北陸新幹線の開通以降、観光地としても注目を集める富山県に、2017年、新しい美術館がオープンする。長らく愛されてきた富山県立近代美術館を改称し「富山県美術館」として生まれ変わるのだ。ロケーションも大きく変わる。富山県民・市民の憩いの場であり、世界一美しいスターバックスがあることでも有名な富岩運河環水公園の敷地内に、屋上も含めて全四層のフロアを擁する建物が現れる。 その設計を担当したのが、内藤廣である。海の博物館(三重県)、牧野富太郎記念館(高知県)など数多くの文化施設を手がけ、東京大学の教授、副学長を歴任(2001~2011年)した内藤は、表層的な造形よりも構造を重視する建築家として知られ、土地ごとの特長、素材の個性に寄り添う人物である。そんな彼に、富山県美術館にかける想いを訊ねてみた。その問いの答えからは、アートと社会の関係が見えてくるかもしれない。 富山県美術館は、技術的には最高難度の
撮影:澤山大輔(以下すべて同じ) 「圧倒的」「壮観」「臨場感」「観るものを魅了する」「理想の」…… 今年2月14日に名古屋グランパスとの試合でこけら落としされる、市立吹田サッカースタジアム。その内部を取材した人間として感想を述べるなら、このような言葉ばかりになる。まだ観客も入っていなければ、当然ながら試合も行なわれていない。いわば“主役”がまだ不在、メインイベントはこれからお目見えするはずのスタジアムにこれほど感嘆を覚えた経験は、少なくとも国内のスタジアムでは記憶にない。 あらゆる観点から、サッカーにおける試合の見やすさが追求されたスタジアム。客席の角度、タッチラインから客席最前列までわずか7メートルという距離感・臨場感、「スクラムを組む姿」をイメージされた屋根がもたらす凝集性、ピッチの下に設けられた通風口、階段を登ってもぎりを超えるとすぐ目の前がピッチという設計……まだこけら落とし前だと
ドイツで始めた古民家の再生活動 普及に地元から情報発信していく〜建築デザイナー カール・ベンクスさん(2) (伝農 浩子=フリーライター) (前回はこちら) 新潟県の山村、松代(まつだい)を最高の場所と絶賛し、定住しているドイツ人建築デザイナーのカール・ベンクスさん。不便とも思えるこの場所をベースとして、古民家再生の活動をしている。日本人が見放した古民家に価値を見出したのは、ベンクスさん、そしてドイツに住むドイツ人の方が先だったようだ。人口が増える都市部では建て替えのため、また、都市へと人口が流出する地方では打ち捨てられたため、不要となったいくつもの民家を見かねてのことだった。古民家再生の作品や活動で、それぞれ賞も受賞している。 カール・ベンクスさん(Karl Bengs) (会社ホームページはこちら) 冷戦に翻弄されながらつのらせた日本へのあこがれ 最新の仕事まで網羅され
8月10日からスタートする『あいちトリエンナーレ2013』は、「揺れる大地―われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」をテーマに掲げ、東日本大震災以降の日本や都市のあり方を示そうとしている。それゆえ、ここに登場するのはいわゆる現代美術のアーティストに限らない。都市設計やインフラを考えるうえで重要な役割を果たす建築家、そしてその反映を身体によって表現する演劇やダンスなどのパフォーミングアーティストたちが数多く名を連ねている。 トリエンナーレ開催直前に行われた今回の取材では、思想家・東浩紀が提唱する「福島第一原発観光地化計画」にも参加し注目を集める建築家・藤村龍至と、今まさに愛知で作品制作中の劇団「ままごと」主宰・演出家の柴幸男をSkypeでつなぎ、対談を行なった。モニター越しの初対面となる二人の対話からは、建築家と劇作家の意外な共通点、そして震災以降の状況に真摯に向かい合おうと
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