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円安とは
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米シアトルのティルス・フェスティバルで並べられたニンジン。(PHOTOGRAPH BY SAM ABELL / NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION) 風邪にはビタミンCがいい? 天気の良い日はビタミンDがたくさん取れるチャンス? それらの真偽はさておき、ビタミンが健康維持に欠かせないのは常識だ。しかし、ビタミンはどうやって名前が付けられたのか? それに、ビタミンはそもそもいつ発見されたのだろうか?(参考記事:「「ビタミンCで風邪を予防」のウソ、誤解生んだノーベル賞化学者」) ビタミン発見の前は 人間は、食事が健康に関係していることを古くから理解していたが、化学や物理学、生物学の発展に支えられて現代の栄養学研究が登場するまでには長い年月を要した。初期の栄養学で実験の中心となったのは、1772年に発見された窒素だった。そこでは、食べ物の中に窒素があるかどう
PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS,NATIONAL GEOGRAPHIC 写真は米国カリフォルニア州のフンボルトレッドウッズ州立公園内で、最も広いセコイアの古木の森。 世界の巨木が次々と死んでいる。世界の森の木々が枯死するペースは年々速くなっており、特に大きい木、古い木ほどその傾向が強い。2020年に発表された学術誌「サイエンス」の論文によれば、そのせいで森林がより若くなり、生物多様性が損なわれ、重要な植物や動物の生息地が失われ、二酸化炭素を貯蔵する能力も低下しているという。(参考記事:「世界で巨木が死んでいる、115年間で原生林の3分の1超が消失」)
レオナルド・ダ・ヴィンチの有名な肖像画「白貂を抱く貴婦人」。ミラノ公の女官だったチェチェリア・ガッレラーニとオコジョが同じ方向を凝視している。1491年頃の作品。このようなオコジョには鋭い爪があるうえに肛門腺からは悪臭を放つので、愛玩動物には適さない。この作品のオコジョは、イタリアのアーミン勲章またはガッレラーニの妊娠を暗示しているというのが専門家の見解だ。(PAINTING BY LEONARDO DA VINCI) 小さくふわふわしていて、誇り高い王や皇帝、専制君主の必需品、それがイタチだ。 このしたたかな小動物は、現在、生息数が次第に減少している。わずかに黒い部分がある白い毛皮は「アーミン」と呼ばれ、数百年にわたって、王室の威厳や権力、壮麗さの象徴として、君主や貴族に長く珍重されてきた。 いったいイタチの毛皮は、なぜ、どのようにして、王族に欠かせない装いとなったのだろうか。 アーミン
米国オハイオ州出身の画家アーチボルド・ウィラードが米国独立戦争を描いた「‘76の精神」。この絵画には元々「ヤンキードゥードゥル」という題が付けられていた。英国兵が植民地兵を揶揄した歌だが、より古い歌の替え歌の可能性が高い。(Archbald Macneal Willard, Graphicaartis, Bridgeman Image) ニューヨーク・ヤンキースは、121年前にメジャーリーグベースボール(MLB)が発足した当初から存在した。MLBが開幕した今、あらためてヤンキーの語源を探ってみたい。それは侮蔑的な言葉なのか? あるいはさまざまな文化圏の人が混ざり合って生まれた発音の間違いなのか? はたまた単なる無害なスラングなのだろうか?(参考記事:「大リーグに欠かせないオルガン演奏、歴史は80年前に始まった」) オランダ語を探れ 「ヤンキー」は米国北東部ニューイングランド地域の出身者を意
NASAの探査機DARTが撮影した小惑星ディディモス(右下)とその衛星ディモルフォス(中央)。DARTミッションの目的は、地球に向かってくる小惑星に探査機を衝突させ、その軌道を変えられるかどうかを検証することだった。この画像を撮影した約2分半後、DARTは予定通りディモルフォスに衝突し、軌道を変えた。(NASA/JOHNS HOPKINS APL) 2022年9月、小惑星に小型の探査機をぶつけて軌道を変え、地球への衝突を防げるかどうかを検証する、人類初の地球防衛実験が行われた。実験は大成功だったが、想定外の副産物も生じた。この実験で飛び散った岩の行方を2万年後まで計算したところ、いずれ火星に非常に接近し、衝突する可能性があることがわかったのだ。論文は2024年2月12日に査読前論文を投稿するサーバー「arXiv」で公開された。 地球に近づく軌道をもつ小惑星(地球近傍小惑星)に対して人類が何
