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『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジをはじめ、『幽☆遊☆白書』の蔵馬、『カードキャプターさくら』の月城雪兎/ユエ、『遊☆戯☆王』の武藤遊戯など、数多くの人気作に出演してきた声優・緒方恵美さん。4月28日に刊行された『再生(仮)』は、日本のアニメシーンに大きな足跡を刻んできた緒方さんが、自らの人生をふり返った初めての自伝エッセイです。幼少期から今日までの歩み、出演作にまつわるエピソード、コロナ禍で変わるアニメ界のこれから――。秘蔵写真満載のカラーグラビア16ページも収録した、ファン必読の一冊について、緒方さんにお話をうかがいました。 「お芝居をすれば人と繋がれる」とインプットされた ――『再生(仮)』は、緒方さんが幼少期から今日までをふり返った、初めての自伝です。こういう本を書いて欲しいというオファーは、以前からあったそうですね。 『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビシリーズが終わった1996
『傷痕のメッセージ』の著者で、医師として働きながら意欲作を精力的に発表し続ける知念実希人さんと、病理医として働きながら、医療についてのわかりやすくも深い解説やエッセイを発信する市原真さんの御二人が、病理医を主人公とする本作の魅力を語り合います。 「胃の中の文字」に世界で一番驚いた 市原:今日は対談相手に選んでいただき光栄です。Twitterで交流させていただいていますが、直接お話しするのは初めてですね。 僕は知念先生の大ファンなんです。最新刊の『傷痕のメッセージ』を拝読してまず思ったのは知念先生のワールドが炸裂していること。僕が病理診断医であり、登場人物の一部が病理を専門にしていることを超えて、物語が大変に面白かったです。1人の読者としてまずそのことにお礼を申し上げます。 知念:ありがとうございます。そう言っていただけてホッとしました。病理の専門家に読んでもらうということで、緊張して今日の
第二節 明治・大正の石田三成像 「徳川史観」からの脱却 石田三成への評価は、明治維新によって一変する。江戸幕府が滅びたことで、徳川家康に刃向かった三成を公然と賞賛することができるようになったのである。 明治二十三年(一八九〇)、『史学会雑誌』第二号に小倉おぐら秀貫ひでつらの論考「関原始末 石田三成事績考」が掲載された。当時、明治政府は『六国史』に続く正史を編纂すべく、帝国大学(現在の東京大学)に臨時編年史編纂掛を設置していた。小倉は同編纂掛の編纂員の一人だった。 小倉秀貫は、これまでの石田三成論は三成の欠点ばかりを言挙げし、美点を無視しているので公平でない、と批判する。小倉は「名望権威の赫灼かくしやくたる家康に向って大事を企て、日本半国の諸侯を糾合して兵を起せしは、決して凡庸の徒にあらず」と説く。家康と互角にわたりあった三成が小人物であるはずはない、という〝好敵手〟論である。 にもかかわら
書評家・作家・専門家が《新刊》をご紹介! 本選びにお役立てください。 (評者:東畑 開人 / 臨床心理学者、白金高輪カウンセリングルーム 主宰 http://stc-room.jp/ ) はじめに断っておく。広い読者に向けられた本でもあるけれど、ひとりの心理士として書きたい。この書評の題は、そういう思いからつけたものだ。 私は信田さよ子を知らなかった。不明を恥じる。だけど、私だけじゃない、と言い訳したくなる。誰も信田さよ子を知らなかったのではないか。 もちろん、みんなが信田さよ子を知っている。それもわかっている。彼女はおそらく、日本で最も有名な心理士だ。アディクションとDVの第一人者であり、数えきれないほどの本を書き、多くの良き読者がいる。 それでも思う。信田さよ子は孤独ではなかったか。この25年間、彼女はたった一人で体系を編み上げ、オルタナティブな臨床心理学を構築してきたのではなかっ
第三節 戦前・戦後の豊臣秀吉像 矢田挿雲の『太閤記』 欧州諸国に甚大な被害をもたらした第一次世界大戦後、世界的に反戦感情が広がっていく。大正十年(一九二一)七月三十日の朝日新聞夕刊に掲載された「今日の問題」は、シベリア出兵を批判する中で朝鮮出兵に言及している。すなわち「国論の後援を待たずして日本が出兵し、しかして失敗したのは、豊太閤の三韓出兵と今後のシベリア出兵とである」と説く。世界的な軍縮の流れの中、豊臣秀吉の朝鮮出兵を礼賛する風潮は衰えていく。 豊臣秀吉は人気者であったので、明治以来、講談や芝居はもとより、秀吉を主人公とした小説も少なからず発表された。だが、『太閤記』を大衆文学として完成させたのは、矢田やだ挿雲そううんの『太閤記』であると言われている。 矢田挿雲の『太閤記』は、「報知新聞」の夕刊に大正十四年(一九二五)から昭和九年(一九三四)までの長期にわたって連載された豊臣秀吉の一代
