第三章のある部分で、著者は「神は欺かない」と論じるデカルトの考えから帰結することとして、三つのことをあげている。 第一に、神の観点からは、「過つ能力」なるものは存在しないことになる。(中略)デカルトは戦争において過つという活動を為したわけではないのである。例えば人間を殺すことは人間にとっては罪や悪を為すことであるが、神にとっては、人間を分割する活動や人間に物体を挿入する活動である。よって、過つ能力、罪や悪を犯す能力は存在しない。第二に、神の観点からは、欠陥・障害・怪物なども存在しないことになる。(中略)ある個体が種の本性に照らして怪物と評価されることがある。しかし神は、種の本性を理念として、個体を存在させているわけではないし、そもそも種の本性なるものは人間によって作為された観念にすぎない。よって欠陥や障害はいかなる意味においても過ちではないし、いかに異常に見える個体についても、神はそれを肯