太平洋のシャチには、「オーシャニック(外洋)型」と呼ばれる第4のタイプが存在する可能性がある。画像は、米国カリフォルニアのモントレー湾を泳ぐオーシャニック型のシャチ。(PHOTOGRAPH BY SLATER MOORE PHOTOGRAPHY) シャチは通常、海岸線沿いにとどまる傾向にあるが、大海原をわたり、クジラなどの大きな獲物をとる新しいタイプの群れが新たに見つかったかもしれない。学術誌「Aquatic Mammals」に2024年3月14日付けで発表された研究によると、米オレゴンやカリフォルニアから遠く離れた外洋で、何度もシャチが目撃されているという。多くは大陸棚よりずっと沖合で、水深は約4500メートルに達する場合もある。 「少なくとも北太平洋では、これまでに外洋のシャチを対象とした本格的な研究が行われた例はありません」と、研究リーダーを務めたカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大
満開に咲き誇る京都の桜。毎年この時期、京都には桜を見るために世界中から観光客が訪れる。(Photograph by Rinko Kawauchi) 毎年桜が開花する時期になると、人の心をとりこにする美しい眺めとアーモンドのような香りに引き寄せられて、世界中から観光客が京都に押し寄せる。しかし昨今、桜が満開になる時期は1850年と比較して2週間近く早くなっていることが、2022年5月に学術誌「Environmental Research Letters」に発表された論文で示されている。 気候変動が花を咲かせる植物に与える影響を研究している科学者たちは、その最も重要な基準の一つとして、桜が咲く時期に注目している。「私たちは今、人類がこれまで経験したことのない急激な気候変動に直面しています」と、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学の准教授で、植物群落と気候変動を研究しているエリザベス・ウォルコ
ギリシャのハルキディキ半島で木から垂れ下がったキノコ。英語で「サンゴのとげ」と呼ばれる。(PHOTOGRAPH BY AGORASTOS PAPATSANIS) 太古の昔から地球上の生命にとって欠かせない存在となってきた菌類。私たちの体内にも、身の回りにも潜むが、その重要な役割の多くはまだ解明されていない。キノコやカビ、酵母が秘めた独特な世界を探検する。 植物、動物、菌類 菌類は分類学上、植物とも動物とも違う界である「菌界」を形成していると考えられている。私たちが知る地球上の植物や動物の多くが菌類なしでは存在できない。 たとえば、菌根菌と呼ばれる菌類は、少なくとも4億年前から植物の陸上進出を助けてきた。そこにはごく基本的な取引がある。菌類はさまざまな動植物と共生関係を結んで養分を吸収し、分布域を広げていくのだ。現代の大半の植物では、根にすみ着いた菌類が、光合成の産物である糖を分けてもらう代
米ノースカロライナ州沿岸部のLiDAR(光による検知と測距)画像。地中から漏れ出している水素ガスによって、明るく円形に色づいて見える。地中から水素を回収できれば、温室効果ガスを排出せずに発電できるため、水素が大量に蓄えられた場所を探す取り組みが続けられている。(PHOTOGRAPH BY VIACHESLAV ZGONNIK AND MICHAEL DAVIAS) 地質学の実地調査は、噴火する火山の斜面や極寒の南極の谷底など、ときに過酷な場所で行われる。とはいえ、何度も爆発した鉱山の中で調査されることはあまりない。ところが、南欧アルバニアにあるクロム鉄鉱の鉱山で、まさにそれが行われた。科学者たちの目当ては、ほぼ純粋な水素ガス。爆発のもとであると同時に、世界を変えるクリーンなエネルギー源になりうるものだ。 その水素が漏れ出ているところが見つかったと、2024年2月8日付けで学術誌「Scien
