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PlayStation®4︎の自動車レースゲーム『グランツーリスモSPORT』。新たに開発された人工知能(AI)が、このゲームの世界チャンピオンに勝利した。レースで勝つには、リアルタイムに車両を制御していく能力に加え、対戦相手に敬意を払って運転するマナーを学ぶ必要もあった。このAIの研究開発メンバーの1人、河本献太氏(株式会社ソニーAI)に話を聞いた。 Credit: Gran Turismo Sport: TM & © 2021 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc. ―― 『グランツーリスモSPORT』はどのようなゲームですか。 河本氏: ソニーのPlayStation®4でプレイする自動車レースのシミュレーションゲームです。eスポーツとしても楽しまれていて、国際自動車連盟(FIA)
140か国以上の人々のワクチンに対する態度を分析したところ、ワクチンに対して中立的な態度をとる人々は、ワクチン支持派の見解よりもワクチン反対派の見解に同調する可能性があることが明らかになった。この知見を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。 ワクチンについては、その安全性と有効性が報告されているが、接種率が低下したために、これまで十分に管理されていた疾患(麻疹など)が流行し、世界保健機関(WHO)は、ワクチン忌避が公衆衛生に対する大きな脅威だと宣言した。 今回、Dino Carpentrasたちは、科学と健康に対する人々の態度に関する年次調査「ウェルカム・グローバル・モニター2018」によって収集された、144か国の14万9014人の人々のワクチンに対する態度に関するデータを分析した。Carpentrasたちは、この調査の回答者がワクチンを肯定的に受け止めてい
ニューロンの樹状突起には「スパイン」と呼ばれる出っ張り構造が多数あり、スパイン頭部は長期記憶の形成に際して増大することが知られている。この現象を見いだし、スパインの可塑性と機能について研究を続けてきた河西春郎・東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構特任教授は、このほど、スパインの頭部増大で生じた圧力が軸索側のシナプス前部を押すことで、ニューロン間の情報伝達が行われることを突き止めた。 Credit: Mark N Miller, University of California, SF/Moment/Getty ―― まず、スパインについて簡単にご説明ください。 私たちが日々の出来事を記憶したり、学習したりできるのは、膨大な数の神経細胞(ニューロン)が回路を組み上げて働くからに他なりません。1つの神経細胞は、核を収納する「細胞体」と、細胞体から伸びる「情報送信用の突起(
DNAやRNAに必要な構成要素であるピリミジン核酸塩基は、炭素を多く含む隕石によって地球に運ばれた可能性があることを示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。 DNAやRNAの合成に必要な化学的構成要素である核酸塩基には、ピリミジン核酸塩基(シトシン、ウラシル、チミンなど)とプリン核酸塩基(グアニン、アデニンなど)の2種類があるが、これまでに隕石中で特定されたのはプリン塩基とウラシルだけだった。ところが、星と星の間の空間に存在する物質(星間物質)の条件をシミュレーションする室内実験でピリミジン核酸塩基が検出され、隕石による物質の運搬が起こった可能性があると推論されるようになった。 今回、北海道大学低温科学研究所の大場康弘(おおば・やすひろ)たちは、微量の核酸塩基を定量することに最適化された最新の分析技術を用いて、炭素を多く含む3つの隕石(マーチソン隕石、マレ
米国の著名な進化生物学者 Stephen Jay Gould(1941–2002)は、人種差別に反対するあまり、19世紀の医師 Samuel Morton の成果を意図的に歪めて、解釈・批判していた。 著名な研究が、著者の死後に問題視されたケースは、これまでにも多数ある。例えば1978年、ハーバード大学(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)の物理学者Gerald Holtonは、ノーベル物理学賞受賞者であるロバート・ミリカンによる1913年の油滴実験の論文を取り上げ、データが恣意的に選択されたことを批判した。 逆に、批判自体が批判されたこともある。例えば1936年、英国の統計学者Ronald Fisherは、オーストリアの修道士グレゴール・メンデルを相手に、エンドウマメにおける遺伝継承パターンを実証したデータが整いすぎていると批判したが、2007年にハーバード大学の生物学者Daniel H
