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5年に一度、夏の100日間、牧歌的なドイツ中西部の小都市カッセルが、国際芸術祭ドクメンタ目当ての人々で一際賑わう。15回目となる今年は、ジャカルタを拠点に活動するコレクティブのルアンルパ(ruangrupa)が、アジア初のアーティスティックディレクターとして選ばれ、これまでとは大きく異なる国際芸術祭のあり方を提案している。6月15日から3日間に渡ったプレビューの速報をお届けするとともに、ドイツで大論争を巻き起こしている反ユダヤ主義問題、そしてグローバルな芸術祭が内包する異文化を展示する課題を論じる。 小さな地殻変動が世界のあちこちで起きてきている。プレビュー期間中、心を動かされる瞬間に何度出会ったことだろう。断っておくが、知名度の高い作家の作品を、答え合わせをするように見にいくような展覧会ではない。むしろ未知の文脈に積極的に身を投じ、これまでの思考のクセを取り除き、謙虚に展示物から発せられ
「あわいから生まれてくるもの -人と人ならざるものとの交わり- 」をテーマに、ビジネス・アート・エコロジーの領域から第一線を切り拓く多彩なゲストを国内外から招き、4日間にわたって開催されたEcological Memes Global Forum 2021。 第1回に引き続き、第2回は拡張生態系(Augmented Ecosystems)のパラダイムを土台に、地球の生態系が本来持つ自己組織化能力を多面的・総合的に活用する生態系構築技術「協生農法(シネコカルチャー)」の研究・実践に取り組むソニーCSL 舩橋真俊氏を招いたトークセッションの模様をお届けする。 「約1万年前の農耕革命以降、人類は自然の資源をおおよそ一方的に搾取・享受する歴史を歩んできました。しかし、今その関係性を大きく転換しようとする挑戦がはじまっています」 一般社団法人Ecological Memesが主催する春分グローバルフ
クリエイティブ・コミューンWhateverが、自身の死後のデータの扱いにまつわるプラットフォーム「Digital Employment After Death(通称D.E.A.D.)」を始動した。「AI美空ひばり」などでも顕著なように、これからは死後も個人のデータが“使える”ものになっていくのかもしれない。テクノロジーによる人間の身体拡張について研究する東京大学・稲見昌彦教授をゲストに招き、Whateverの川村真司、富永勇亮と鼎談を行った。 近年、個人データを利用して、故人を疑似的に復活させることが可能になり、多くの有名人が“復活”するコンテンツが発表されている。NHK紅白歌合戦で発表されたAI美空ひばり、手塚治虫AIによる新作マンガ、ピアニストのグレン・グールドの演奏をAIが再現など、枚挙にいとまがない。そんな時代にクリエイティブ・スタジオ「Whatever Inc.」がスタートした「
Twitterの普及初期から人気アカウント「サザエBot」と関与し、数々のインターネット・ミームを生み出してきたかと思えば、現代のデータとプライバシー問題などに切り込む「White Magazine」展を開催するなど、インターネット以降の社会を鋭く批評するプロジェクトを展開するアーティスト・松田将英。今秋、都内某所で開催された「超現代美術展」(非公開、2020)について、気鋭のアーティスト布施琳太郎が論じる。 松田将英のことを知ったのは誰かからの噂話を通じてであった。この誰かが誰だったのかは覚えていないが……2019年に神宮前のギャラリー・EUKARYOTE(ユーカリオ)で開催された個展「White Magazine」に際して、「この松田ってのは誰なんだ?」という話をどこかのカフェでしたことは覚えている。 そして彼が「サザエBot」や「なかのひとよ」、そして「ブラックボックス」展(ART&
現在、大ヒットを続けているクリストファー・ノーランの新作映画『TENET』。ノーランといえば、短期記憶を失う男が主人公のサスペンス『メメント』において、その卓越した構成力と演出で一躍映画界のスターとなった人物だ。その後の大型作品『インセプション』でも、ノーランは「映画と時間」の関係に挑み続けてきたことがわかる。そしていま、“時間逆行映画”を標榜する『TENET』が全国公開中だ。多くの人が「一度観ただけではわからない」と口々に語るこの映画、一体 スクリーン上では何が起きているのか? 本作に魅了された物理学者・橋本幸士が独自の視点で解説する。 世界興行収入が300億円を突破した(日本公開2020年9月の一ヶ月後)ことからも分かる、全世界の映画ファンを魅了している映画『TENET テネット(以下、TENET)』。一人の物理学者である僕も観て来た。一言でいえば、タイムリバーサル(時間逆行)を肉体で
