『大江健三郎 柄谷行人全対話』 1994年から96年にかけて行われた大江健三郎と柄谷行人の対談が収録されている。 1995年に行われた「世界と日本と日本人」の中で、大江はこう言っている。 「マルコポーロ」事件というのがありましたね。あれはひとつの典型です。「マルコポーロ」という雑誌を全部英訳してアメリカに伝えようとしている、そういう基本態度があれば、ああいう記事は載らないでしょう。しかもこの国で栄えているけれど外国に通じない論文は、反ユダヤ主義者の論文だけじゃないですよ。 たとえば西尾幹二の論文を見ますと、あなたはドイツ語学者なんだから、一度でもいい、ドイツに行ってこの趣旨の講演をドイツ語でしてみよと僕はいいたいんです。あるいは渡部昇一に、あなたは英文学者なんだから、イギリスに行って、あるいはアメリカに行って、あなたが今書いているこの論文をそのまま英語に訳して、みんなの前で講演してみろと僕