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円安とは
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のべ6億の投票 最高裁の裁判官は司法のトップの人たちです。けれど信用を失えば「さらに偉い人」の手によって辞めさせられることになっています。その手を担うのが有権者――。国民審査はそうした意図をもつ制度であるといえるでしょう。 国民審査が実施されるのは衆院選と同じ日です。投票する際は辞めさせた方がよい裁判官の氏名の上に「×」を書き、続投してよい裁判官には何も書かないままとします。開票の結果、「×」が書かれた票が有効票の過半数に達した裁判官は、所定の期間を経た後にその地位を失います。「×」が書かれた票は正しくは「罷免を可とする票」と呼ばれますが、この記事では簡潔に「罷免票」としました。 第25回国民審査(2021年)で用いられた投票用紙の見本を図1に示します。最高裁の裁判官15人のうち、この回は第24回国民審査(2017年)以降に任命された11人が対象となり、のべ6億2898万8848票の有効票
内閣支持率や自民党の支持率が下落して、第二次安倍内閣の発足(自民党への政権交代が起きた2012年)以降でもとりわけ低い水準にあることが世論調査から明らかになっています。その一方で、「野党の支持率も伸びていない」という主張もしばしば耳にします。そうした主張は妥当なのでしょうか。3月14日までに発表された各社の世論調査をもとにして、与野党の平均の推移を描きました。 与野党の支持率 現在、与党を合計した支持率は28.1%、野党を合計した支持率は24.8%となっています。また、支持政党を持たない無党派層が43.4%を占めています。 図1.無党派層の割合と与野党の支持率の平均 与党の支持率は、第26回参院選(2022年)後に、旧統一協会との関係や、裏金問題の露見によって下落してきました。他方で野党の支持率はゆるやかに伸びてはいるものの、その大きさは与党の下げ幅と比べれば小さく、与党の支持をやめた人の
民主党政権が誕生した第45回衆院選(2009年)は、現行の小選挙区比例代表並立制のもとで最も投票率が高かった選挙でした。しかし自民党が政権を奪還した第46回衆院選(2012年)の投票率は一転して下落し、現在に至る長い低迷がおきています。 図1には第45回衆院選(2009年)について、図2には最新の第49回衆院選(2021年)について、各市区町村の投票率を地図として示しました。なお、投票率には比例代表におけるものを用いましたが、小選挙区と比例代表は同時に投票が行われるため、どちらを用いてもほとんど変わりません。 図1. 第45回衆院選(2009年)比例代表の投票率 図2. 第49回衆院選(2021年)比例代表の投票率 この間に選挙に行かなくなった人たちは、どこにどれだけ存在するのでしょうか。図1と図2の差をとれば、かつて投票に行ったものの、今は棄権している人たちの地域分布を知ることができるで
世論調査でわかる支持率とは、実のところ、人々の漠然とした気分が作り出すさざ波に過ぎないのかもしれません。そのさざ波に特別な意味があるならば、それはやがて来る選挙で既存の議員を落選させて、解雇する力を秘めている点においてでしょう。既存の議員は先の選挙で議席を勝ち得た人たちです。ですから今の支持率を読むときに先の選挙との落差を見ることは、単なる「高い」「低い」という印象をこえた実力評価となるわけです。 次の図を見て下さい。この図の曲線は、原則として過去11年あまりで実施された全ての世論調査をもとにして描いた、現状入手しうる最も精密な内閣支持率のトレンドです。図には「前回衆院選水準」として、第49回衆院選(2021年)の投票日当日のラインを示しました。現在の水準は当時より28.3ポイント低くなっています。(なお「ポイント」とは、%で表された値の差を表す単位です。たとえば2%から5%になった場合は
過疎化する自民 自民党は都市と地方のどちらの方で強いのか。その問いへの答えとしては、ただちに以下の図を示すことができます。これは第26回参院選(2022年)の比例代表における自民党の絶対得票率――つまり自民党に投票した人が有権者全体に占める割合を、4つの階級で表したものです。その割合は赤に近づくほど大きくなっています。 図1. 第26回参院選(2022年)比例代表・自民党絶対得票率 さらに次の図を見てください。これは第26回参院選(2022年)が行われた年における過疎の地域を表示したものです。 図2. 過疎区分(一般社団法人全国過疎地域連盟による令和4年4月1日時点の区分) 過疎は自治体の人口や財政力の要件によって評価され、部分過疎、みなし過疎、全部過疎の順に、後のものほど深刻であるとされています。つまり図2では、赤の地域ほど厳しい状況にあるわけです。 図1と図2がこれほど似たものとなるこ
