吉野直行 慶應義塾大学経済学部名誉教授、政策研究大学院大学客員教授 宮本弘曉 東京都立大学経済経営学部教授、高知工科大学客員教授 要約 コロナ禍により、大打撃を受けている業種や個人への補償は必要である。しかし、それを賄うために財政赤字が増大しており、今後、財政の持続性に関する議論が大きくなると予想される。これまで財政の安定性を議論する際には、利子率と経済成長率を比較するドーマー条件が使われてきた。しかしながら、ドーマー条件は国債の供給サイドのみに注目して導出されたものであり、国債需要が考慮されていない。本稿では、国債需要を考慮したドーマー条件に代わる新しい財政安定性の条件を導出する。それは、国債残高と国債需要の利子弾力性を比較するという条件である。アメリカ以外の国々は、国債需要をいつも念頭に置いて、「国債残高」と「国債需要の利子弾力性」を比較しなければならない。アメリカは基軸通貨ドルの国債