過去200万年間のヒト族種の居住地の分布は、地球の気候の変化に大きく影響されていたことを明らかにした論文が、Nature に掲載される。今回の研究は、広範なデータ情報資源を利用しており、ヒトの進化の歴史に関する重要な知見をもたらしている。 過去500万年の間に、地球の気候は、鮮新世(530万~260万年前)の温暖湿潤気候から更新世(260万~1万年前)の寒冷乾燥気候へと移行した。これと同時期に、地球が太陽を周回する軌道の変化(いわゆる「ミランコビッチ・サイクル」)が地球の気候に影響を及ぼしたため、現代の科学者は、天文学的に強制された気候変動と人類の祖先の移動との関連性を論じるようになった。しかし、この関連性を証明するために必要な総合的な古気候データセットが不足している。 今回、Axel Timmermannたちは、新たなモデル化研究のデータを化石解析と考古学的解析と組み合わせて、5つのヒト
健康な人を新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に曝露して意図的に感染させる実験から1年、最初の論文が発表された。参加者のうち、感染したのは半数だけであり、その大半が軽症だった。 ヒトチャレンジ試験の参加者たちは、鼻水や咽頭痛など、他の呼吸器感染症でよく見られる症状を訴えた。発熱はそれほど多くなかった。 Credit: MORTEZA NIKOUBAZL/NURPHOTO VIA GETTY 健康な若者を新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2;SARS-CoV-2)に意図的に曝露して感染させる、世界初の「ヒトチャレンジ試験(human-challenge study)」から、未査読ではあるが、最初の報告がプレプリントサーバーに投稿された。それによれば、この試験では、参加者は感染したとしても軽症にとどまっていたことが分かった。ヒトチャレンジ試験は、ウイルス感染症を最初か
古代ギリシャの碑文を復元できるように訓練されたディープニューラルネットワークを複数の歴史学者が利用すると、最高72%の精度が達成されることを示唆する論文が、今週Nature に掲載される。今回の研究で得られた知見は、新たに発見された碑文や不明瞭な碑文の復元と作成年代や作成場所の推定を、スピードと正確さを向上させることで支援し、古代史の理解を進めることができるかもしれない。 歴史学者は、古代文明の歴史を解明するため、今日まで残っている素材(石、陶器、金属など)に過去の人々が直接記した碑文の研究をしている。しかし、数多くの碑文は、何世紀にもわたって損傷し、今では判読不能状態にあり、作成年代もはっきりしない。碑文研究の専門家であるエピグラファーは、欠落した文章を復元できるが、彼らの伝統的な方法は非常に複雑で膨大な時間を必要とする。 今回、Yannis AssaelとThea Sommerschi
今回のコロナ禍で大きく飛躍したmRNAワクチンの研究は、実は、何十年も前から、数百人の科学者によって進められてきた。 ファイザー社/ビオンテック社が開発したCOVID ワクチンの塩基配列。Ψはウリジン(U)ヌクレオチドを修飾したプソイドウリジン。 Credit: NIK SPENCER/NATURE 1987年末、ソーク生物学研究所(米国カリフォルニア州ラホヤ)の大学院生だったRobert Maloneは、メッセンジャーRNA(mRNA)鎖を脂肪滴と混ぜ合わせて「遺伝子ごちゃ混ぜ」スープを作り、そこにヒト細胞を浸した。すると、細胞はmRNAを取り込み、それに基づいてタンパク質を産生し始めた1。 自分の発見が医学にとって大きな可能性を秘めていることに気付いたMaloneは、後でこのことをメモし、署名と日付を入れた。1988年1月11日のメモには、細胞内にmRNAを送達し、細胞がこのmRNAか
コロナウイルス:第2世代COVID-19 mRNAワクチンの有効性 2022年1月20日 Nature 601, 7893 D Barouchたちは今回、ヌクレオシドを修飾せず非コード領域を最適化した第2世代mRNAワクチンの非ヒト霊長類における効果について報告している。
