――憲法制定当初から、日本国民は九条を支持していたと広く考えられています。しかしながら、これは根拠のない「神話」だとされていますね。 「憲法制定当初から九条は圧倒的多数の国民から支持されていた」という見方は、高度成長期以降、今日に至るまで、多くの批評家、研究者の著作に現れています。多くの場合、まったく無根拠にそう書かれているのではなく、当時の世論調査の結果を参照し、「客観的に言えること」として、そのように主張されています。 ――世論調査の数字をもとにしているのですから、客観的ではないのですか? ええ。世論調査の結果というのは、数値で表されるがゆえに、その引用によって議論に「客観性の外観」を与えます。具体的には、1946年5月に「毎日新聞」が行った調査の結果が、これまで何度となく参照されています。この調査では、「戦争放棄の条項を必要とするか」という質問がなされ、結果はたしかに賛成論が圧倒的多