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ブックマーク / crisscross.jp (4)

  • +++サッチャリズムとイギリス映画 PAGE-1 文:大場正明+++

    イギリス映画が世界の注目を集め、日でもコンスタントに新作が公開されている。そうした作品を観ながら、筆者がいつも思うのは、サッチャリズムが社会を大きく変えたことが、映画に興味深い主題を提供しているということだ。 サッチャリズムというと、日では規制緩和や行政改革などをめぐる議論のなかでその手として参照されることが多く、関心が限られている印象を受けるのだが、イギリス映画からは実に多様な視点を通してサッチャリズムが見えてくるのだ。 たとえば、この数年のイギリス映画ブームの火付け役となった『トレインスポッティング』(96年)。スコットランドのエディンバラを舞台に、ドラッグに溺れる労働者階級の若者たちの悲惨な青春を、 クールでスタイリッシュに描いたこの映画の冒頭には、主人公レントンのこんなモノローグが流れる。 「人生を選べ、キャリアを選べ、家族を、テレビを、洗濯機を、車を、CDプレイヤーを、電動

  • +++サバービアの理想的な主婦像と表層や秩序に囚われたコミュニティ――ウォーターズの『シリアル・ママ』とハミルトンの『A Map of the World』をめぐって 文:大場正明+++

    サバービアの理想的な主婦像と表層や秩序に囚われたコミュニティ ――ウォーターズの『シリアル・ママ』とハミルトンの『A Map of the World』をめぐって ジョン・ウォーターズ監督の新作『シリアル・ママ』(94)とアメリカの女性作家ジェーン・ハミルトンの話題の新作長編『A Map of the World』(94)。前者は、サバービアを舞台にした血みどろのブラック・コメディであり、後者は、都市近郊にぽつんと残る酪農場を家族の楽園にすることを夢見る一家の苦難を描く長編だ。 ふたつの作品は、主人公や設定など、特に繋がりがあるようには見えないが、ある部分に注目してみると興味深い接点が浮かび上がる。どちらもサバービアの理想的な主婦像といえるものが鍵を握り、コミュニティや家族をめぐる危うい世界が描き出されているのだ。 ■■建前と音をめぐり住民が自分で自分の首を絞める不条理■■ 『シリアル・

  • +++園子温インタビュー01 『紀子の食卓』 取材・文:大場正明+++

    園子温監督の新作『紀子の卓』のベースになっているのは、園監督が映画『自殺サークル』とともに発表した小説バージョン『自殺サークル 完全版』だ。この小説には独自のアイデアが盛り込まれ、映画とは異なる世界が切り開かれている。それはたとえば、孤独な客のニーズに合わせ、時間決めで家族を演じる〝レンタル家族〟というアイデアだ。 「映画の『自殺サークル』では、日人の内面というよりは、外から見た社会をワイドショーのようにセンセーショナルに描きました。その社会は不透明で、しかも映画は中途半端に終わる。それが当時の日に対する僕の印象だったんです。小説の方は、その前作のようなものですね。自分がどうやってこの映画を作っていったのか、その動機も含めて思い返してみたとき、レンタル家族やインターネットなど、昔から撮りたかった題材がたくさん出てきた。レンタル家族に興味を持っていたのは、それを描けば、家族の在り方、家

  • +++『13/ザメッティ』ゲラ・バブルアニ 文:大場正明+++

    映画における巧みな省略は、視覚的な効果を増幅させ、われわれの想像力をかき立てる。 『13/ザメッティ』のロシアン・ルーレットでは、一滴の血も流れないが、だからこそ、生と死の境界に立たされたプレイヤーたちの耐えがたい緊張とあっけない死の虚しさがいっそう際立つ。さらに、富める者たちが貧しい者たちの命を弄ぶ光景は、半端な説明がないだけにリアルであり、グローバリゼーションの縮図を見る思いがする。 しかし、筆者が最も興味を覚えたのは、モノクロの映像に反映されたバブルアニ監督の異様なほどに醒めた眼差しだ。この映画は、主人公セバスチャンを取り巻く状況の変化にともなって、リアリズムからノワール、カフカ的な悪夢へと変化していくように見える。だが、バブルアニは、生活苦と残酷なゲームをまったく同じ眼差しでとらえているのではないか。 そんなことを感じるようになるのは、ゲームのなかで、6番の男がセバスチャンに絡み出

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