知っていると一目置かれる、誰かに話したくなる日本語のウンチクを、神永曉『さらに悩ましい国語辞典』から厳選してお届け! なので 〔接〕 98番目の新しい接続詞となるか!? 毎年生まれる新語は圧倒的に名詞が多い。そして「イクメン」「スマホ」「どや顔」など、ここ数年の間に生まれた新語のうち、一般に定着するのもほとんどが名詞である。 だが、名詞以外の品詞でも新語が生まれないわけではない。たとえば数の上ではまったくの少数派である接続詞。これだって新語が生まれることもある。接続詞がどれだけ少ないかというと、総項目数9万320語の『新選国語辞典 第9版』(小学館)には収録語の品詞別分類が示されているのだが、接続詞はわずか97語しかない(もちろん日本語の接続詞の数がこれですべてということではない)。 このような新しい接続詞と呼べる語に、「今日は帰りが遅くなった。なので、夕飯は簡単にすませた」などと使われる
>>第一節 近世の織田信長像 第二節 近代の織田信長像 明治時代も豊臣秀吉の方が人気者 だが、明治時代になっても織田信長の人気は芳しくなかった。明治四十年(一九〇七)、言論雑誌「日本及および日本人」四七一号が「余の好める及び好まざる史的人物」という特集を組んだ。一二〇人ほどの有名人に好きな歴史上の人物、嫌いな歴史上の人物を問い、その回答(複数挙げても良い)を掲載したのである。作家の島崎しまざき藤村とうそん・幸田こうだ露伴ろはん、歌人の佐佐木ささき信綱のぶつな、日蓮にちれん宗の宗教家である田中たなか智学ちがくなど、錚々そうそうたる面々が参加している。 アンケート調査の結果、一位に輝いたのは二〇票を獲得した豊臣秀吉であった。二位は楠木くすのき正成まさしげで一一票。三位は徳川家康で一〇票。では織田信長はと言うと、何と一票である。信長に票を投じたのは基督キリスト心宗の創始者である川合かわい信水しん
※本連載は書き下ろしも含めて、5月10日に角川新書から刊行します。 いま、私たちが抱く信長像や秀吉像は最近つくられたものだった!? 時代ごとに変わった武将像を追い、日本人の歴史認識の変遷を解明する!
第三章 織田信長――革命児だったのか? 第一節 近世の織田信長像 儒学者に批判された織田信長 現在、日本で人気がある歴史上の人物と言えば、織田おだ信長のぶながと坂本さかもと龍馬りようまが二大巨頭だろう。信長には残虐なイメージもつきまとうが、そうした欠点を補って余りある革新者としての魅力が広く認識されている。 ところが、江戸時代における織田信長の評価は、総合的にはむしろマイナスであった。本連載で縷々るる指摘してきたように、江戸時代には儒教が基本的価値観を形作っていたからである。 小瀬おぜ甫ほ庵あんの『信長記しんちようき』(一六一一年頃成立、以下『甫庵信長記』と略す)は、織田信長は知勇兼備の名将で私利私欲に走らず、人を見る目があったと評価する一方で、「武道のみを専らに用い」て文を疎おろそかにした、家臣に対して酷薄であった、家臣の諫言かんげんを受け入れなかったことを批判する。儒教における理想的政
二〇二〇年十一月二十三日に作家の小林泰三さんが永眠されました。一九九五年『玩具修理者』で第二回日本ホラー小説大賞を受賞しデビューされたのち、二〇一一年刊の『天獄と地国』で、また二〇一六年刊『ウルトラマンF』でそれぞれ第43回、第48回星雲賞(日本長編部門)、そして二〇一三年刊の『アリス殺し』で二〇一四年啓文堂書店文芸書大賞を受賞されるなど、ホラーだけでなく、SF、ミステリと様々に作風を広げながら、幅広く精力的な執筆をつづけてこられました。 小林さんを偲び、田中啓文さん、恒川光太郎さん、牧野修さんに追悼のお言葉をいただくとともに、その数々の著作から、一部を取り上げてご紹介させていただきます。 小林さんのこと 田中啓文 昨年五月頃に小林さんもまじえたいつものメンバー(他は我孫子あびこ武丸たけまる、北野きたの勇作ゆうさく、田中たなか哲弥てつや、私)でオンラインのトークイベントをやったのだが、好評
