ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (26)

  • SFが読みたい2024年版で海外篇一位を獲得した、悪に堕ちたロボットの人生を描く長篇SF──『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』 - 基本読書

    チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク (竹書房文庫) 作者:ジョン・スラデック竹書房Amazonこの『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』*1は奇才ジョン・スラデックによって40年前(1983年)に刊行されたSF長篇だ。邦では昨年邦訳が刊行されたが、あれよあれよというまに評価されて、2023年を総括するSFガイドブック『SFが読みたい!2024年版』の海外SF篇で見事一位の座に輝いた。 一位に輝いたぐらいなので作はおもしろいが、なぜ40年前の作品が一位になったのか。理由が僕にわかるはずもないが、SFが読みたいは業界関係者による投票によってランキングが決定する仕組みなので、まず通に評価されたこと。また、『プロジェクト・ヘイル

    SFが読みたい2024年版で海外篇一位を獲得した、悪に堕ちたロボットの人生を描く長篇SF──『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2024/02/11
    出てたんだ。全く知らなかった。
  • 何千時間も使って未解決事件を解決しようと奮闘する人々──『未解決殺人クラブ~市民探偵たちの執念と正義の実録集』 - 基本読書

    未解決殺人クラブ~市民探偵たちの執念と正義の実録集 作者:ニコル・ストウ大和書房Amazon市民探偵というと日でイメージとして上がるのは毛利小五郎(with/江戸川コナン)か金田一あたりだろうが、実は世の中には多種多様な市民探偵が存在する。 事件現場にかけつけたり、たまたま居合わせたりして事件を解決するのではなく、市民探偵の多くはインターネットで公開された情報を集め、フォーラムで議論をしながら事件解決への糸口を探す。やっていることは地味な行為の積み重ねだが、解決にあたって重要な役割を果たすことも多い。確かに彼らも市民探偵なのだ。 その執念の凄まじさは、おそらく多くの読者の想像を超えたものだ。たとえばテネシー州の元工場労働者トッド・マシューズは、両目を失い腐敗した状態で大きなバッグに入れて放置されていたことから「テント・ガール」と呼ばれていた身元不明の女性を、11年にもわたって調査して、最

    何千時間も使って未解決事件を解決しようと奮闘する人々──『未解決殺人クラブ~市民探偵たちの執念と正義の実録集』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2024/01/12
  • 『皆勤の徒』の著者最新作にして、今年いちばんおもしろかった傑作SF長篇──『奏で手のヌフレツン』 - 基本読書

    奏で手のヌフレツン 作者:酉島 伝法河出書房新社Amazon酉島伝法はデビュー作の連作短篇集『皆勤の徒』と第一長篇『宿借りの星』が共に日SF大賞を獲得と、寡作ながらもその作品は常に高い評価を受けてきた。 そんな酉島伝法による最新作『奏で手のヌフレツン』は2014年にSFアンソロジー『NOVA』に載った同名短篇の長篇版で、これが著者の現時点での最高傑作といっても過言ではないほど素晴らしい出来だ。酉島伝法の作風は造語を駆使しながら人ならざるものたちの世界、視点、文化を細かく描き出していく、一言でいえば「唯一無二」という他ないものだ。作でもその特徴は引き継ぎながらも、ストーリー、世界観はともに既作よりも壮大さを増し、読みながら「今までこんな感覚、文章を読んで味わったことがないな……」と思うほど特殊な感覚と興奮が呼び起こされた。 たとえば下記は作の一ページ目の文章で、奏で手と呼ばれる人たちが

    『皆勤の徒』の著者最新作にして、今年いちばんおもしろかった傑作SF長篇──『奏で手のヌフレツン』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2023/12/13
  • 科学とSFの相互発展の歴史を、小説、映画、ドラマなど多方面から描き出す──『サイエンス・フィクション大全 映画、文学、芸術で描かれたSFの世界』 - 基本読書

