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真山仁「チップス/ハゲタカ6」 第1章 唯我独尊(1)
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真山仁「チップス/ハゲタカ6」 第1章 唯我独尊(1)
後部座席のパワーウインドーを下ろした鷲津は、道路の向こう側の薄汚れた五階建ての建物を見つめた。 世... 後部座席のパワーウインドーを下ろした鷲津は、道路の向こう側の薄汚れた五階建ての建物を見つめた。 世界最強──と言われるファウンドリ企業、美麗島積体電路股份有限公司(FSC)の本社ビルだ。 美麗島とは、台湾の別称で、語源は、ポルトガル語だ。大航海時代に、台湾を訪れたポルトガル人が、島の美しさに感動。「美しい」という意味のフォルモサと呼んだことに端を発する。 しかし、本社ビルは、とても「美麗」とは言いがたい。 「創業者で、現在も筆頭株主であるジェシー・チェンが、創業時の精神を忘れないために、本社ビルは建て替えないと宣言しました。そのため、あんなオンボロビルなんだそうです」 鷲津の隣にいるアンソニー・ケネディが解説した。 門に立つ警備員と目があったので鷲津は、車を出すように命じた。 わずかに開けた窓から、暖かい風が入ってくる。1月でも、昼間の平均気温は、15℃を切らない。晴天の今日は、20℃を超