『法華義疏』については、奈良国立博物館、ついで東京国立博物館で開催された「聖徳太子と法隆寺」特別展(こちら)で一部が展示されていました。九州国立博物館開催の「皇室の名宝ー 皇室と九州をむすぶ美ー 」でも展示された由。 聖徳太子の真筆とされているのですが、このブログでは、2月に「『法華義疏』の画像データベースによると重要な訂正部分は別人の筆跡:飯島広子氏の博士論文」(こちら)という記事を掲載しました。題名どおりの内容であって、20年以上前の博士論文ですが、刊行されておらず、学界で注目されていないため、敢えてとりあげた次第です。 その記事では、飯島氏の研究を高く評価しつつ、先行論文であって、しかも44頁もある力作、 中島壌治「「法華義疏」筆者試考」 (『国学院大学紀要』第20号、1982年3月) を参照していないことを問題点としてあげました。そして、中島氏の論文を近く紹介すると書いてしめくくっ
12月21 児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』(ちくま新書) カテゴリ:社会8点 相模原障害者施設殺傷事件、京都ALS嘱託殺人事件、そして映画『PLAN 75』など、日本でもたびたび安楽死が話題になることがあります。 安楽死については当然ながら賛成派と反対派がいますが、賛成派の1つの論拠としてあるのは「海外ではすでに行われている」ということでしょう。 著者は以前からこの安楽死問題について情報を発信してきた人物ですが、著者が情報発信を始めた2007年頃において、安楽死が合法化されていたのは、米オレゴン州、ベルギー、オランダの3か所、それとスイスが自殺幇助を認めていました。 それが、ルクセンブルク、コロンビア、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア(一部を除く)、スペイン、ポルトガルに広がり、米国でもさまざまな州に広がっています。 では、そういった国で実際に何が起こっているのか?
古都飛鳥保存財団では、創設40周年を記念して「飛鳥学冠位叙任試験」を始め、これまで10回続いてきた由(こちら)。その問題を作成してきた研究者たちが、飛鳥に関する最新の研究成果をまとめた本が出てます。 今尾文昭編・飛鳥学冠位叙任試験問題作成委員会『飛鳥への招待』 (中央公論新社、2021年) です。著者は、橿原考古学研究所調査課長を務めた編者の今尾文昭氏ほか、考古学系の人が多いですが、古代史・『万葉集』・民俗学などの研究者も含まれています。 前半は、一つの項目を3頁程度で写真入りでわかりやすく説明した辞典のようなもので、後半に相原嘉之・石橋茂登・井上さやか・岡林孝作・今尾文昭氏による「座談会 古都飛鳥の百年 これからの飛鳥」が収録されています。 聖徳太子関連の項目を見ると、「明らかになってきた聖徳太子の実像」(西本昌弘)では、聖徳太子架空説や『勝鬘経義疏』遣隋使将来説などに触れた後、『日本書
杉田敦【法政大学法学部教授】 悪人がたまに良いことをすると「本当は悪い人ではなかったんだ」と見直し、逆に善人が間違いを犯すと「化けの皮がはがれた」と叩くのが世の常である。前者より後者の方が「総合成績」では優れているはずだが、世間はそうは見ない。こうした、いわば倫理的な非対称性の存在が、以前から気になっている。 人々に説教を垂れる「文化人」や、政府に批判的なメディアは、無限に高い倫理性を求められ、少し言い過ぎたりすれば徹底的に攻撃される。自らの身に一点の曇りもない者だけが、他人に批判がましいことを言える、というのがこの社会の「倫理観」のようだ。政府批判を役割とする野党も、批判の前に自らを問えと言われてしまう。これでは、権力批判など誰もできなくなる。 たしかに、誰しも説教されるのは嫌いだし、何とか食い扶持を稼ごうとしている時に「きれいごと」を言われたくない、という気持ちも理解できる。しかし、説
共同編集のきっかけ——飯山由貴《In-Mates》をめぐって 小田原: 山本さんに日本美術史と帝国主義についての教科書ともなるような論集を一緒につくりませんかとご相談をしたのは、2021年7月のことです。きっかけのひとつは、国際交流基金が主催するオンライン展覧会「距離をめぐる11の物語:日本の現代美術」(会期:2021年3月30日~5月5日)に際して制作された飯山由貴さんの映像作品《In-Mates》が、基金側から一方的に展示中止の判断が下されたことでした(「国際交流基金が中止判断/在日精神病患者に関する映像作品」朝鮮新報サイト、2021年9月21日、https://chosonsinbo.com/jp/2021/09/18-49top-2/)。 飯山由貴《In-Mates オンライン公開版》 2021年 映像 26分47秒 これについては、抗議の意味合いも兼ねて、7月に東京大学でシンポジ
吉村絵美留『修復家だけが知る名画の真実』を読んだ。 修復家だけが知る名画の真実 (プレイブックス・インテリジェンス) 作者:吉村 絵美留 発売日: 2004/01/01 メディア: 新書 内容は紹介文の通り、 歴史的絵画の発見、2つあるサインの謎…修復の過程で出会った名画の秘密、偉大なる芸術家たちの素顔とは。 という内容。 絵画の修復に興味のある人は、読んで楽しめるはずである。 以下、特に面白かったところだけ。 岡本太郎が使用したカシューと胡粉 まるで黒漆のように異様に艶があるのです。(略)調べてみると、人工漆のカシュウであることが判明しました。 (53頁) 岡本太郎の使う黒色についての話である。*1 なお、著者によると、ミロは艶消しの黒を使ったらしい(96頁)。 胡粉が使われているところは、艶がない分、白の強烈な感じがよく表れていました。 (引用者中略) 普通の絵の具だと、下にある色をあ
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