自身の死後のデータの扱いにまつわるプラットフォーム「Digital Employment After Death(通称D.E.A.D.)」。有名人から亡くなった家族まで、技術的には“復活”が可能ないま、弔いのかたちはどう変わるのか。ソーシャルメディアや死者のプライバシーについて研究する折田明子氏をゲストに招き、Whateverの川村真司、富永勇亮と行った鼎談 後編。死後の権利について包括的に話した前編に続き、Whateverが実際に仕掛けたプロジェクトを中心に、新たな弔いのかたちについて語られた。
クリエイティブ・コミューンWhateverが、自身の死後のデータの扱いにまつわるプラットフォーム「Digital Employment After Death(通称D.E.A.D.)」をローンチした。「AI美空ひばり」などが顕著なように、これからは死後も個人のデータが“使える”ものになっていくのか。ソーシャルメディアや死者のプライバシーについて研究する折田明子氏をゲストに招き、Whateverの川村真司、富永勇亮と鼎談を行った。 折田明子 関東学院大学 人間共生学部 コミュニケーション学科 准教授。2007年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学、博士(政策・メディア)取得。中央大学ビジネススクール助教、米国ケネソー州立大学客員講師、慶應義塾大学大学院特任講師などを経て現職。オンライン・アイデンティティ、プライバシー、情報リテラシー教育などをキーワードに研究を進める
人類は感染症といかに向き合ってきたのかーー? いまあらゆる場面で議論されるこの問いに対し、かつて市井の人々が編み出した祈りと文化から民俗学者の畑中章宏が考察する。そこには、日本人が魔除けとしての祈りを託した「赤」のフォークロアがあった。民俗社会の厄除け信仰から生まれた「疫病芸術」とは? 民俗社会では、さまざまな災厄を逃れるための祈願行為が続けられてきた。災厄の種類によっては仏教の仏や、神道の神に依頼する際に、伽藍を建立したり、仏像を造営したり、社を創建したりしたのである。 日本列島に暮らす人々を苦しめてきた災厄のなかでも、感染症(疫病)は蔓延を繰り返し、大量死をもたらすこともあった。またクラスター(集団感染)が発生しなかったとしても、幼児が罹患すると命を失う可能性が高く、さまざまな気遣いがされた。 こうした疫病除けを祈願するため、民俗社会でつくられ、用いられてきたものを「疫病芸術」と名づけ
世界中の美術館やギャラリーが閉鎖する中、これから何が可能なのか。オンラインによる新たな接続方法が問われるいま、90年代から隆盛した「ネットアート」が再び勢いを見せ始めている。美術館を3Dビューで眺め見る仮想体験も良いが、毎日スクリーンを眺めてみている私たちにとって、オンラインでしか体験しえない質感もあるはずだ。本稿では、2020年代のネットアートの行方を占う最先端シーンを紹介する。 私たちの生活を一変させた新型コロナウイルス(COVID-19)。その影響で、世界中の美術館やギャラリーは休館を余儀なくされたが、鑑賞の機会をどうにかして補おうと、展示空間をオンラインに移行する取り組みが盛んになっている。 例えば、Google Arts&Cultureでは、2,500以上の世界中の美術館とギャラリーがバーチャルツアーとオンラインコレクションを提供するようになった。今年開催予定だったArt Bas
東京ミッドタウンにて2020年2月20日(木)から2月24日(月・振休)までの期間、開催されるイベント「未来の学校祭」。本イベントにて作品「Revolutionary 20XX! Tool Kit(レボリューショナリー 20XX! ツールキット)」を展示するアーティスト、デザイナーの長谷川愛と、SF作家の藤井太洋による対話をお届けする。 生物学的課題や科学技術の進歩をモチーフに、現代社会に潜む諸問題を掘り出す作品を国内外で展開する長谷川愛。対するは、『オービタル・クラウド』などで知られるSF作家の藤井太洋。対話のテーマは、出版されたばかりの書籍「ものごとの根本からクリティカルに問い直す力」である「スペキュラティヴ・デザイン」を養う思索トレーニングブック、『20XX年の革命家になるには──スペキュラティヴ・デザインの授業』だ。長谷川愛、初となる自著であるこの本を巡り、未来をプロトタイプする思