十数年ぶりに復活した『木島日記』最新作「もどき開口」。9月末には『木島日記』旧作2作の文庫改訂版が刊行され、三部作の一つ『八雲百怪』のコミックス3巻、4巻も年内に刊行されます。何故、今、「偽史三部作」が再び動き出したのか――著者の大塚英志氏に話をうかがいました。 現実の中にフェイクヒストリーが侵入してきて、その区別が曖昧になっている時代に ── : 大塚さんご自身が代表作と言われている『偽史三部作』シリーズの『木島日記』の小説版の三作目、『木島日記 もどき開口』が発売されました。 大塚: そもそも、虚構の歴史である「偽史」が現実の歴史の中に侵入してきて、日本が戦争に向かっていくという昭和初頭の時代を背景に、この『偽史三部作』シリーズの舞台は設定されています。そして、今、改めて考えると「偽史」と「歴史」、あるいは「虚構」と「現実」の関係が、気がつくとぼくが小説を書き始めた時よりもずっと揺らい
>>第二節 近代の明智光秀像 第三節 戦後の明智光秀像 〈光秀=改革者〉像の出現 戦後になると、儒教的な主従観念はさらに衰退する。戦前には「忠君愛国」を基本理念とした教育が行われ、「武士道」精神も鼓吹されたが、戦後は軍国主義への反省に基づき、そうした考え方は否定されていった。 結果として、明智光秀の謀反を倫理的に評価する論調は後景に退いた。そうした風潮を受けて登場したのが、昭和三十三年(一九五八)に刊行された高柳たかやなぎ光寿みつとしの『明智光秀』である。高柳は東京大学史料編纂へんさん官、國學院大學教授などを歴任した歴史学者である。 拙著『陰謀の日本中世史』でも言及したように、高柳の著書が画期的だったのは、怨恨説の根拠となっているエピソードが、全て江戸時代に著された俗書の創作であることを指摘した点にある。先述の通り、江戸時代には怨恨説が主流であり、近代においても怨恨説への疑問が提出されたも
>>第一節 近世の明智光秀像 第二節 近代の明智光秀像 儒教的主従観念の相対化 前節で取り上げた『絵本太功記』のような例外はあるにせよ、江戸時代において明智光秀は基本的に「逆臣」として非難された。前述の通り、儒教的倫理観に則のっとった場合、いかなる理由があろうとも、主君への反逆は肯定されないからである。 もちろん、儒教にも暴君への反逆を正当化する考え方はある。これを放伐説という。周の武王が殷の紂王を討ったのは放伐の典型であり、『絵本太功記』は放伐説を引くことで、光秀の行為を正当化しようとしている。 だが儒教において、放伐説は必ずしも有力な考え方ではなかった。江戸時代に最も影響力を持った儒教の学派は、いわゆる朱子学である。一般に朱子学は放伐説を採用したと言われている。朱子学は儒学の経典のうち『孟子もうし』を特に重視しており、『孟子』は放伐を肯定しているからである。 けれども中国思想史学者の小
はじめに 織田おだ信長のぶながや豊臣とよとみ秀吉ひでよしや徳川とくがわ家康いえやすといった戦国武将に関しては、だいたいこういう人物だろうというイメージを皆が持っている。その人物像は小説やドラマ、映画などに淵源えんげんしていることが多いので、人それぞれ違う、ということはあまりない。秀吉は人たらし、家康は狸親父たぬきおやじといったイメージが世間一般に広く流通している。 だが、そうした人物像は必ずしも固定的なものではない。昔からずっと同じイメージで語られてきたわけではなくて、時代ごとにイメージは変わっている。我々が抱いている信長像や秀吉像は何百年も前に作られたものではなく、意外と最近、たとえば司馬しば遼太郎りょうたろうが作ったイメージに左右されている、ということが結構ある。そこでこの連載では、信長像や秀吉像が時代によってどう変遷したかということと、実際はどういう人だったのかということを、述べたい
2017年に福村出版から刊行され大きな反響を呼んだ『自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く』。3年の時を経て、角川ソフィア文庫の1冊として刊行されました。「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよね)」の一言から始まって10年にもわたった研究を終えた著者は今、どんなことを感じているのでしょうか。著者である松本敏治さんに寄稿いただきました(この文章は角川ソフィア文庫版に「文庫版あとがき」として収録しています)。 妻の何気ない「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ」というひとことに、私は10年ものあいだ「本当に?」「どうして、なぜ?」と問い続けました。そして同時に湧き上がった疑問。 「なぜ、他の人は目の前にあることを不思議に思わないでいるのだろう」 この研究を通して出会った保護者や支援者の多くは、この現象について「どうしてだろう?」と疑問に思ってくれ