先に公開した次期衆院選比例代表のシミュレーションでは、わずかな得票数の差が結果を大きく左右する議席帯とそうでない議席帯の存在を明らかにしたうえで、それが比例ブロックに由来する歪みであるといった議論を行ってきました。けれども比較対象とするべき参院選の全国比例の検討をしていません。 そこで今回は参院選に関して同等のシミュレーションを行い、その議席帯の分布を明らかにしていきます。ドント式など基本的な計算は衆院選と共通するものが多いので、必要に応じて下の記事を参照してください。 参院選の比例代表は全国が一つの区とされているため、全国で合計した票のみを考えるだけでよく、地域分布は検討に入れる必要がありません。その意味で政党の個性は埋没します。 それでは衆院選のシミュレーションのように個々の政党をそれぞれ計算する必要はないのでしょうか。実はそうでもなく、各政党の結果は全く同じものとはなり得ません。なぜ
日本の国政選挙では、衆院の37.8%と参院の40.3%の議席が比例代表で決められます。割合としては半分に及ばないものの、中小規模の政党は議席を比例代表に依存する割合が大きく、その見積もりは重要です。 そこで今回は、各政党の地域的な勢力バランスを反映したうえで投票率と得票数が様々に変化した場合を想定し、次期衆院選の比例代表を念頭においた大規模なシミュレーションを行いました。 その結果、獲得が見込まれる各政党の議席数を、投票率と得票数でつくられる平面上の「議席帯」として捉えることが可能となり、わずかな得票数の違いが大きく議席に影響する帯域と、票が増えてもほとんど議席が変わらない帯域が存在することが明らかになりました。 別の言い方をするのなら、これは現行の衆院の比例代表制がいかに「比例」的でない歪みをおびているのかということを端的に描写したものです。 シミュレーションの概要 記事の構成上、まずは
前々回にあたる第25回参院選(2019年)のできごとなのですが、共産党のある候補者の得票数がゼロと集計された自治体がありました。このことは投票した当事者によって、自身の票が計上されていない問題があると指摘され、自治体との訴訟になりました。この裁判は高裁まで進み、今年1月に原告らの訴えが棄却されています。 裁判の反響は大きかったようで、この問題をデータの面から検証してほしいとの要望を、今年になってからしばしば受けました。今回はそれに可能な範囲でこたえつつ、選挙のデータを見るための、得票率とは異なる新しい指標を提示します。また、その指標を用いて第26回参院選(2022年)比例代表の全ての候補者を見ていくことにします。 ゼロ票ということはありえるのか 問題となった自治体は大阪府の堺市美原区で、ゼロ票とされた候補者は共産党から立候補した山下よしき氏です。投票したと言う人がいるのにもかかわらず票が計
参政党は極右政党の一つとして挙げられることが少なくありません。確かに掲げる政策や、演説で述べられる歴史認識などからはそうした面がうかがえます。代表の松田学氏も、かつては次世代の党に所属していた政治家です。しかし他方で、参政党の支持者は独特なメンタリティをもっており、その点を察知しなければ今の社会の一角を見誤ってしまうと思われます。 文字通りの極右というならば、核武装や排外主義を真っ向から掲げる日本第一党や新党くにもりを挙げることができるでしょう。しかしこれらはほとんど有権者からの支持を受けておらず、第26回参院選(2022年)でも当選ラインには全くおよばない結果に終わりました。それらの合計と比べても、参政党の集めた票は桁ひとつほど違うのです。それどころか参政党の得票数は、かつての国政政党である次世代の党や日本のこころ、保守党や保守新党が臨んだすべての選挙を超えています。それがなにゆえなのか