米フロリダ州のレインボー川のロングノーズガー。ロングノーズガーは、西はテキサス州、北はカナダのケベック州にかけて生息している。(PHOTOGRAPH BY ALEX MUSTARD/NATURE PICTURE LIBRARY) チャールズ・ダーウィンが1859年に「生きた化石」という言葉を作って以来、多くの種がこの称号を手にしている。けれどもこのほど、脊椎動物ではガーという魚が最もその名にふさわしい生物であることが明らかになった。しかも、他を大きく引き離しての一等賞だ。論文は2024年3月4日付けで学術誌「Evolution」に発表された。 ガーは鋭い歯をもつ魚雷のような姿の魚で、長い歳月の間にほとんど変化していないことで知られる。現生の7種のガーには、古代のガーの化石と驚くほど多くの類似点がある。そこで、米エール大学のチェイス・ブラウンスタイン氏とトーマス・ニア氏が率いる研究チームが、
ほとんど誰の顔にもいるダニは、どんなふうに生活し、私たちにどんな影響を与えているのだろうか。ナショナル ジオグラフィック別冊『禁断の世界 科学で解き明かす、見たくないけど見たいもの』から抜粋して紹介する。 顔ダニは皮膚のさまざまな症状を引き起こすとされてきたが、今ではとらえ方が変わってきている。(ILLUSTRATION by ARMANDO VEVE) 今この瞬間にも、何百匹、あるいは何千匹ものごく小さな8本脚の動物が、私たちの顔の毛穴の奥深くにこっそりすみついている。私の顔にも、あなたの顔にも、あなたの親友の顔にも、知り合いや恋人の顔にも、ほとんど誰の顔にでもこの生きものはいる。彼らはある意味、私たちに最も近いパートナーだ。 その生きものとはダニだ。体は小さいが、クモガタ類に属し、クモの仲間とされる。あまりにも小さいので肉眼では見えず、動き回っていてもその動きを感じることはない。そもそ
イスラエルのガリラヤ地方で見つかった5世紀に建設されたシナゴーグの床は、モザイク画で飾られていた。右側に描かれているのは、エルサレムの大祭司とアレクサンドロス大王が会談している場面とも考えられる。(PHOTOGRAPH BY MARK THIESSEN) 埋もれていた古代ローマ時代のシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)から巧妙に作られたモザイク画がいくつも発見された。そこに描かれた場面は、長く信じられてきた古代ユダヤ人に関する物語を覆すようなものだった。 考古学者のジョディ・マグネスは、何が見つかるのだろうかと確信をもてないまま、ガリラヤ湖を見下ろす日当たりの良い丘を登っていった。2010年夏のことだ。イスラエル北東部に位置するこの地にはかつて、フコックと呼ばれる古代ユダヤ人の村があったが、そのとき彼女の目に映ったのは、数百年前に建てられた石造りの建物の残骸や比較的新しいがれき、そして咲き乱れるノ
米国土木学会の報告によれば、米国では何千もの橋が「構造的欠陥」を抱えている。26日に崩落したフランシス・スコット・キー橋がその一つだった証拠はないが、整備された橋でも貨物船が衝突すれば崩落の恐れがあると専門家は考えている。(PHOTOGRAPH BY TASOS KATOPODIS/GETTY IMAGES) ボルティモアのフランシス・スコット・キー橋が崩落した事故は、老朽化した橋を維持する資金と動機が不足しているという米国のインフラの難題を浮き彫りにしたと専門家は考えている。 ボルティモアの橋は「古くて信頼性の高いインフラであり、ほぼすべての状況下で、あと20〜30年は持ちこたえるはずでした」と米ノースウェスタン大学マコーミック工学院のジョセフ・L・ショーファー社会環境工学名誉教授は話す。「ただし、主要な橋脚を引き抜いたら、橋を救う方法はありません」 ショーファー氏によれば、ボルティモア
ブラキプラティストマ・ルソーイ(Brachyplatystoma rouseauxii)という巨大ナマズ。写真は、ブラジルの若い個体。金色の体が特徴。(PHOTOGRAPH BY PROFESSOR DR. DIEGO ZACARDI AND MSC. FABÍOLA SILVA) 数十年前、ロナウド・バーセム氏がブラジルのアマゾン川河口域で巨大ナマズの一種、ブラキプラティストマ・ルソーイ(Brachyplatystoma rouseauxii)の研究を始めたとき、困惑したことがあった。それは、おとなの魚がいなかったことだ。成長すると体長2メートルほどになる金色の魚は、いったいどこで産卵しているのだろうか。 長年にわたる調査の結果、驚くべき答えが明らかになった。この魚は、いくつかの国を越え、南米大陸の反対側であるアンデス山脈のふもとまで、はるばると旅をしていた。2023年11月に学術誌「F