日本で最も有名なクラシックの音楽家であり、世界で最も有名な日本人のひとり――。小澤征爾の生涯は戦後日本のサクセス・ストーリーの象徴でもあります。敗戦ですべてを失ったところからスタート、師との出会い、冒険、強運、挫折、再起、さらなる成功。桐朋学園短期大学音楽家の一期生であり、その後、数々の「日本人初」を達成していった小澤。多くの転機のなかでもひときわ大きな影響を与え、小澤がその舞台を日本から海外へと移すことになった「N響事件」について、「クラシックジャーナル」編集長などを務めた作家の中川右介さんの著書『至高の十大指揮者』(角川ソフィア文庫)から、一部を引用してお届けします。 ――――――――― 1962年5月、ニューヨークでのアシスタント指揮者の契約が終わると、小澤征爾は日本へ向かった。六月からNHK交響楽団の指揮者になったのだ。 NHK交響楽団、通称「N響」は、1925年(大正14)3月に
佐藤亜紀さんが紡ぐ歴史小説を読んで驚嘆するのは、どこが舞台であっても、いつの時代であっても、常に「現在」を生きる自分に引き寄せて読むことができることです。今こそ読んでいただきたい、という思いをこめてご紹介するのは、戦争に翻弄された人々の姿を、驚きに満ちた視点で描きだした3冊です。強大な権力と容赦のない暴力に蹂躙されながらも、自分の価値観を信じ、大切なものを守り抜こうと闘う登場人物たち。権力は牙を剥き、役人たちは利益に群がり、保身に奔走する。国民は“駒”でしかない――そんな中、一人の人間としてどう生きるのか……? 決して過ぎ去った歴史を描いた物語ではありません。閉塞感を感じる現実を突き抜け、生きるために。現代の私たちにとって、必読の書です。 1:第一次世界大戦の最中、特殊な能力を持ち、熾烈なスパイ戦に駆り出された青年。 『天使・雲雀』 名もなき青年が、たった一人で“国家”に立ち向かう! 第一
話し言葉に「方言」があるように、漢字にも「地域漢字」や「地域音訓」が存在します。 中国で生まれた漢字が、起伏に富んだ日本列島の地形や風土をどのように表現してきたのか、豊富な事例で解説する『方言漢字』から、本文の一部を公開します。 「都」に流行るもの 京都での会合の前に、市内を散策してみる。どこか空気にピンと張ったようなところがある。屋根瓦の重そうな鰻の寝床が建ち並ぶ。そして、さすが千年のみやこ、「都」という漢字がどこにでも書かれている。東京からの新幹線の車内で座席を立とうとする時点で、電光掲示板に次の停車駅は「京都」と表示が出る。ドット文字ながら明朝体風であり、やはり日本を代表する車両に出るその地名にふさわしく惚れ惚れするような見事なバランスに仕上がっていた。 前から京都を歩くたびに、気になっていることの一つが、その「都」という漢字の姿だ。それは、「東京」は昔、「東亰」と書かれ、京風を嫌っ
『四畳半タイムマシンブルース』 ◎劇場版 9月30日(金)より3週間限定全国ロードショー 配給:KADOKAWA/アスミック・エース ◎ディズニープラス 9月14日(水)より独占配信(配信限定エピソード含む全6話順次配信) 【CAST】 浅沼晋太郎 坂本真綾 吉野裕行 中井和哉 諏訪部順一 甲斐田裕子 佐藤せつじ 本多 力(ヨーロッパ企画) 【STAFF】 原作:森見登美彦・著、上田誠・原案『四畳半タイムマシンブルース』 (角川文庫/KADOKAWA刊) 監督:夏目真悟 脚本 :上田誠(ヨーロッパ企画) キャラクター原案:中村佑介 主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION 「出町柳パラレルユニバース」(Ki/oon Music) アニメーション制作:サイエンスSARU 製作:「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会 公式サイト:https://yojohan-timemac