米国計算機学会(ACM)のコンピューター・ヒューマン・インターフェース(CHI)会議において最も権威ある「生涯研究賞」を受賞したMITメディアラボの石井裕教授。無形のデータを実体としてさわれるようになる「タンジブル・ビット」の概念を提唱し、以来、人間とコンピュータの新たな未来ビジョンを提示し続けた功績が高く評価された。常に挑み、開拓し続ける石井裕の精神とは。 石井裕︱HIROSHI ISHII 1956年東京生まれ、北海道育ち。マサチューセッツ工科大学教授、メディアラボ副所長。日本電信電話公社(現NTT)に勤務、NTTヒューマンインターフェース研究所を経て、1995年、MITメディアラボ教授に就任。タンジブル・ビッツの研究で、世界的な評価を得る。大阪芸術大学アートサイエンス学科客員教授。
建築家・鳴川肇が考案した、新しい世界地図《オーサグラフ》が、2016年度のグッド・デザイン大賞を受賞した。既存の地図に生じる「ゆがみ」をできるだけ正確にしたこの新しい「地図」の記述法が、現代の「デザイン」として賞された理由は大きい。なぜなら、この一枚の地図が、わたしたちの固定観念を打ち破り、新たな世界の見つめ方を教えてくれるからだ。 鳴川の《オーサグラフ》がグッド・デザイン大賞を受賞したことは、将来重要なメルクマークとなることをまず述べておきたい。これまで同賞の多くの受賞作は、具体的な問題解決を目指したプロダクトやシステム、汎用性の高いソフトウェアなど、多くの場合目に見える有用性がある。 しかし、鳴川の《オーサグラフ》は「世界」という概念をテーマにしており、ともすれば抽象的にも見えてしまう。だが、それゆえに、普遍的なテーマに挑んだ《オーサグラフ》が受賞したことは重要なのである。 《オーサグ
現在、山口情報芸術センター[YCAM]で、“メディアアートの死”という挑戦的な問いをテーマに掲げる展覧会「メディアアートの輪廻転生」が開催中だ。企画キュレーションを担当したアーティスト・エキソニモの千房けん輔は、なぜアーティスト自らこのような問いを送り出したのか? メディアやテクノロジーの変遷に伴う 作品のアーカイブが世界各国で課題となる中、アーティストたちが自ら埋葬した「墓」から何が見えてくるのだろうか。千房けん輔本人の筆で紹介する。 原稿執筆時点(2018年7月23日)、山口県にある山口情報芸術センター[YCAM] で開催中の展覧会「メディアアートの輪廻転生」を、同センターと共同で企画・キュレーションした。巨大な古墳状の「メディアアートの墓」を作り、その中に8名の現存のメディアアーティストが「死んだ」と考える作品を展示(埋葬?)している。観覧者はiPad/iPod touch/MDプレ
SNSやAIなどの情報テクノロジーが渦巻く現在、わたしたちの「ウェルビーイング(精神的により良い状態)」とは何だろうか? その解は、欧米輸入の概念ではなく、日本的な感性の土壌から見出すことはできないか? これが「日本的Well-being」研究会の主たるテーマである。Bound Bawではおなじみの情報学研究者ドミニク・チェンをはじめ、認知科学、コミュニティデザイン分野から、弁護士、能楽師、住職まで非常に多様なメンバーが集ったシンポジウムの1日をレポート。 3月某日、港区と慶應義塾大学が共同で運営するコミュニティスペース「芝の家」にて、ジャンルもばらばらな研究者たちが集まってきた。この研究会は前回の記事でも紹介した、JST/RISTEXによる研究支援プロジェクト「人と情報のエコシステム(HITE)」で採択された、「日本的Well-beingを促進する情報技術のためのガイドラインの策定と普及
人工知能が急速な発展を遂げている。その事実を目の当たりにするいま、私たちが考えるべきことは何だろうか? 人間の仕事の行方、社会インフラの変化、知性や創造性...、第2・第3の「知能」の誕生を前に様々な議論が飛び交う中、「Beyond AI(人工知能を超えて)」を契機にさらに広い眼差しで未来を想像するのが、複雑系科学者池上高志の志向する「ALife(人工生命)」だ。アートサイエンス学科「箱舟教室」で池上が語った、機械と共存していく未来とは? 私の研究は「人工生命(ALife:Artificial Life)、生命を人工的につくりだそうとする試みです。 昨今は人工知能(Artificial intelligence)が急速に発展していますが、ALifeが目指すべきは「Beyond AI」だと考えています。私は人間と同等かそれ以上の知性を持つ「汎用的なAI(AGI)」をつくろうとするよりも、人工