新型コロナウイルスのデルタ株の猛烈な感染力には、スパイクタンパク質中の、ある重要なアミノ酸の変化が関係しているかもしれない。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者から分離したSARS-CoV-2粒子。 Credit: NIAID 感染力の非常に強い新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2;SARS-CoV-2)デルタ株との戦いが世界中で繰り広げられている今、科学者たちはデルタ株の挙動の生物学的基礎の解明を急いでいる。多くの研究は、デルタ株に見られるあるアミノ酸の変化が、急速な感染拡大に寄与している可能性を強調している。疫学研究から、デルタ株の感染力は、2020年末に英国で最初に確認されたアルファ株に比べて40%以上高いことが示唆されている。 テキサス大学医学部ガルベストン校(米国)のウイルス学者Pei-Yong Shiは、「デルタ株の重要な特徴は感染力の高さです
COVID-19から回復した人はその後のワクチン接種で、感染経験のない人に比べて強力な免疫を獲得することが分かってきた。これは、パンデミックを巡る大きな謎の1つとなっている。 抗体がSARS-CoV-2粒子(橙色)に結合する様子(想像図)。COVID-19回復後にワクチンを接種した人では、SARS-CoV-2に対する非常に強力な免疫が認められる。 Credit: JUAN GAERTNER/SCIENCE PHOTO LIBRARY/Getty ロックフェラー大学(米国ニューヨーク)のウイルス学者Theodora HatziioannouとPaul Bieniaszは、2020年の秋ごろから、新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2;SARS-CoV-2)がヒトの細胞に感染する際に使用する「スパイクタンパク質」に手を加えて、感染を阻止するあらゆる抗体を回避できるような変異ウ
過去2000年の間、火山の噴火によって急激な気候変動が起こり、それが一因となって、当時の中国を統治していた王朝が崩壊するに至った可能性があることを報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。今回の知見は、大規模な火山噴火が不安定な地域や脆弱な地域に深刻な影響を与え得ることを示唆している。 産業革命以前の時代には、火山の噴火が主たる原因となって気候が突然変化して、農作物の生育期の気温が低下し、降水量が減少して、農業生産性が低下することが多かった。西暦907年の唐王朝の崩壊と西暦1644年の明王朝の崩壊は、干ばつ現象と寒冷化現象に結び付いていると以前は考えられていた。しかし、気候変動と社会変動の両方の記録が十分に年代決定されていないことが多いため、突発的かつ短期的な気候の変動が社会の崩壊に及ぼす影響を明らかにすることは難しい。 今回、Ch
トランスユーラシア語族(日本語、韓国語、ツングース語、モンゴル語、チュルク語からなる)は、約9000年前の中国に起源があり、その普及は農業によって促進された可能性があることを明らかにした論文が、Nature に掲載される。今回の研究は、東ユーラシア言語史における重要な時期について解明を進める上で役立つ。 トランスユーラシア語族は、東は日本、韓国、シベリアから西はトルコに至るユーラシア大陸全域に広範に分布しているが、この語族の起源と普及については、人口の分散、農業の拡大、言語の分散のそれぞれが議論を複雑化させ、激しい論争になっている。 今回、Martine Robbeetsたちは、3つの研究分野(歴史言語学、古代DNA研究、考古学)を結集して、トランスユーラシア語族の言語が約9000年前の中国北東部の遼河流域の初期のキビ農家まで辿れることを明らかにした。その後、農民たちが北東アジア全体に移動
