鹿追の町は、クテクウシと呼ばれ、アイヌの人達が、鹿を追いこんで、捕えていたころでした。 北の方には、よく似た形をした二つの山が並んで聳え、人々はいつも仲良く座っているように見えるので、 夫婦山と呼んでいました。 アイヌ語では、東と西のヌプカウシヌプリというのだそうです。 その裾野に拡がる大地は、今では大きな林を見ることができませんが、昔は何百年も経た柏やナラの大木が密生し、 熊やキツネ、うさぎ、鹿などの野生の動物が自由にとぴまわっていたのでした。 アイヌの人達は、その動物を捕ったり、平らな土地を利用して、春に火を入れて焼畑農業という方法で、 麦やヒエを植えて生活をしていました。本当に静かで、食糧も豊富ですから、アイヌ部落の人達は、 酋長さんを中心に楽しい毎目を過ごしていたのでした。 ところが、ある年のことです。寒い寒い冬過ぎ春が来たというのに寒さは少しもおとろえず、 5月になっても6月にな