    サイエンス・フィクション大全 映画、文学、芸術で描かれたSFの世界 グラフィック社AmazonSF、サイエンス・フィクションとはサイエンスとついているように基的には科学をテーマ・取り扱ったフィクションのことを指す(科学を扱わなくてもSFに分類されるが、今回は細かいことはどうでもいい)が、科学を扱う以上その内容は現実の科学の発展に影響を受ける。たとえば、火星や月が明確に観測される以前は人々の空走の中ではそこに生命が満ちているフィクションがよく描かれていたが、鮮明な画像、観測結果が出回るにつれて火星や月に生物がいる物語は描かれなくなっていった。 一方で、SFは影響を受けるばかりではなく、現実の科学にも影響を与えてきた。多くのロボット学者は昔はアトム、今はドラえもんに影響を受けてその道を志し、琥珀の中の蚊が吸った血から恐竜の復元が試みられた物語『ジュラシック・パーク』の大ヒット後は、多くの学者

    科学とSFの相互発展の歴史を、小説、映画、ドラマなど多方面から描き出す──『サイエンス・フィクション大全 映画、文学、芸術で描かれたSFの世界』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2023/10/23
  • 『元年春之祭』の陸秋槎による、今年ベスト級のSF短篇集──『ガーンズバック変換』 - 基本読書

    ガーンズバック変換 作者:陸 秋槎早川書房Amazon『ガーンズバック変換』は『元年春之祭』や『雪が白いとき、かつそのときに限り』、『文学少女対数学少女』といった、ミステリ系の著作で知られる陸秋槎による初のSF短篇集である。陸秋槎は北京出身だが、その後日の石川県在住となった作家。日文化への造形が深く、それは作収録の短篇を読めばすぐにわかる。 というか、短篇だけ読ませたら日の作家としか思えないだろう。香川県を舞台にした表題作「ガーンズバック変換」からして、香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」に着想元がある作品なのだから。陸秋槎のSF短篇は『異常論文』アンソロジーや『アステリズムに花束を』に掲載されていたから、すでに抜群におもしろいことはわかっていた。だが、今回邦初訳の二作と書き下ろし二作も含めて全体を読み直してみたら、期待をはるかに超えておもしろい! まだ2023年もはじまった

    『元年春之祭』の陸秋槎による、今年ベスト級のSF短篇集──『ガーンズバック変換』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2023/02/26
  • 二人組の作家エラリー・クイーンがどのように小説を書いてきたのか、その愛憎入り交じった過程について──『エラリー・クイーン 創作の秘密』 - 基本読書

    エラリー・クイーン 創作の秘密: 往復書簡1947-1950年 作者:ジョゼフ・グッドリッチ国書刊行会Amazonこの『エラリー・クイーン 創作の秘密』は、二人組の小説家であった伝説的ミステリ作家エラリー・クイーンの執筆が具体的にどのように成し遂げられてきたのかを、主に1947年から1950年の間の往復書簡から浮かび上がらせた一冊である。国書刊行会からは以前、別著者ではあるが評伝『エラリー・クイーン 推理の芸術』が出ているが、今回の『創作の秘密』とは装丁も同趣向であり、実質姉妹編のような形になる。 僕にとってクイーンはミステリ作家の中でも最上位に好きな方の作家なので、発売日に買って期待して読み始めたのだけど、めちゃくちゃおもしろくて一気に最後まで読み切ってしまった。二人が物語を創り上げる過程は平穏なものではなく、お互いを受け入れられず、強く非難し、説教し、脅し、とまあよくこれでまだ縁を切ら

    二人組の作家エラリー・クイーンがどのように小説を書いてきたのか、その愛憎入り交じった過程について──『エラリー・クイーン 創作の秘密』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2021/06/11
    これはちょっと読みたいな。
  • 忘れ去られた女性たちの活躍を蘇らせる一冊──『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』 - 基本読書

    アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語 作者:ナサリア・ホルト発売日: 2021/02/26メディア: 単行(ソフトカバー) この『アニメーションの女王たち』は、ディズニー・アニメーションの中で、アートに脚にと活躍してきたにも関わらず、エンドクレジットにも表記されず、伝記などにも存在がほとんど残されていない、女性アーティストを焦点に当てた一冊である。 その立ち上げの時期、最初の女性の参画からはじまって、『白雪姫』から『アナと雪の女王』までを通して、ディズニーと女性アーティストの関係性は一直線に成長してきたわけではない。差別や平等の観点からいうと、今はディズニーが立ち上げの20世紀初頭からするとよくなったといえるが、その歴史の中には多くの差別があり、一度女性の活躍が増えたと思っても、第二次世界大戦やウォルトの死による女性参画の後退など、大きな波があった

    忘れ去られた女性たちの活躍を蘇らせる一冊──『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2021/03/06
  • 週刊文春はなぜスクープを連発することができるのか──『2016年の週刊文春』 - 基本読書

    2016年の週刊文春 作者:柳澤 健発売日: 2020/12/15メディア: Kindle版スクープを連発する日一の週刊誌「週刊文春」と、その中でも二大編集長である花田紀凱と新谷学を中心に取り上げた文藝春秋闘争記である。僕は特集が気になった月刊文藝春秋を読むぐらいで、週刊文春は手にとった記憶がない。僕が普段読むようなではないが、年末年始で僕の好きな翻訳系科学ノンフィクションの刊行も少なく、評判もいいので読んでみたら、これが世評通りに大変おもしろい。 なぜ2016年なのか。 書が刊行されたのは昨年の12月のことである。であればなぜ、2020年ではなく2016年の週刊文春なのか、というのが最初に気になったところだが、読んでいて思い出したが、2016年は紙の週刊文春が光り輝いていた最後の時代なのであった。2016年早々に甘利明経済再生相の金の疑惑を報じ、ベッキー&川谷の不倫を報じ、清原和博

    週刊文春はなぜスクープを連発することができるのか──『2016年の週刊文春』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2021/01/15
  • 10年代SF傑作選から『サハリン島』まで、多数の傑作SFが刊行されたてんこ盛りな2020年を振り返る - 基本読書

    アンソロジーが記憶に残った年 今年を振り返って記憶に残ったのは、やはり10年という区切りの年だったこともあってか優れたアンソロジーが多数刊行されたこと。たとえば、『なめらかな世界と、その敵』の伴名練が編者に入った『2010年代SF傑作選1・2』(大森望・伴名練編)は野崎まどの笑撃作「第五の地平」から小川一水による数学SFの傑作「アリスマ王の愛した魔物」、ベテランから新鋭まで幅広く取り揃えたアンソロジーだ。 2010年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF) 作者:ピーター トライアス,郝 景芳,アナリー ニューイッツ,ピーター ワッツ,サム・J ミラー,チャールズ ユウ,ケン リュウ,陳 楸帆,チャイナ ミエヴィル,カリン ティドベック,テッド チャン発売日: 2020/12/17メディア: 文庫今年は海外編も前回の年代別傑作選から十八年ぶりに『2000年代海外SF傑作選』、『2010年代海

    10年代SF傑作選から『サハリン島』まで、多数の傑作SFが刊行されたてんこ盛りな2020年を振り返る - 基本読書
    okemos
    okemos 2021/01/10
  • この10年で最高のロシアSFと言われる傑作終末SF──『サハリン島』 - 基本読書

    サハリン島 作者:エドゥアルド・ヴェルキン発売日: 2020/12/22メディア: 単行このエドゥアルド・ヴェルキン『サハリン島』は、ロシアのメディアで、この10年で最高のロシアSFと評されているSF長篇である。「この10年で最高」というのは、気軽に使うにはリスキィな褒め言葉だ。何しろ、これでつまらなかったら他のこの期間に発表されたロシアSFはいったいなんなんだ、という話になってしまう。 なので、話半分というか……、勢い余って言い過ぎちゃった人がどっかのメディアにいたのかな? ぐらいの心持ちで読み始めてみたのだけれども、いやはや……。これはたしかに、この10年で最高のロシアSFかどうかはわからないがめちゃくちゃおもしろい! 表面的な題材だけ抜き出してみれば、ゾンビ的な感染症に第三次世界大戦による終末世界化、変容してしまった世界を二人の男女が旅をするという、ありきたりなポストアポカリプス物