ヒトは約1万2300年前にタバコを使用していたことを示唆する考古学的証拠について報告する論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。得られた知見から、タバコは、アメリカ大陸に到達した最初期のヒト集団の一部で使用されていたことが分かった。これは、従来考えられていたより9000年も早い。 タバコ(Nicotiana)はアメリカ大陸原産の酩酊性の植物であり、北米の多くの先住民集団の伝統に重要な役割を果たしてきた。タバコは世界的に使用されており、人間社会に広範な影響を及ぼしている。喫煙パイプから得られたこれまでの証拠から、タバコの最初期の使用者は、約3000年前の農耕導入以前の北米で暮らしていたと考えられていた。 今回、Daron Dukeたちは、ユタ州グレートソルトレーク砂漠にあるウィッシュボーン遺跡で狩猟採集民の居住地跡の遺物を発掘した。Dukeたちは、約1万2300年
Fortranからプレプリントアーカイブまで、プログラミングとプラットフォームの進歩は、生物学、気候科学、物理学を新たな高みへと導いた。 2019年、イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)のチームは、ブラックホールの実際の姿を初めて世界に見せてくれた。彼らが発表したリング状に輝く天体の画像は、従来の写真とは違い、計算によって得られたものだ。具体的には、米国、メキシコ、チリ、スペイン、南極点の電波望遠鏡が捉えたデータを数学的に変換することによって得られたのだ1。研究チームは、その知見を記載する論文とともに、ブラックホールの撮影に用いたプログラミングコードも公開した。科学コミュニティーが自分たちのやり方を確認し、それを足場にできるようにするためである。 このようなパターンは、ますます一般的になりつつある。天文学から動物学まで、現代のあらゆる偉大な科学的発見の背後にはコンピューターがある。
細胞が接触や圧力を感知する仕組みは数十年にわたって謎に包まれていたが、近年になって、そこに関与するタンパク質の解明が大きく進んだ。 一部の動物では、 羽根状のタンパク質が3個集まって Piezo1チャネルを形成しており、 細胞の触刺激の感知に役立っている。 Credit: DAVID S. GOODSELL/RCSB PDB その少女は懸命に、自分の腕や手を動かさずにいようとしたが、指はねじれるような動きをした。彼女が目を閉じると、状態はもっとひどくなった。彼女は、手足をじっと動かさずに保つ力がないのではなく、手足をコントロールできないだけのように見えた。 Carsten Bönnemannは、2013年にこの10代の少女を、カナダのカルガリーにある病院で調べたことを覚えている。彼は、国立神経疾患・脳卒中研究所(米国メリーランド州ベセスダ)の小児神経科医として、不可解な症例を検討・考察する
コンピューターでシミュレーションした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の構造。 Credit: JANET IWASA, UNIV. UTAH コンピューターでシミュレーションした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の構造。 Janet Iwasa, University of Utah このコロナウイルスは、豪奢な糖の衣をまとっている。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のトレードマークであるスパイクタンパク質の1つをコンピューター・シミュレーションで見たRommie Amaroは、目を見張った。ウイルスの表面から突き出すスパイクタンパク質には、糖鎖がびっしりと巻き付いていたのである。 カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国)の計算生物物理化学者であるAmaroは、「これだけの糖鎖で覆われていたら、ほとんど認識できません」と言う。 実際、外側のタンパ
SARS-CoV-2による神経学的症状は、複数のメカニズムによって起こると見られる。それを示唆する証拠が増えてきた。 SARS-CoV-2は、中枢神経系に豊富に存在しているアストロサイト(写真中央)に、選択的に感染することが分かった。この細胞は、ニューロンに栄養を供給するなど、脳で多くの働きを担っている。 Credit: JUAN GAERTNER/SCIENCE PHOTO LIBRARY/Getty 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が脳にダメージを与える仕組みが明らかになってきた。COVID-19を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の脳に対する攻撃は多面的である可能性が、最近報告された証拠で示唆されている。このウイルスは、特定の脳細胞を直接攻撃したり、脳組織への血流を減らしたり、脳細胞に害を及ぼし得る自己抗体の産生を引き起こしたりするよう
