「大学は共学だからこわい」と学生が言う。男子学生である。女子学生が「男がいる環境になじめない」と言うのは以前からよく耳にした。それを男子学生も口にするようになったのである。大学の教師を36年もやっているとわかることがある。1年生の基礎演習という20人弱のクラスで行う導入教育では、関わり方の密度が高いからだろう、その学生が男子校の出身か女子校の出身かがなんとなくわかることがあるのだ。どこという決め手があるわけではない。自己表現の雰囲気がちがうのである。自己表現の宛先と自分を眼差(まなざ)す差出人がちがうからだろう。たぶん、見ることよりも、より多く見られることのジェンダーとセクシュアリティーの問題だと思う。つまりは身体の問題だから、雰囲気に表れるのだろう。 かつて身体論がはやった頃には、自己と他者の境界がテーマだった。特に見られる身体においては両者が交じり合うという問題提起だった。男子校や女子