「いま選挙があったら各政党はどれほどの票を得るのか」を推定できるようになったので、結果を簡単にまとめます。ここでいう「票」とは、衆院選や参院選の際に全国で得る比例票をさしています。 まずは最近の世論調査を簡単に振り返ってみましょう。なお、以下のグラフは全て2023年7月30日時点の情報を反映し、更新を行っています。 最近の世論調査 はじめに内閣支持率と不支持率です。 図1. 内閣支持率と不支持率の平均 各社の世論調査は、調査の手法や質問のかけ方によって、高めの数字が出やすかったり低めの数字が出やすかったりする固有の偏りをもっています。そこで、図1ではそうした偏りを打ち消す補正を行ったうえで1日ごとの平均をとりました。〇、△、◇などの一つ一つの点が世論調査を補正した結果で、赤と青の曲線が平均です。 現在、岸田内閣の支持率は平均31.6%まで低下し、倒閣危険水域が迫りつつあります。もっとも、内
国民民主党は、代表の顔は同じでも、2020年の再編の前後で異なる性格を持つ政党です。今回は前半でその不連続性を分析し、後半では一つ一つの選挙を振り返りつつ、独特の原発地盤や民社党時代からの連続性に踏み込みます。それとともに記事の各所で取り上げたのは、次期衆院選に臨む際の立憲民主党の姿勢についてでした。議論の一助としていただければ幸いです。 「旧」と「新」で異なる国民 立憲民主党と国民民主党は、いずれもかつての民進党をルーツにもった政党です。大まかな流れを以下にまとめました。 図1.民進党以降の各政党の変遷 この図1は、各政党の変遷とあわせて、国会議員の流れを矢印として表したものです。無所属議員の出入りや選挙の当落を反映すればさらに詳細になりますが、ここでは概観が目的なので主な動きにポイントを絞りました。 1996年から20年間にわたってあり続けた民主党は、2016年に民進党と名を変えた後、
社民党は、社会党時代からの長い歴史をもつ政党です。今回は前半で、党が分裂するなかで票が増えた現状を分析し、後半では33年分の票の推移を検討するとともに、2倍の支持率の差をはねのけて自民党に圧勝した土井ブームのダイナミズムに迫ります。 党は割れ、票は増えた 2020年の12月に党が分裂し、所属する国会議員の半分が立憲民主党に移籍してしまった社民党にとって、第26回参院選(2022年)は正念場だったといえるでしょう。地方組織や職員を失ったこと、労組の支持が離れたことなどが重なって、社民党の地盤では大幅な票の減少がみられました。 従来の地盤が大きく沈下したことを、下の表1に見ることができます。これは、第25回参院選(2019年)の絶対得票率(%)が高かった50の市区町村について、第26回参院選(2022年)の絶対得票率(%)と増減(ポイント)を集計したものです。増減は北海道 占冠しむかっぷ村を除
次期衆院選の比例代表の情勢を探るべく、2段階のシミュレーションを行いました。まず1段階目では、第26回参院選(2022年)の全国比例の票を衆院選の比例ブロックごとに再集計し、ドント式の計算によって議席を求めました。まずはその結果の一覧を示しましょう。 1段階目のシミュレーションの結果・各政党の獲得議席数一覧 これは議席予測ではなく機械的な計算の結果です。比例ブロックごとに0や1となったもののなかには、当選ライン付近にあたる僅差の当落が多々あります。そうしたものがどのように動きえるのか、実際のところは衆院選と参院選の傾向の違いや、時間的な党勢(支持率)の推移、各政党が選挙に臨む姿勢などに応じて、検討を加える必要があるわけです。 そこで2段階目のシミュレーションでは、特定の政党の票を変化させ、票が増えた場合の「議席獲得条件」や、票が減った場合の「議席喪失条件」をさぐりました。特定の政党について
先に公開した立憲民主党の記事「第26回参院選(2022年)立憲民主党――支持されるとはどういうことか」は、たいへん多くの人に読んでいただくことができました。厳しい話も率直に書きましたが、総じて好意的な評価が得られたことをうれしく思います。 さて、先の記事には、第49回衆院選(2021年)から第26回参院選(2022年)にかけて、「立憲が失った票は他の党に回ったのではなく、かなりの部分が棄権したことが示唆される」「維新に票を奪われたわけではない」とした部分がありました。これは得票数や出口調査の検討によるものですが、そうした情報は二つの選挙の票の流れそのものをとらえようとしたものではないため、決め手を欠く面もありました。 たとえば、「第49回衆院選(2021年)で維新に入れた人のうち、かなりの部分が第26回参院選(2022年)では他の政党に投票したり棄権していた可能性はないのか。そうして減った
