20世紀の幽霊たち [著]ジョー・ヒル[掲載]2008年9月21日[評者]瀬名秀明(作家、東北大学機械系特任教授)■巨匠の父を超える短編ホラーの傑作 いきなり冒頭の「謝辞」欄に組み込まれていた掌編に心奪われた。文学を目指しつつ亡くなった父のタイプライターが夜ごと地下室で音を立て始める。遺族が紙を挟み込むと、そこに幽霊や超自然の物語が次々と紡ぎ出されてゆく。それは父が生前に書いたものよりずっと生き生きしているのだ――不気味だが懐かしく、心地よく、豊かに訴えかける情景の見事さ。このぞくぞくする前振りを読み終えて次ページからの本編に期待しない読者はいないだろう。 本書は05年に英国の小出版社から刊行されるや絶賛を浴び、主要なホラー文学賞を総なめにした驚異の新人のデビュー短編集だ。著者はホラーの巨匠スティーヴン・キングの実の息子である。だが短編に関してはすでに父を超えている。ホラーのアンソロジスト