今回は番外編と称して、全11回の連載をぎゅっと1回にまとめたダイジェスト版をお送りします。単なる要約ではなく、信頼できる第三者機関 (TTP) を軸にビットコイン論文の要点を整理するとともに、連載では紹介できなかった新たな「ヒント」も加えました。これから連載を読む方も、もう読んだよという方も、ぜひご覧ください。 ビットコイン論文と「ブロックチェーン」 ビットコイン論文を読むにあたり、まず第一に注意しなければならないことは、「ブロックチェーン (blockchain)」という言葉は論文に一切登場しない、ということです。 「ブロックチェーン」だけではありません。以下の言葉たちもまた、ブロックチェーンの解説記事にはよく出てきますが、論文には一切登場しません。 トラストレス (trustless)(連載の第2回を参照。以下同様に関連する回をカッコ内に示します。) 中央集権的/非中央集権的 (cen
ビットコインブロックチェーンにプログラマビリティ(プログラム可能性)をもたらすRootstockの新たな計画は、1年以内に実現される可能性がある。 このプロジェクトは、基盤となっているコードに大きな変更を加えることなく、ビットコイン上のレイヤー2ネットワーク開発を実現する可能性がある。 アルゼンチンのプログラマー、セルジオ・デミアン・ラーナー(Sergio Demian Lerner)氏は、オースティンで開催された開発者会議「Bitcoin++」で5月1日、このプロジェクトについて語った。 ビットコインブロックチェーンのレイヤー2プロトコルに取り組むRootstockは、プログラマビリティの改善を目的とした「BitVMX」プロジェクトの詳細を明らかにした。BitVMXは昨年、開発者のロビン・ラインズ(Robin Lines)氏が発表して話題を呼んだ「BitVM」をもとにしている。 ブエノス
Lerner氏はBitVMXについて、1日から4日まで米テキサスで開催されているビットコインの技術的なイベント「bitcoin++」でプレゼンを実施。同氏がプレゼンを行うことは以前から知られていた。 In one hour, approximately we'll be presenting BitVMX at btc++. Watch it here: https://t.co/Bf5H7oUH3G — Sergio Demian Lerner (sergio.lerner.rsk) (@SDLerner) May 1, 2024 BitVMXの開発が必要とされる理由は、ビットコインの設計にある。今回公開されたホワイトペーパーでは、ビットコインはセキュリティ上の理由から機能を制限して2008年にリリースされたと説明している。 そして、この時の設計によって悪意ある行動からネットワークを保護
これまでBitcoinのP2Pレイヤーの通信は暗号化されておらず平文でメッセージがやりとりされている。基本的にBitcoinの場合、ブロックやトランザクションなどのデータは誰もが共有する台帳データで機密性のあるデータではないから。 ただ、リレーされるデータ自体は公開データであるものの、平文の通信には以下のような課題もある: ノードのP2P接続を観察可能なプレーヤー(ISPなど)に対して、トランザクションソースやタイミングに関する情報を与えることになる。 平文なので途中でデータの改ざんリスクがあり、その検出も難しい。 接続時に固有のマジックバイトで通信が始まるのでBitcoinのP2P接続であることを簡単に識別することができる。 BIP-324では、これらに対処するためトランスポート層の通信を暗号化するv2トランスポートプロトコルを定義している。v2トランスポートプロトコルを利用すると、ネッ
英語の「Authentication」を整理する ここからは先ほどの分類で言うところの「ユーザ認証」としての「認証」、つまり英語の「Authentication」に該当する「認証」について、さらに整理を進めていきます。 先ほど、「ユーザ認証」を「システムを利用しようとしているユーザを、システムに登録済みのユーザかどうか識別し、ユーザが主張する身元を検証するプロセス」と説明しました。「ユーザの識別」と「身元の検証」はユーザ認証に欠かせませんが、実際は他にも「ユーザの有効/無効状態の確認」や「検証に成功した場合の身元の保証(アクセストークンの発行等)」などの処理も一般的にユーザ認証のプロセスには含まれます。 ここで冒頭の「○○認証」を振り返りましょう。パスワード認証、SMS認証、指紋認証、顔認証は実はここで言うユーザ認証には該当せず、ユーザ認証中の一処理である「身元の検証」を担っていることがお
先日、博士(情報学)になりました。学部と大学院をあわせた 9 年間で読んだ情報科学関連の教科書・専門書を思い出を振り返りつつここにまとめます。私は授業はあまり聞かずに独学するタイプだったので、ここに挙げた書籍を通読すれば、大学に通わなくてもおおよそ情報学博士ほどの知識は身につくものと思われます。ただし、特に大学院で重要となる論文を読み書きすることについては本稿には含めておりません。それらについては論文読みの日課についてや論文の書き方などを参考にしてください。 joisino.hatenablog.com 凡例:(半端)とは、数章だけ読んだ場合か、最後まで読んだものの理解が浅く、今となっては薄ぼんやりとしか覚えていないことを指します。☆は特におすすめなことを表します。 学部一年 寺田 文行『線形代数 増訂版』 黒田 成俊『微分積分』 河野 敬雄『確率概論』 東京大学教養学部統計学教室『統計学
Polygon LabとStarkWareがCircle STARKを発表 ポリゴンラボ(Polygon Lab)とスタークウェア(StarkWare)が、両社の協力により開発した新たな証明システム「サークルスターク(Circle STARK)」が完成したことを2月22日に発表した。 「サークルスターク」は、ブロックチェーンのスケーリングのために開発された効率的なSTARK証明システム。これによりロールアップがより効率化され、現行のSTARK証明より高速かつ安価にトランザクションを処理可能だ。 なお同システムは、Polygon2.0に採用される暗号アルゴリズム「Plonky3」に搭載される予定とのことだ。 ポリゴンラボは、ポリゴン(Polygon)ブロックチェーンの開発を主導する企業であり、スタークウェアはイーサリアム(Ethereum)のレイヤー2ブロックチェーンのスタークネット(Sta
シリコンバレーの巨大VC、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz、略称:a16z)は昨年、投資企業としての看板を、パートタイムのコンピューターサイエンスR&D企業へと切り替え、ディープテック研究に乗り出すと発表して話題となった。 同社は4月9日、zkVM(ゼロ知識仮想マシン)「Jolt」のオープンソースコード実装をリリースし、その最初の成果を発表した。 VCからR&D企業へ この新しいプロダクトは、a16zを正真正銘のR&D企業として位置づけるだけでなく、ブロックチェーン(そしてa16z自身のポートフォリオ企業の一部)の事業拡大に役立つ可能性がある。 一般的に「VM」と呼ばれる仮想マシンは、ブロックチェーンや他のプログラムの基盤として機能するソフトウェアベースのコンピュータ環境をいう。 Joltの「zk(ゼロ知識)」の部分は、a16zのVMを動かす暗号技術の一
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