不正は企業や官公庁にも存在するため、学術界の新たな不正対策の参考になる。企業は不正を防ぐため、コンプライアンス(法令順守)コストを必要経費として扱う。例えば証券会社は違法な取引を防ぐため、営業職の勧誘電話を聞く監視役を置く会社もある。金融機関は職員の使い込みを防ぐためにダブルチェックを欠かさない。不正の発生する前提で防止策を日常業務に組み込んでおり、大学に組織として規律の担保を求める声も挙がる。 ただ、学術界と企業のコンプライアンス管理が異なるのは、大学が一つの組織ではない点だ。大学の研究室はそれぞれ独立しているため、中小企業の集まりに近い。「学問の自由が憲法で保障されている以上、大学トップは個々の研究内容に口をだせない。 このため、本質的には学長も研究内容の責任はとれない」と科学技術振興機構の野依良治研究開発戦略センター長は説明する。 また、研究者を束ねるはずの学会は拘束力が緩やかなため