壊力に存すると思う。あらゆる固定観念や因習を振り払い、叩き壊そうとする鋭利な舌鋒は、厭味がなく、自己の短所を棚上げすることもなく、実に爽快で明朗だ。 彼は小説家であると同時に、優れた批評家でもあった。寧ろ、小説家である以上に批評家であったと言うべきなのかも知れない。彼の眼力は常に明晰に事物の本質を穿ち、しかも右へ左へ徘徊する臆病な