二日酔いを防ぐ確実な方法はほとんどない。水分補給を心がけることは予防に役立つかもしれない。酒と水を交互に飲むことも、アルコールの消費を遅くするのに役立つ。(PHOTOGRAPH BY ERIC HELGAS, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 1月を「ドライ・ジャニュアリー」として断酒して過ごした後、2月になって少しずつ飲み始め、そろそろ本格的な飲酒生活に戻ったものの、二日酔いになると不安に襲われる人はいないだろうか。飲んだ翌日の不安という現象はかなり一般的に見られ、ソーシャルメディアでは 二日酔い(hangover)と不安(anxiety)を組み合わせた「#hangxiety(ハングザイエティ)」というハッシュタグも存在するほどだ。(参考記事:「1カ月の断酒が肝臓を救う 世界で広がる「ドライ・ジャニュアリー」」) 飲酒した翌日には頭痛、吐き気、光過敏、疲労感などさまざま
2023年11月6日、ロウアー・キーズのリトル・トーチ・キー島の海で回転するピンフィッシュ。次のページにはイタヤラの幼魚の動画も。(VIDEO BY GREGG FURSTENWERTH) 2023年11月の真夜中、米フロリダ・キーズ諸島でダイビングをしていたグレッグ・ファーステンワース氏は、水中ライトの光が当たった魚を見て驚いた。ピンフィッシュというタイ科の小魚が、苦しそうにひっくり返り、ぐるぐると回転しながら海草藻場を泳いでいたのだ。困惑した氏は、水中カメラで魚の様子を撮影した。 友人や他のダイバーから回転する魚について同じような話を聞くことが増えたファーステンワース氏は、自分のボートから、あるいは夜間に波止場を歩きながら、回転する魚たちの姿を記録しはじめた。 当初、回転する魚の目撃情報はフロリダ半島の先に延びるフロリダ・キーズ諸島のうち、ロウアー・キーズと呼ばれる南部の島々の約50k
ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ 平安の歌人、紀友則(きのとものり)が詠んだ一首。古今和歌集に収められ、小倉百人一首でもお馴染みだ。「日の光がのどかに降り注ぐ春の日に、桜はなぜ、落ち着いた心もなく、散っていくのだろう」といった意味だが、その答えは令和の世に出た。「オートファジーが働いているから」。細胞内の老廃物を細胞自ら分解する仕組みで、日本人がノーベル賞を受賞したことで知られる。これが、花が散る仕組みまでも握っていることを、奈良先端科学技術大学院大学、理化学研究所などの研究グループが解き明かした。 細胞の重要なメンテナンス機能 オートファジーは、細胞内の古くなったタンパク質や細胞小器官を、細胞自ら分解(自食作用)して再利用する仕組み。真核細胞に備わり、細胞内を浄化し、またアミノ酸などの必要な分子を作って細胞を存続させている。動植物が健康を保つために欠かせない、細胞の重
生命の最初の兆候は、約35億年前までに出現した。科学者たちは、初期の生命は落雷によって形成されたか、深海の噴出孔で誕生したのではないかと考えている。(ILLUSTRATION BY GREGOIRE CIRADE, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 約46億年前に地球ができてから数億年の間、地表はほぼ確実に高温で、彗星や小惑星の衝突も激しかったため、いかなる生命体も生息できない環境にあった。だが、約10億年後には、生命が誕生しただけでなく、微生物マット(微生物がマット状にかたまって増殖した状態)の化石という形で痕跡を残すまでになっていた。(参考記事:「40億年前の地球は生命誕生の「温床」だった」) その間に一体何が起こったのか? 5億年かそこらの間に、生命はどのようにして無生物から誕生したのだろうか。これまでに提唱された3つの主な理論を紹介しよう。 1. 大気から雷によって生ま
17世紀のニューアムステルダム(後のニューヨーク)での暮らしを描いたイラスト。(ILLUSTRATION BY STOCK MONTAGE, CONTRIBUTOR, GETTY IMAGES) 現在、米ニューヨーク市の中心街があるマンハッタン島は、一握りのビーズと24ドル相当の現金と引き換えにオランダ人が先住民から買い取ったと言い伝えられている。歴史上最も有名な大バーゲンの一つとして知られる出来事だが、本当のところはどうなのだろうか。マンハッタンがヨーロッパ人の手に渡った本当のいきさつと、取引そのものが今もまだ謎に包まれている理由を見てみよう。 マンハッタンの先住者 1500年代初頭にヨーロッパからの入植者がハドソン川流域にやってきたとき、そこにはすでに何世代も前から「レナペ族」というアメリカ先住民が住んでいた。彼らは、ハドソン川沿いにある緑豊かな島を「マナハッタ」(現地の言語であるアル