古代の岩礁の中に海綿動物のような構造体が特定され、海綿動物が早ければ8億9000万年前から海洋に生息していたと考えられることを報告する論文が、Nature に掲載される。この知見の妥当性が確認されれば、この化石は、これまで知られている中で最古の動物の体化石となり、その次に古い、議論の余地のない海綿動物の化石を約3億5000万年さかのぼることになる。 海綿動物は単純な動物で、現生海綿動物から得られた遺伝学的証拠から、海綿動物が新原生代初期(10億~5億4100万年前)に出現したことが示唆されている。しかし、この時代の海綿動物の体化石は見つかっていない。 今回、Elizabeth Turnerは、カナダ北西部の8億9000万年前の岩礁から採取された岩石試料を調べた。この岩礁は、炭酸カルシウムを析出する細菌類によって形成された。この岩石試料の中に、方解石の結晶を含み、それに囲まれた管状構造体の分
新型コロナウイルス感染者数の減少やワクチン接種率の上昇に伴い、米国などではマスクの着用義務が部分的に解除されつつある。この動きは早過ぎないのだろうか? 医療従事者をたたえつつマスク着用を呼び掛ける壁画。メキシコシティーにて撮影。 Credit: KOBI WOLF/BLOOMBERG/GETTY 米国ニューハンプシャー州の自然食品マーケット「ウルフボロ・フード・コープ(Wolfeboro Food Co-op)」の正面入口には今も、「マスクを着用してください」と書かれたポスターが張ってある。最近までそのすぐ下に、同店が連邦政府の方針に従っていることを説明するポスターも張ってあった。 店長のErin Perkinsが下のポスターを剥がしたのは2021年5月14日のことだった。前日に、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のワクチン接種が完了した人は基本的にマスクを着用する必要はない、と
現代宇宙論の欠点は、時間と空間がどこから生まれてきたかを説明できていないことだ。この難題を解決しないかぎり、物理学は完成しないと多くの研究者が考えている。 ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ・バンクーバー)の物理学者Mark Van Raamsdonkは、「ある朝目覚めて、自分がコンピューターゲームの中で生きていたことを悟ったと想像してみてください」と話し始めた。そしてSF映画のような状況を説明していったが、彼にとって、現実について考える方法論の1つが、このようなシナリオなのだ。もしそれが正しいとしたら、「私たちの周りにある全てのもの、すなわち、三次元の物理的世界の全体が、どこか別の場所にある二次元のチップ上に符号化された情報から生じた幻影であることになります」と彼は言う。それはまさにホログラムのようなもので、二次元平面に記録された情報から、3つの空間次元を持つ私たちの宇宙を完全に再現
換気が不十分だと、室内にウイルス粒子が集積して感染リスクが高まるが、「十分な換気」の基準や効果的な換気方法については、まだ明確な答えが得られていない。科学者たちは室内を安全にするために、さまざまな検討を行っている。 ドイツの学校の風景。換気のために窓を開けた教室で、コートを着て勉強する子どもたち。 Credit: INA FASSBENDER/AFP/GETTY クイーンズランド工科大学(オーストラリア・ブリスベン)のエーロゾル(エアロゾル)研究者であるLidia Morawskaは、外出時には靴ほどの大きさのしゃれた装置を持っていく。二酸化炭素(CO2)モニターである。この装置は、彼女が訪れるレストランやオフィスについて、厳しい現実を教えてくれる。屋外の二酸化炭素濃度は400ppmをわずかに上回る程度だが、室内での数値は全然違うのだ。 天井が高く広々としたレストランは、いかにも風通しが良