デビッド・オライリー(アーティスト)×犬飼博士(ゲーム監督)×飯田和敏(ゲームクリエイター)×ドミニク・チェン(情報学研究者) デビッド・オライリーを囲んで行われた座談会。後編では、アートやゲームがそれに触れた人間とどのような相互関係を持つのか、遊びであり自己記述たりえる「Play」の持つ役割について議論がなされた。前編に引き続き、参加者はゲームクリエイター飯田和敏、情報学研究者ドミニク・チェン、モデレーターはゲームクリエイター犬飼博士が務めた。前編はこちら。 デビッド:基本的にどんなアートピースでも、見る人は何かしらの「自分」を投影する存在を見出します。よく犬は飼い主に似ると言いますが、ペットを見る時でさえ、人は自分を探しているんですよね。これと同様、アートを見る人は作品内に何かしら一貫したシステムを持つ世界を発見します。実はそれこそアートが伝えられることなのです。 飯田:三宅さんは、A
デビッド・オライリー(アーティスト)×犬飼博士(ゲーム監督)×ドミニク・チェン(情報学研究者)×三宅陽一郎(ゲームAI開発者)×飯田和敏(ゲームクリエイター) 原子から動物、果ては銀河系まで、この世界のあらゆるものに憑依し、それぞれの視点から世界を眺めるゲーム『Everything』を生み出し、世界的な注目を集めるアーティスト、デビッド・オライリーを囲んでの座談会が、ゲームクリエイター犬飼博士の呼びかけのもとに開催された。参加したのは『アクアノートの休日』や『太陽のしっぽ』などエクスペリメンタルなゲームを制作してきたゲームクリエイターの飯田和敏、情報学研究者ドミニク・チェン、人工知能開発者の三宅陽一郎だ。 デビッド・オライリー 1985年、アイルランド生まれ。斬新なスタイルのCGアニメーション制作を続け、2009年、アニメーションの伝統であるネコとネズミの関係性を現代性豊かにアップデートし
スペインのバルセロナにて毎年開催される世界的ミュージック・イベントSónar。音楽ライブのすぐ横で、先鋭的なアートインスタレーションを繰り広げながら、テクノロジー×ビジネスへの波及をも目指すSónar+Dはまた、イベントの新たな顔として注目を見せる。日本から招へいされたライゾマティクスリサーチのインスタレーション展示《phosphere》を中心に、イベントの様子をキュレーターの阿部一直がレポートする。 Sónarレポート前編はこちら Sónarの興味深いところは、あくまで音楽のライブイベントを中心とした、集客性、話題性、経済効果のみならず、テクノロジー、R&Dへのビジネスへの波及効果もとらえた多角展開にあることは、すでに多くが指摘している事実である。 そこには、音楽がライフスタイルの先端デザインやモードが、ワールドワイドなトレンドとしていち早く反映されるメディアであることと意識されているの
シンプルな造形と動き、象徴的な色彩、遊び心に満ちたプログラム映像とインタラクションをウェブ上で発表しつづけ、インターネットアートの代表的存在であるアーティスト、ラファエル・ローゼンダール。一方ウェブサイトのデザインから展覧会での作品発表まで、デザイン/プログラミング領域で多彩な活動を展開しているセミトランスペアレント・デザインを率いる田中良治。個展「Convenient」を開催していたTakuro Someya Contemporary Art / TSCAにて対談を行った。 《Abstract Browsing 17 01 06 (Reddit)》Tapestry, (H)200cm x (W)144cm, 2017, ©Rafaël Rozendaal, Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art 展示作品《Abstract Browsing
斬新なCGアニメーションでCG表現の常識を覆し、一躍世界的な注目を集めたデビッド・オライリーが数年前からゲーム制作を開始した。そして今春にリリースされたゲーム《Everything》は、「この世界のあらゆるものの視点で世界を見る」という哲学的なテーマを掲げ、ゲームを新たな芸術表現メディアへとアップデートした傑作として国際的な賞を総嘗めにしている。ゲームというメディアを通して、「生命そのもの」を表現したかったと語るオライリーに、情報学研究者ドミニク・チェンが迫る。 デビッド・オライリー 1985年、アイルランド、キルケニー生まれ。斬新なスタイルのCGアニメーション制作を続け、2009年、アニメーションの伝統であるネコとネズミの関係性を現代性豊かにアップデートした『プリーズ・セイ・サムシング』はベルリン国際映画祭短編部門のグランプリを皮切りに、世界各地のアニメーション映画祭で賞を総嘗めにする。