大した内容ではないのですが、4月23日に行われた衆参補選について少しだけ書きます。 4月28日に国民民主の榛葉賀津也氏が、小西洋之氏のいわゆるサル発言に触れて、「あの発言がなければ、大分と千葉はどうなっていたかわからない」と述べました。 けれども千葉5区というのは、もともと2012年以降、自民の薗浦健太郎氏が4連勝してきた選挙区です。しかも今回、野党の候補者は立憲、共産、国民、維新、政女、無所属と乱立しており、基礎となる票は自民の英利アルフィヤ氏が断然多いとみられました。 序盤には立憲の矢崎堅太郎氏が先行しているという報道がされたものの(4月12日・千葉日報)、補選の背景に薗浦氏の政治と金をめぐる問題があり、自民支持層が意欲を欠いていたことと、英利アルフィヤ氏になじまない右派層がいたことがありました。ですから序盤の情勢がどうであれ、自民が票固めを進めれば伸びるはずだと読むのが普通です。また
れいわ新選組は、結成の3か月後にむかえた第25回参院選(2019年)で2議席を得ました。これは政党要件を持たない政治団体が参院の非拘束名簿式で当選者を出した初の事例であり、朝日、毎日、産経などが躍進と報じました。 他方でこれは、野党各党がれいわ新選組を警戒することを結果します。与党も同じでした。れいわ新選組の勢力は小さいものの、もし既存の野党共闘勢力と結びついて無党派層を揺さぶる動きに発展していけばどうなるか――。そこで、あのような勢力はただのポピュリズムに過ぎない、N国党(後のNHK党、政治家女子48党)や参政党と同じだといったように矮小化することも行われ、党や支持層に対するイメージは様々な形でゆがめられてきました。 しかし現在は、結成から4年の時を経て多くのデータがそろいつつあります。れいわを支持するのはどのような人たちなのでしょうか。れいわは従来の野党の支持層を大きく削ったのでしょう
2023年4月9日に行われた統一地方選前半日程の、41道府県議会の選挙結果をツイッターとフェイスブックにあげたところ、一覧にまとめてほしいという声があったのでここにも掲載しておきます。 集計はNHKに基づき、公認候補のみを分類しています。実際は無所属の中にも各党の推薦候補が存在しますが、そこまではやっていません。立憲と国民の色が区別しづらかったりしますが、昨日とっさに作ったものなのでご容赦ください。ここに掲載したグラフは自由に転載して使ってもらって構いません。 北海道議会自民 49(±0) 公明 8(±0) 無所属 17(+6) 諸派 0(±0) 政女 0(±0) 参政 0(±0) 維新 1(+1) 国民 0(±0) れいわ 0(±0) 社民 0(±0) 共産 2(-1) 立憲 23(-1) 青森県議会自民 25(- 4) 公明 2(±0) 無所属 12(+6) 諸
第20回統一地方選挙の前半日程は、4月9日投票です。下の地図で色のついた自治体は、すべて何らかの選挙が行われます。ぜひ立候補者を確認し、投票してください。 統一地方選挙および同時に行われる衆参補選の日程は次の通りです。 ここからは、知事選と政令市長選について行われた情勢報道を一覧にしています。 知事選 政令市長選 以上です。知事選や市長選が大差と報じられている場合も、道府県議選と政令市議選は多くの候補が接戦を展開しています。4月9日はぜひ投票に行ってください。
日本維新の会は第49回衆院選(2021年)と第26回参院選(2022年)で議席を増やしました。支持率も以前と比べて大幅に伸びており、一時は結党以来最高になったと言われていたほどです。こうした状況をうけて、立憲民主党などの他の野党のなかからも、日本維新の会への支持の高まりに注目すべきであるといった声が相次いで上がりました。そこで、この記事では維新の実力を、時間的に、また地域的に、できるだけ正確に評価して、現状認識の一助とすることを目指します。 まずは2013年1月から現在にいたる維新の支持率を見てみましょう。 図.1.全国世論調査による日本維新の会の支持率 世論調査は様々な新聞社、通信社、テレビ局によって行われており、それぞれ微妙に異なる支持率が発表されています。そこで各社の偏りを補正したのちに加重移動平均をとり、解像度を高めたものを図1に示しました。 維新はもともと2009年4月25日に大
