ジャック・ラカンは、フランスの精神分析学者だった人物です。大学で哲学を学んだ後、精神医学の道に転身しました。 主な著作には『エクリ』などがあります。 彼の「フロイトに帰れ」を標語にして、フロイトの精神分析を構造主義的に解釈しました。 鏡像段階 鏡像段階とは、ラカンの理論で中核をなすものです。 生後6カ月から18カ月の幼児は、鏡の前に立ち自らの姿を見て歓喜するという行動が観察されます。ラカンはそこに自我の発生の原理を見出しました。 生後間もない乳児は、神経系が未発達で、自己の身体感覚も完全にバラバラな状態を生きています。しかし、鏡の中の自分を見ることによって、乳児は初めて「まとまりのある自己」を獲得していきます。ただし、鏡の中の像は、自分の外の世界に存在しています。そのような意味では、鏡の自分とは、完全には自分ではない他者ともいえます。それゆえ、鏡像によって自己の統一性を獲得することは、同時