髪の毛の主成分のケラチンを極小の球体ゲルにして皮膚に塗ると、発毛や育毛の効果があることを、筑波大学の研究チームが実証した。毛の生える速さが増すことがマウスで確認できた。中高年男性向けの発毛・育毛剤は市場に出回っているが、人体の成分を使用するため、副作用が少なく、薬を使用しにくい産後の女性の抜け毛などにも活用できると見込んでいる。今後、化粧品として製品化し、ヘアサロンや床屋での販売を目指す。 髪の毛や爪、皮膚を構成するケラチンはタンパク質の一種で、何万~何十万という分子量で鎖状につながっている。筑波大学数理物質系の山本洋平教授(材料化学・高分子化学)は、元々様々な物質を極めて小さなサイズで球体化する実験を重ねてきた。中高年向けの発毛・育毛剤である「ミノキシジル」に効果があることは知っていたため、当初は球体にしたケラチンの中にミノキシジルを入れたポリマーを作って、毛根に直接高濃度に作用するよう
オレゴン州中央部に広がる大規模な砂丘の生態系が、フランク・ハーバートが1965年に発表した小説『デューン』のテーマにインスピレーションを与えた。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN HEEB, LAIF/REDUX) ヨルダンのワディ・ラム砂漠やアフリカ南部のナミブ砂漠の象徴的な風景は、フランク・ハーバートが1965年に発表したSF大作『デューン 砂の惑星』に登場する架空の惑星アラキスにインスピレーションを与えたものとして長い間称えられてきた。しかし、ハーバートの想像力の本当の源は、より身近な米オレゴン・コーストの霧深い海岸沿いにあった。 オレゴン州の大部分は、岩だらけの岬や霧に覆われた森、そして降り続ける雨に象徴されるように、アラキスの荒涼とした砂漠風景よりも、むしろアトレイデス家が先祖代々統治している惑星カラダンの緑豊かな海の世界に似ている。しかし、海岸沿いの中央部には別世
南北戦争後の米国で習慣化したチップ。そこには、賃金を低く抑えたいという雇用者の意図もあった。反対する声もすぐに上がったが、チップはあらゆる反発を生き延びてきている。(PHOTOGRAPH BY THOMAS DASHUBER, VISUM CREATIVE/REDUX) ここ数年間で、米国のチップ事情は複雑になっている。タッチスクリーンが浸透したことで、コーヒー1杯からチョコレートバーまで、あらゆるものに18%、20%、22%といったチップを支払いやすくなったからだ。一方で、著名なレストランの店主たちが先頭に立って、チップを廃止しようとしているという報道もある。今、チップの習慣は大きな節目に差しかかっているようだ。 ただし、米国のチップの歴史には、これまでにも大きな節目のようなものがたくさんあり、チップはそのすべてを生き延びてきた。米国にチップを持ちこんだのは、南北戦争後に、世界を旅行した
ADHDと診断される成人女性の数は、2020年以来、米国では倍増した。専門家たちは、誤診が増えているわけではなく、医学がようやく現実に追いついた証拠であると考えている。(PHOTOGRAPH BY MASKOT, GETTY IMAGES) 人の誕生日を覚えていなかったり、仕事の会議に出るのを忘れたり、クレジットカードの返済を管理できなかったり。たびたびそんなことのあるラチ・イドウさんは、22歳だったにもかかわらず、自分は認知症に違いないと思い始めた。ネットで検索してみると、確かに若年性認知症の可能性がありそうだった。しかし医師に相談すると、すぐに否定された。それから4年かけて2人の精神科医を受診した末、ようやく注意欠如・多動症(ADHD)の診断が下された。 すると突然、それまで自分の人生に起こっていたことのすべてが腑に落ちたという。子どもの頃いつもそわそわしていたこと、宿題を終わらせるた