先の記事「第26回参院選(2022年)立憲民主党――支持されるとはどういうことか」は、たいへん多くの反響をいただくことができました。国会議員や秘書の方だけでなく、現場で選挙に関わっている方からも、そしてなにより立憲民主党に投票してきた人たちからも評価してもらえたのは望外の喜びです。 けれどその中に一定数、先の記事は無党派層を重視するあまり、連合に関する記述をほとんど欠いているといった趣旨の批判が寄せられました。そこで今回は連合について取り上げることにします。 連合とはいかなる組織なのでしょうか。それは多くの選挙で野党の支持基盤の一角をなしています。他方で芳野会長が自民党の幹部と接触したり、野党共闘に否定的であることが報じられると、果たしてこれは本当に野党を支える存在と言えるのか、むしろ内部から骨抜きにしているのではないかといった疑問の声があがることも少なくありません。野党に期待する有権者か
立憲民主党にとって、第26回参院選(2022年)は議席を減らしただけでなく、比例代表で維新に100万票以上も離されるなど、敗北というよりほかにない結果でした。なぜそのようになったのか、これまで様々な主張がなされてきましたが、そうしたことを論じる前に、実際にどのように票を減らしたのかを正確におさえるのが科学的な態度であるはずです。今回の記事はそこから始めましょう。 一人負けの構図 まずは全国集計の比例代表のデータから全体像をつかむことにします。擁立した候補者の数に依存する選挙区の票と違い、比例票は党の基礎体力を表すバロメーターとみなすことができます。 枝野代表のもとで臨んだ第49回衆院選(2021年)から、泉代表に交代した後の第26回参院選(2022年)に至る比例票の変化を表1に示しました。 表1は、この二度の選挙に臨んだ政党と政治団体について、得票数と絶対得票率、およびその増減を掲載したも
共産党は近年の国政選挙で票を減らし続けており、支持者の高齢化による集票力の低下が指摘されています。確かに10年以上もかけて緩やかに票を減らしてきた公明党などの場合、そうした説明は妥当性を持つといえるでしょう。けれど共産党に関しては、そのような解釈は誤りをおかしていると言えるのです。 次の地図を見て下さい。これは昨年行われた第26回参院選(左)と、民主党政権下の2010年に行われた第22回参院選(右)について、市区町村ごとの絶対得票率を地図にしたものです。 図1.第26回参院選と第22回参院選の絶対得票率 あまりに両者が似ていることに少なからぬ人が驚かれるのではないでしょうか。全国で集計した得票数は、第26回参院選が361万票で、第22回参院選が356万票。それらはわずか5万票あまりしか違いません。つまり現在の共産党の集票力は、全国的に民主党政権下の水準に戻っているのです。(このため今年行わ
公明党は先の参院選で比例代表の得票数を減らし、政権与党の座について以来の低水準となりました。このことについて、支持者の高齢化にともなう運動量の低下や、自公協力のほころびなどが指摘されています。しかしながらどの地域でどれほど票を減らしたのかということや、それが次の国政選挙や統一地方選挙にどのように影響しうるのかということが、いまだ具体的に議論されていません。そこで今回は、過去45年間にわたる全国の市区町村の票のデータをもとに、公明党の地盤の形成過程や、現在おきている異変を解明していきます。 自公協力における供与と逆供与 広く知られているように、これまで自民党と公明党は選挙協力を行ってきました。これは、小選挙区では公明党支持層が自民党の候補に投票する一方、比例代表では自民党支持層の一部が公明党に投票するというもので、2000年以降の衆院選で顕著になっています。前者の票の動きを「供与」、後者を「
今回から各政党の個別の議論を行っていきます。選挙区、比例代表、候補者の個人票など議論するべきことは多岐にわたり、自民党ばかり扱っていると今年が終わってしまうので、今回の自民党PART1の後は他の政党を一つずつ取り上げ、それが一巡した後にPART2に進む予定です。 さて、先に「何人に一人が自民党に投票しているのか」という記事で自民党の絶対得票率の地図を公開した際に、自民党が本当に強かった時代とは違い、近年は5人に1人の票によって勝つような選挙がなされていることを述べました。けれどそうは書きつつも、かつての自民党がいかに強かったのかというデータは示せませんでした。 そこで、今回は総務省や選挙管理委員会がWebで公開していないデータまで用いて、全ての市区町村について過去39年分の絶対得票率の計算を行いました。地図とアニメーションによって自民党の票の動きを完全に可視化します。 39年間の投票率の動
