『シャトゥーン ヒグマの森』で第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞した増田俊也氏と会った。当時、氏は中日スポーツの記者でもあったが、印象的だったのは、やけにガッチリとした岩のような体格の持ち主であり、柔道や格闘技に異様に精通していたことだった。酒席の場で格闘ロマンあふれる話を披露してくれたのを覚えている。「やっぱ、スポーツ紙の記者だけあって、よく知っているなあ」と感心した。それ以来、会う機会もなかったので、私にとって増田氏は「格闘技に無茶苦茶詳しいブンヤの同業者」という認識しかなかった。 彼が2012年に『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社 大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞した)を発表したときはひたすらたまげた。木村政彦という稀代の柔道家への敬慕の念と情熱、圧倒的な情報収集力、執筆に18年もの月日を費やしたという恐るべき執念に、激しい嫉