発信箱:特別な被害者=磯崎由美(生活報道部) 全国で初めて性犯罪を審理した青森地裁の裁判員裁判を、小林美佳さん(33)と傍聴した。ほとんどの人が声を上げられない中、小林さんは被害を実名で公表し、性被害に遭うということがどんなことかを伝えてきた。 別室にいる被害女性Aさんがモニターを通して意見陳述を始めた。涙で声が震える。「裁判員裁判だからと注目されて、すごくつらい。それでも法廷に来たのは、この苦しみをどうしても伝えたかったからです」。小林さんも自分の事件の記憶がよみがえり、声を殺して泣いていた。私は筆談で「外に出ますか」と伝えた。彼女は首を小さく横に振り、こう書いた。「Aさんが頑張っているんです」 法廷で性暴力の詳細を明らかにした検察側を「そこまで言う必要があるのか」と疑問視する声もあった。過剰と思える表現があったのは確かだ。でも小林さんは悲しそうに言った。「そこまで言う必要がない痛々しい