菅義偉首相は日本学術会議の新会員候補6人を任命拒否した問題で、「多様性が大事だということを念頭に、私が任命権者として判断を行った」と繰り返す。しかし、インタビューなどで数多くの与野党政治家と接してきた御厨貴・東京大名誉教授(69)には、学術会議を巡る問題は「余裕とゆとり」「多様性」を失った最近の自民党政権を象徴しているように見えるという。1990年代の政治改革から始まった政治主導やスピード重視の改革が、第2次安倍政権、そして菅政権へと継承されている。第2次安倍政権で天皇退位の有識者会議座長代理を務め、菅氏や杉田和博官房副長官をよく知る政治学者は、行き過ぎた改革がもたらす政治状況を危惧する。【聞き手・立野将弘】 任命権行使にこだわる菅氏 日本学術会議の歴史は古く、49年に発足した。科学者が戦争へ協力した反省から、政府とは独立した一定の発言権を持たせた学者集団を作ろうと、初期の会員は学者による