安価な迅速検査を大規模に実施するという戦略は SARS-CoV-2のパンデミックを抑え込むための切り札になるのか? 科学者たちがいまだに議論しているその理由を解説する。 フランスの学校で迅速抗原検査を用いた大規模スクリーニングを行う医療従事者たち。 Credit: KOBI WOLF/BLOOMBERG/GETTY 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染者数が急増していた英国で、2021年1月10日、このウイルスとの戦いの流れを大きく変え得る「ある戦略」が政府によって発表された。安価な迅速検査を英国全土で大規模に実施し、無症状者もその対象とするというものだ。こうした検査は、米国内のアウトブレイク(集団発生)の制圧に向けたジョー・バイデン大統領の計画においても重要な役割を担っている。 迅速検査には、鼻腔や咽喉のぬぐい液を紙片に染み込ませて試薬と混合すると30分以内
全力を挙げてワクチン接種を進めたとしても、COVID-19の制圧を可能にする理論上の閾値には手が届かないようだ。 イスラエルではこれまでに人口の約50%がCOVID-19のワクチン接種を済ませているが、集団免疫はまだ達成できていないようだ。 Credit: KOBI WOLF/BLOOMBERG/GETTY 世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種が軌道に乗ってきた今、「このパンデミック(世界的大流行)はいつまで続くのだろうか?」という疑問が湧いてくるのも当然だろう。これは簡単には見通せない問題だ。ただ、十分な割合の人々が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する免疫を獲得してしまえば感染の伝播はほぼ抑え込めるという、一時期よく言われていた「集団免疫」の達成については、実現する可能性が低いと考えられ始めている。 集団免疫はワクチン接種率が
一般社会では、性別が二元的に男か女かに分けられている。だが、生物学的な研究が進んだことで、性別は単純に二元化できるものではないことが分かってきた。 王立メルボルン病院(オーストラリア)の臨床遺伝学者Paul Jamesは、仕事柄、患者と非常にデリケートな問題を話し合うことには慣れている。しかし、2010年初めのある日、彼は頭を抱える出来事に遭遇した。特に性別に関して、何とも話しづらい気持ちにならざるを得なかった。 Jamesの診察室を訪れたのは46歳の妊婦で、お腹の赤ちゃんの染色体異常を羊水穿刺で検査した結果を聞きに来たのだ。赤ちゃんには問題がなかったが、補足の検査によって母親の方に意外な事実が判明した。彼女の体は、2個体に由来する細胞でできていたのだ。この2個体はおそらく、彼女の母親の子宮内で発生した双子の胚だったと思われる。ところが話はそれで終わらなかった。一方の細胞セットには、通常の
SARS-CoV-2が物体の表面に長時間残存し得ることは確かだが、表面を介した接触感染はCOVID-19の主要な伝播経路ではないことが示されている。ではなぜ、我々はいまだに徹底的な消毒行為を続けているのか。 2020年1月、中国石家荘市の街路で消毒剤を散布する作業員たち。 Credit: ZHAI YUJIA/CHINA NEWS SERVICE VIA GETTY 2020年3月、米国ニュージャージー州に暮らすEmanuel Goldmanは、完全防備で近くのスーパーマーケットへと向かった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例が全米各地で報告され始めたため、汚染された表面に直接触れないよう手袋をはめ、他の買い物客からのウイルス混じりの飛沫を吸い込まないようマスクを着用していたのだ。当時は、手袋もマスクも推奨されてはいなかった。 そして3月17日、COVID-19の原因ウイル
人間が物や考え、状況の改善を求められた時、その要素の一部を引くのではなく、新しい要素を足す傾向があることを報告する論文が、Nature に掲載される。その結果として、新たな要素を加えて問題を解決する方法が採用され、特定の要素を除去する方法は、たとえ優れた代替案であっても検討されない可能性がある。 物や考えの改善(例えば、技術開発や主張の強化)は、斬新な点を加えること、あるいは、既存の要素を減らして物や考えを合理化することで達成される。しかし、人間は、可能性のある全ての選択肢を探索することによる疲労に対処するために、検討する考えの数を絞り込む傾向があり、最適解が得られないことが多い。 今回、Gabrielle Adams、Benjamin Converseたちの研究チームは、1153人が参加した実験で、さまざまな課題(例えば、幾何学パズルを解くこと、レゴで作られた構造物の安定性を高めること、
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