「生きていく上で救いのような存在」「涙が止めどなく溢れた」など、発売直後から絶賛の感想が寄せられている『これやこの』。 漫才師で日本語学者でもあるサンキュータツオが、亡くなった人たちのことを題材に描いた17編の随筆集です。 ご自身の大切な人、大事な思い出、後悔や懺悔も含めて、さまざまな思いを巡らせるきっかけになるよう、試し読みを公開します。 黒い店 「古本業界は隙だらけですよ。本が売れなくなったって言っているけど、うちは売り上げあがってますからねえ。十年一日のごとくおんなじことやってて本が売れないなんて言っている連中がいる限り、うちはまだ続けられるんです。だから感謝しないといけませんな、ハッハッハ」 ご主人はパイプの愛好者であった。 パイプに刻みタバコをつめながら、いまの古本業界でまだだれもやっていないことはなにか、ずっと語り続けて、吸いはじめると自慢話とも苦労話ともつかぬ話が続く。 私が
2019年ごろから日本でも話題になり始めたMMT(Modern Monetary Theory、現代貨幣理論)。今回の新型コロナウイルスによる経済への打撃を受けて、再び注目が集まっています。前編では、給付金や補償金といった安易な給付政策の危険性に話が及びましたが、今回の後編は「失われた30年」と呼ばれる日本の停滞が始まったタイミングについて、そして将来の打開案についてお二人に話していただきました。 今の経済学は現実に合っているか? ――日本でのMMTの広がりを見ていると、経済学者ではない「在野」の方に支持されているように思います。まさにお二人も実務家ですが、その理由などはどう考えていらっしゃいますか? 森永:なんていうんですかね、良い意味で「当たり前のことを言っているな」という感じがしました。MMTを語る際によく使われる「誰かの赤字は他の誰かの黒字」という文言も、仕事として帳簿を付けたりし
新型コロナウイルスの猛威が止まりませんが、同時に心配されているのが経済への影響です。「コロナ・ショック」と呼ばれるインパクトを受けて、財政出動の重要性を主張する声も大きくなっていますが、そのような中で再び注目を浴びているのがMMT(Modern Monetary Theory、現代貨幣理論)です。今回は、2019年8月に『MMT現代貨幣理論入門』(東洋経済新報社)を監訳し、12月には『MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論』(角川新書)を刊行された島倉原さんと、2020年6月に『MMTが日本を救う』(宝島社新書)を刊行された森永康平さんに、MMTから見た日本経済の行く末について、お話しいただきました。 財政出動という「タブー」を打ち破る ――新型コロナウイルスの影響が日々報じられる中で、MMT(Modern Monetary Theory、現代貨幣理論)への注目も集まっている
文芸ファンとミステリーファンから熱烈に支持されているベストセラー・シリーズ「ビブリア古書堂の事件手帖」の約2年ぶりとなる新刊『ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~』が、いよいよ発売。今回はミステリー小説界のレジェンド、横溝正史を一冊まるごと扱っています。その刊行を記念して、著者の三上延さんと、横溝研究の第一人者・山口直孝先生の対談が実現。小説家と研究者、それぞれの視点から横溝正史について語ります。 なぜ『雪割草』を取り上げたのか? 三上:山口先生には昨年秋に取材をさせていただきましたね。2018年に、横溝正史が戦時中に書いたという新聞連載小説『雪割草』が初めて単行本化され、その存在を突き止めたのが山口先生であると知って、お話を伺うならこの方だと思ったのです。その節は大変お世話になりました。 山口:実はあのとき『雪割草』を題材にした小説を書きたいとお聞きしても、ぴんとこなかったん
文庫巻末に収録されている「解説」を特別公開! 本選びにお役立てください。 (解説:石いし井い 千ち湖こ / ライター) 『バルタザールの遍歴』を初めて読んだとき、強烈に惹ひかれた一文がある。切り取ったら教訓になるような、いわゆる名言集向きの言葉ではない。でも文字が浮き出て見えた。〈私たちの肖像画に予想以上のビリジャンを費やしたのだ〉という記述だ。 〈私たち〉とは、メルヒオールとバルタザールのことだ。一九〇六年のウィーンで、カスパール・フォン・ヴィスコフスキー=エネスコ公爵の長子として生まれた。本書のあらすじを乱暴に説明してしまえば、貴族のドラ息子の転落物語だ。ただし、そのドラ息子は一つの肉体を共有する双子なのである。 父が息子につけた名前はメルヒオールのみで、バルタザールの存在はないことにされていた。メルヒオールによれば〈私たちが二人であることを認めさせようとすると、人々は一様にぎょっとし
宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論の、世界で唯一の解説書として話題の『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』には、第1章の最後に幻の3ページが存在しました。著者の加藤文元さんが、校了直前に削除した内容とは? 刊行から1年を経て、今回、初めて公開します! 同時公開のインタビューと合わせてお読みください。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ もっと根本的な問題として、たとえ彼が外国旅行に対して消極的であるとしても、そもそも、そんなことが深刻な問題にならなければならない理由なんて、本当は存在しないはずです。これに関して、私が感じている違和感を、最後に述べておきたいと思います。 ある欧米の数学者が、IUT理論の論文に関する問題について論じた、ある人のブログへの返信で、次のように述べています。「何百ページにもおよぶ解説を書くよりも、望月はABC予想の証明にいたる新しいアイデアについて(ボンやパリやボストンなどで
書評家・作家・専門家が《新刊》をご紹介! 本選びにお役立てください。 (評者:先崎彰容) いつまでたってもわからない一冊 NHKのディレクターAさんから、「先崎さん、今度、『100分de名著』で取り上げるとしたら、どんな作品ですか」と聞かれたのは、一年くらい前だろうか。『共同幻想論』、と即答した。毎週月曜日、二五分の番組を四回、月一冊のペースで古今東西の名著を100分で解説するこの番組は、番組開始以来、欠かさずテキストを二冊買い、一冊は収集用にしているヘビーリスナーもいるという、隠れたヒット番組だ。 僕が即答した『共同幻想論』は初刊が一九六六年。今から半世紀ほど前の本だから、「古典」の中では最近の部類に入るだろう。現在では、角川ソフィア文庫で気軽に手に入るこの本が、「現代の古典」たるゆえんはなにか。 まずは当時、学生に絶大な影響力をあたえたこと。著者は吉本隆明。吉本ばななのお父さん、と言っ
世紀の難問ともいわれる「ABC予想」の証明をも含む「宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)」。その「世界唯一の解説書」として話題なのが『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』です。 今回、著者の加藤文元さんは、書籍であえて削除した内容を公開することに決めました。 なぜ削除し、なぜいま公開するに至ったのでしょうか。その思いを、加藤さんに直撃インタビューしました。 当該の箇所は、カドブンにて同時公開します。 国内と数学界、対照的な反応 ――2020年4月3日、望月新一教授が在籍されている京都大学数理解析研究所で「IUT理論がアクセプトされた」との記者発表がありました。以前のインタビューで教えていただきましたが、「アクセプトされる」というのは理論が専門誌に掲載許可され、正しさのお墨付きを得た、ということでした(https://kadobun.jp/feature/interview/99h8
2019年の映画興行収入ナンバー1を記録した『天気の子』。新海誠監督自らが描く映画の設計図(絵コンテ)と、監督ロングインタビューを収録したファン必携の豪華本がついに発売。今回は、助監督三木陽子による作画打ち合わせ時のメモを収録。784ページと絵コンテ集シリーズ最大のボリュームで、映画制作工程をより深く堪能することができる1冊になっている。
第一章 八月十二日 ここに断言する。いまだかつて有意義な夏を過ごしたことがない、と。 一般に夏は人間的成長の季節であると言われている。男子ひと夏会わざれば刮かつ目もくして見よ! ひと皮剝むけた自分を級友たちに見せびらかす栄光の瞬間を手に入れるためには、綿密な計画、早寝早起き、肉体的鍛錬、学問への精進が不可欠なのである。 しかし下宿生活三度目の夏、私は焦燥に駆られていた。 京都の夏、我が四畳半はタクラマカン砂漠のごとき炎熱地獄と化す。生命さえ危ぶまれる過酷な環境のもとにあって、生活リズムは崩壊の一途を辿たどり、綿密な計画は机上の空論と化し、夏バテが肉体的衰弱と学問的退廃に追い打ちをかける。そんな境遇で人間的成長を成し遂げるなんて、お釈しや迦か様でも不可能である。嗚あ呼あ、夢破れて四畳半あり。 大学生時代という猶予期間も折り返し点を過ぎた。にもかかわらず、私はまだ一度たりとも有意義な夏を過ごし
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