■宗教ナショナリズム運動の危険性 昨年、ほとんどの憲法学者が「違憲である」と断じた安保法制が強行採決で成立し、日本の立憲主義は危機に陥った。憲法遵守の義務を負っている国会議員が数の論理で憲法を歪めるのだから、実際、日本はかなり危険な状況に突入しているのだろう。しかし、その後も安倍政権は国民から高い支持を受けている。 この奇妙で不気味な現状を理解するには、中島岳志と島薗進の対話集『愛国と信仰の構造』が役に立つ。「全体主義はよみがえるのか」という副題がついたこの本は、〈明治維新からの75年〉と〈敗戦からの75年〉をそれぞれ25年ずつ三期に分けた上で、まずは、かつての日本が全体主義になだれこんでいった原因を検証する。 気鋭の政治学者と宗教学の泰斗は、一君万民、教育勅語、親鸞主義、祖国礼拝、日蓮主義、八紘一宇、煩悶青年などの内実と関連性について討議し、〈明治維新以後の日本の政治体制の何が弱さであり