セミのなかには、毎年姿を現すものもあれば、一定の周期でしか姿を現さない「周期ゼミ」もいる。2024年の春は、米国の南東部から中西部で、周期ゼミの2つの大きな集団が同時発生する見込みだ。(PHOTOGRAPH BY REBECCA HALE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 2024年の4月下旬から6月にかけて、米国の南東部から中西部で、200年の時を超えて大自然の交響曲が奏でられる。周期ゼミの2つの集団が221年ぶりに同時に姿を現しはじめるのだ。「今年はとても重要な年になるでしょう。神秘的で驚くべき出来事です」と、「虫博士」として知られる米ミズーリ大学のタマラ・リオール氏は言う。(参考記事:「17年ゼミの大発生始まる、動物たちの反応は?」) 221年ぶりなのは、2つの集団の周期がそれぞれ13年と17年だから。前回同時に姿を現したのは1803年のこと。米国大統領はトーマス
人体のCG画像。赤で示されているのが僧帽筋。(ILLUSTRATION BY SEBASTIAN KAULITZKI, SCIENCE PHOTO LIBRARY PREMIUM) 痛みは痛みを生む、とよく言われるが、首の痛みは頭痛につながることを示す証拠が積み重なってきている。2023年7月に医学誌「Journal of Headache and Pain」に発表された研究により、首まわりの筋肉とある種の頭痛との関係が明らかになった。 研究者たちが50人の参加者を調べたところ、首の痛みと2種類の頭痛(緊張型頭痛と片頭痛)との関連を発見した。さらに、MRI(磁気共鳴画像法)スキャンの結果、頭痛のある人では僧帽筋(背中の中央から首や肩に伸びる筋肉)にわずかな変化があり、それが神経の活性化による炎症ではないかと研究者たちは考えている。 「僧帽筋の変化と、MRIスキャン当日までの30日間の頭痛日
コククジラ(写真はメキシコ、バハカリフォルニア州の海を泳ぐメスとその子ども)は1700年代後半以降、捕鯨によって大西洋からはほぼ一掃されてしまった。(PHOTOGRAPH BY HIROYA MINAKUCHI/MINDEN PICTURE) 3月1日、調査のために米国マサチューセッツ州の沿岸を飛行しているとき、研究者たちは、予想すらしていなかったものを発見した。1頭のコククジラが、この種としては200年以上も目撃されていない場所で潜水し、浮上したのだ。 米ニューイングランド水族館の科学者たちは最初、眼下にいるのはセミクジラだと考えた。セミクジラはこの地域で絶滅の危機にあるため、定期的に監視されている。 しかし、しばらく時間をおいた後、もっとよく見ようと元の場所に戻って撮影すると、灰色の体には斑点があり、頭部は細長い三角形だとわかった。どちらもコククジラの特徴だ。 3月1日に目撃されたコク
ロシア、カリーニングラードで見つかったこの琥珀(こはく)は、古代の動物の行動を今に伝える希少な化石だ。(PHOTOGRAPHS BY ALEŠ BUČEK) 3800万年前に求愛行動をしていた最中に樹脂に捕えられ、琥珀(こはく)の中で保存された2匹のシロアリが見つかり、2024年3月5日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。この研究は、琥珀化石が、いかにして古代の動物の行動についての新たな知見を授けてくれるかを示す好例だ。 この琥珀が科学者の目を引いたのは、絶滅種であるエレクトロテルメス・アフィニス(Electrotermes affinis)のつがいが、求愛行動中の現代のシロアリのように縦ではなく、横に並んだ状態で保存されていたからだ。 求愛行動の際、シロアリは「タンデム歩行」と呼ばれる行動をとる。タンデム歩行のときは、まるで列車の車両のように、1匹のシロアリが
花粉を体に付けたキノコバエを水差しのような形状をした花序(かじょ、花の付いた茎全体)の中に死ぬまで閉じ込めながら受粉していると考えられていた植物のテンナンショウに、キノコバエも卵を産み付けて幼虫を育てる場に利用していることを神戸大学大学院理学研究科の末次健司教授(植物生態学)らが発見した。キノコバエの一部は産卵後に花序から脱出しているとみられる。テンナンショウがキノコバエをだまして見返り無く受粉に使っているという常識を覆し、両者が助け合う共生関係になりつつある可能性を示している。 ナンゴクウラシマソウ(サトイモ科テンナンショウ属)の花に引き寄せられたキノコバエのうち、イシタニエナガキノコバエのみ産卵と脱出ができるものがいる。ふ化したキノコバエの幼虫は腐った部分を食べて育つ(イラスト・神戸大学西垣宏紀さん、末次健司教授) 虫に花粉や蜜を与えて多くの花を訪れてもらうことで受粉し、種子を残す植物
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