今年行われた参院選で自民党は改選過半数を得て勝利しましたが、他方で有権者全体のうち自民党に入れたのは5人に1人であるという現実があります(ここで有権者全体とは、投票者のみではなく棄権者も含めた全体を指しています)。このことを具体化するために、全国の市区町村について「何人に一人が自民党に入れたか」を求めて地図を作りました。多くの人に見ていただきたいので全体公開します。 まずは比例代表です。 図1.第26回参院選(2022年)比例代表・何人に一人が自民党に入れたか 赤で塗られている3人に1人以上の地域は、ほとんどが伝統的に自民の強い地方の町村部でした。他方で都市部の多くでは6人に1人未満となっています。 そして次に示すのが選挙区です。 図2.第26回参院選(2022年)選挙区・何人に一人が自民党に入れたか 選挙区では、全ての1人区、2人区と、3人区の千葉と北海道で公明が自民に協力しているため、
未来社会プロジェクトのメンバーシップをスタートし、登録していただいた方にむけてWeb上で閲覧できる記事を配信していきます。図表つきのメールマガジンのようなものを想定していただければと思います。名前は「みちしるべ」に決めました。 これまでぼくは政治に関するデータや議論を広く一般に公開してきたので、ぼくのことを昔から知っている人ほど、こうしたものは似合わないと感じられるかもしれません。それはぼくも同感で、今までのやり方が維持しきれなくなったことを申し訳なく思います。しかしながら、身を守る必要が生まれてきたことと、その中でできることを確保していくことを考えて、暫定的にこのような形をとることにしました。 情報が全ての市民のものであるという考えは今も変わりません。重要な議論を一般公開しつづけることも基本的に変わりません。そのうえで、ここでは次のようなことを考えています。 まず第一には、政治に関するデ
今回から、今年おこわれた参院選の分析を「みちしるべ」にて公開していきます。初回は、各政党と政治団体の比例代表の概観です。 まずは最近3年間の国政選挙でおきた比例票の変化から見てみましょう。次の表は、第25回参院選(2019年)と第26回参院選(2022年)比例代表の得票数と得票率の比較です。政党と政治団体は、自民党と公明党を上におき、他は第26回参院選(2022年)の得票数順に並べました。 表1.第25回参院選(2019年)と第26回参院選(2022年)※比例代表です 二度の参院選の比較なので、これは3年間で起きた変化となっています。維新が票を伸ばし、立憲が票を減らしたこと、参政党ができたこと、れいわはほぼ横ばいであることなどがうかがえます。 第49回衆院選(2021年)と第26回参院選(2022年)の比較はどうでしょうか。これは9か月間の変化にあたりますが、立憲の一人負けの様子が一目瞭然
これまでに発表された全ての全国世論調査から平均を出した結果、内閣支持率の下落と連動する形で、国葬の賛否が急速に「反対」へ傾いていったことがわかりました。 一通り9月の調査が出揃ったことですし、ここで最近の世論を概観してみましょう。 次に示す図1は内閣支持率と不支持率の平均です。今年7月の参院選の後、内閣支持率は急速な下落を始めました。支持率と不支持率は9月4日に交差して、現在の平均は支持率38.4%、不支持率46.2%となっています。 図1.内閣支持率・不支持率 内閣支持率30%は倒閣危険水域(または単に危険水域)、20%は退陣水域と呼ばれます。現在、内閣支持率は「毎日新聞・社会調査研究センター(毎日・SSRC)」と「選挙ドットコム・JX通信」という2つの世論調査で誤差範囲ながら30%を切っており、危険水域に入ったという報道も見られるようになりました。しかしながら、この2つの世論調査は調査
9月27日に実施が計画されている安倍元首相の国葬について、野党はその法的根拠の欠如を指摘してきました。立憲民主党の泉健太代表も8月26日の会見で「国葬開催は法的根拠や基準がなく、認めるわけにはいかない」と述べています。しかしながら泉氏はまた、9月2日の会見のなかで「国が関与する儀式は一つ一つ重たい。本来であれば基本的に出席する前提に立っている。それが本当に悩ましい」と話し、出席の可否については党内で議論する考えを示しました。そこで議論の一助となることを期待して、もしも立憲民主党が国葬に出席した場合に、その選択が何を結果するかについて書くことにしましょう。 国葬に出席する場合に党としてなし得る説明は、単純な場合分けから次の二通りとなるはずです。 ①今回の国葬は法的根拠がないものと我々は考える。しかしながら我々は今回、その法的根拠がない行為に加わることとした。 ②今回の国葬は法的根拠がないもの
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