かつて、ベルリンにあった伝説のクラブBar25。夜な夜なクレイジーなパーティを主催してきた創始者のユヴァル・ディーツァイガーは、かつての楽園を去った後、21世紀型のネオコミューン「ホルツマルクト」をつくり始めている。18,000㎡もの広大な敷地を手にした彼はいま、住居とイノベーションハブ、クラブ、幼稚園、レストラン、ホテルが集う複合施設を仲間と共に建設中だ。世界各地で「都市」のあり方が再定義される今日において、アングラ&オープンカルチャーの聖地ベルリンで進む、現在進行形の都市型エコヴィレッジ計画について尋ねた。 ベルリンを東西に分けるシュプレー川沿いの18,000㎡もの広大な敷地。ここに21世紀型のサスティナブルなエコヴィレッジ「ホルツマルクト(Holzmarkt、木材市場の意)」が2017年に誕生した。 舵を取るのは、かつて世界中のパーティフリークたちが集結した伝説のクラブBar25の創
TRANSLATION BY SATOSHI HATTORI,INTERVIEW BY ARINA TSUKADA ベルリンを拠点に、クラブカルチャーからデジタルアートまでを横断的に活動するミュージシャン、オーディオビジュアル・アーティスト、Robert HenkeことMonolake。アート活動のみならず教育にも注力する彼は、アートサイエンスに深い関心を抱き続けている。本稿では、昨年彼のウェブサイトに掲載されたエッセイ『用語法についての問い: デジタルアートにおける「サイエンス」と「リサーチ」』の翻訳とともに、編集部が行ったインタビューを紹介する。 Robert Henkeの活動は多岐にわたる。自らのアーティスト活動や教育活動、「制作のためのツールを制作する」ことを通じて、世界の電子音楽やデジタルアートの領域へ多大なる影響を与えてきたHenke。ソロ名義Monolakeでの精力的な音楽活
これから、どんな未来がやってくるのか? 世界中のそこかしこで語られるこの問いに、米国「WIRED」初代編集長として知られるケヴィン・ケリーは、自著『インターネットの次に来るもの』の中で未来を読み説く12の法則を提唱した。この法則を基軸に、未来社会を予測し、創造していく連続公開会議「ホロス2050」が始動した。第1章のゲスト、「WIRED」日本版の若林恵編集長、そして映画監督・押井守氏が語った「未来」をレポートする。 今から30年後を想像してみよう。西暦2047年、あなたの前にはどんなデバイスがあり、どんな家で、何を生業としているのだろうか。 2045年と噂されたシンギュラリティ到来の預言はとうに過ぎ、「AIの進化」なんて言葉が死語になるほど、AIの技術なんてそこらじゅうで使われ、何らかの社会的判断が人工の知性によるものかどうかをいまさら問うこともない。テクノロジーの存在をいちいち気にするこ
Bound Baw編集部は、複雑系科学と人工生命を研究する池上高志氏とともにスクウェア・エニックス本社を訊ねた。昨秋発売された『FINAL FANTASY XV』(以降FF15)の制作に携わった、AIリサーチャー三宅陽一郎氏を中心とする開発スタッフと「仮想空間における人工生命」の未来について意見交換をするためだ。 池上氏は、大阪大学の石黒浩氏とともに人工生命の可能性を提示するアンドロイド「機械人間オルタ」を制作し、第20回 文化庁メディア芸術祭でアート部門の優秀賞を受賞した。同氏が研究を進める人工生命と、デジタルゲームのようなエンターテイメント分野における人工知能には、どのような共通点があるのだろうか? 池上高志 東京大学 総合文化研究科 教授。PhD. 物理学。複雑系・人工生命の研究のかたわら、渋谷慶一郎、evala、新津保健秀らとのアート活動も行っている。著作に、『生命の進化的シナリオ
科学技術が人間に及ぼしうる危険性や影響は、20世紀初頭からSF作品を中心に提唱されてきましたが、今日のPost-truth時代においては、そうした危機意識も個人のフィルター次第で変わってしまうのではないでしょうか。 ドミニク:現在のアメリカのトランプ政権やイギリスのEU離脱の状況を見ていて、まさにPost-truth情況が露呈している興味深く思えるのは、現在の社会は合理的な議論の可能性の限界に達してしまっている状況だということですね。専門家に委ねた熟議以外のところで、いかに社会合意を形成できるのかという難題が、いまやアメリカのみならず世界中で突きつけられているように思えます。 たとえば、いまのアメリカのリベラル層の一部は、トランプ支持者を代表とする保守層に対して皮肉にも反リベラルな態度を取るようになってしまっている。たとえばLGBTの権利を認めない人が目の前にいた場合、リベラル派が「お前な
