ホンダがマクラーレンと組んで戦う最後のレースとなった2017年アブダビGP。チェッカーフラッグが振られた瞬間、思わず涙を流した男がいた。ホンダのチーフエンジニアを務める中村聡だ。 込み上げてきたのには、理由があった。アブダビは'15年にホンダがF1に復帰するにあたって、マクラーレンと組んで初めてテストを行なった場所だった。 エンジンを始動することさえままならない、最悪のスタートとなった'14年のアブダビ・テスト。そんなホンダに、マクラーレンは温かい手を差し伸べ続けた。開幕までホンダの負担を軽くしようと、エアボックスやバッテリーパックなどの製作をサポートしたのである。 「もし、彼らのサポートがなかったら、われわれはレースできていなかったかもしれません」(中村) 2年目までは「間違っていない」と励まされた。 その後もホンダの艱難辛苦は続いた。相次ぐトラブルに、年間使用基数を大幅に超えるパワーユ