人間を含めて、この世界の生き物たちは多様な方法でコミュニケーションしている。「ことば以上のもの/More than Logos」をテーマに探究する本連載の第2回目は、動物行動学者であり、動物の性愛行動をまとめた書籍『Act of Love』の監修を務めた上田恵介氏と、イルカを産む、子どもを複数人でシェアするなどの思考実験をもとに、未来の生殖や家族関係を提案してきたアーティストの長谷川愛氏の対談だ。 浮気をする鳥、性転換をする魚など、人間の道徳観念を超えたユーモラスな動物たちの行動から、ことばを超えた「愛の行為/Act of Love」のありかたを尋ねた。 上田恵介 立教大学理学部生命理学科 名誉教授。1950年大阪生まれ。大阪市立大学理学部博士課程修了。専門は行動生態学、動物行動学、進化生物学。おもに野外における鳥類の行動や生態の野外観察、野外実験などのフィールドワークが中心。動物と植物の
「Senseless(意識のない、無感覚な)」をタイトルテーマに、さまざまな機械を用いて絵を描くマシンを作り出してきたメディアアーティストの菅野創とやんツー。この度、山口情報芸術センター[YCAM]で披露された彼らの新作《Avatars》は、インターネットを介して「モノ」に憑依(ログイン)できるという、ロボットとアニミズムの関係性を問うような作品だった。 菅野創 武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科 卒業。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)メディア表現研究科メディア表現専攻 修了。1984年生まれ。テクノロジーを駆使しながら、シグナルとノイズの関係やエラーやグリッチといったテクノロジー特有の事象にフォーカスする。自分が見てみたいもの、観察したいものを実現するために作品を制作している。 http://kanno.so/ やんツー 1984年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。2009年多摩美術大学
AIなどの情報技術がますます普遍化していくいま、心という数値化できないものを情報技術はどう扱えるのか、ひとがよりよく生きるとはどういうことかをテーマとした1冊『ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術』(BNN新社)が今年1月に出版された。監訳者を務めたドミニク・チェン氏にインタビューを行い、日本における「ウェルビーイング」のこれからを尋ねた。 最近何かと話題の「マインドフルネス」といった言葉をご存知だろうか。たとえば、Googleが開発し、世界のビジネスリーダーの間で実践されている「Search Inside Yourself(SIY)」は、マインドフルネス思考に基づいて設計され、心と思考力を科学的アプローチで強化することを目的としたプログラムだ。そのほかにも、情報技術を先導するAppleやFacebookといった巨大グローバル企業がこぞって社内プログラムにマインドフル
メディアアート/ポストインターネットを軸にNYで活動する若きキュレーター、クリス・ロメロ。インターネットヤミ市 in NYなどをオーガナイズしてきたロメロが、3ヶ月間の東京レジデンスを通して知りえた、日本とアメリカのメディアアート事情を比較考察する。 2016年9月、わたしは東京のメディアアート、デジタルカルチャーを鑑賞するため日本へやって来た。自分自身のリサーチとともに、ドキュメンテーションの一つの形として「(Tokyo Window Sessions)」というウェブをベースにしたプロジェクトを推敲することが目的だ。この現在進行中のプロジェクトでは、アップカミングなアーティスト、展示、そしてわたしの日本における個人的な経験のアーカイブをエッセイやインタビューで特集する。 こうした活動の先には、とりわけアメリカと日本におけるメディアアートのコミュニティをつなぐリンクを築くことを目指している
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