    この10年で最高のロシアSFと言われる傑作終末SF──『サハリン島』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2020/12/31
  • 暗殺作戦、苦難のすべてがこの一冊にまとまった、圧倒的な密度を誇る大著──『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』 - 基本読書

    イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史(上) 作者:ロネン バーグマン発売日: 2020/06/04メディア: Kindle版イスラエルの諜報機関──モサド、シン・ベト、アマンの3機関はその能力の高さから世界中に恐れられている。何より暗殺の作戦数が豊富で、一説によるとイスラエルがこれまで国として行ってきた暗殺作戦は2700件にも及ぶという。イスラエルが国として成立したのが70年前の1948年であることを考えると、驚異的な数といえる。 というわけでこの『イスラエル諜報機関』は、そんなイスラエルの諜報機関がこれまで行ってきた暗殺作戦を、その最初期から現代に至るまで丁寧に追った一冊になる。イスラエルの諜報機関の情報って公開されてんの?? と疑問に思ったが、やはりまったく公開されていないみたいで、国防省に調査協力を求めても無意味。イスラエルの各情報機関に、法律の規定に基づいて過去の文書の資料開示を要求す

    暗殺作戦、苦難のすべてがこの一冊にまとまった、圧倒的な密度を誇る大著──『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2020/06/17
  • テクノスリラーの傑作『アンドロメダ病原体』の正統続篇にして、ド直球のSFとして拡張してみせた快作──『アンドロメダ病原体-変異-』 - 基本読書

    アンドロメダ病原体-変異- 上 作者:マイクル クライトン,ダニエル H ウィルソン発売日: 2020/05/26メディア: Kindle版テクノスリラー&SFの傑作マイケル・クライトンの出世作『アンドロメダ病原体』の、別の著者による正統的な続篇がこの『アンドロメダ病原体-変異-』である。 『アンドロメダ病原体』は架空の病原体をめぐる5日間の騒動を描いた小説である。通常の語りとは異なり事態の進行を客観的に記録した報告書のような体裁で、写真や図など具体的な資料が随所に挟み込まれている、特殊なスタイルの小説であった。この『変異』も、そうした小説上のスタイルをきちんと受け継いでいる。 とはいえ、元はマイケル・クライトンの出世作になったことからもわかる通り、科学面でのノンフィクション的な語りなど、氏のスタイルが色濃く出ている作品で、続篇とはいっても難しい面もあるんじゃないかなあ……昔あったコンテン

    テクノスリラーの傑作『アンドロメダ病原体』の正統続篇にして、ド直球のSFとして拡張してみせた快作──『アンドロメダ病原体-変異-』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2020/05/29
  • ドイツと日本が世界の覇権を競っている西暦2600年を描き出す、1937年刊行のディストピアSFの古典──『鉤十字の夜』 - 基本読書

    【送料無料】 鉤十字の夜 / キャサリン・バーデキン 【】 価格: 2750 円楽天で詳細を見る『鉤十字の夜』は、キャサリン・バーデキンによって書かれたイギリスのディストピアSFである。刊行年は1937年で、ディストピア系の代表作のひとつオルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』が1932年刊行だから、相当(ディストピア物としては)早い時期の作品になる。この、1月に刊行されていて認識はしていたのだけれども、水声社の方針としてAmazonに配しないので、買い忘れたままになっていた。 キャサリン・バーデキンという名前も『鉤十字の夜』も聞いたことがなかったのだけれども、訳者解説によると、どうも英語圏においてさえ著名な作家というわけではないらしい。というのも、もともと作もマリー・コンスタンティンという男性名として発表されたもので、長らくそれがキャサリン・バーデキンの変名であると明かされてい

    ドイツと日本が世界の覇権を競っている西暦2600年を描き出す、1937年刊行のディストピアSFの古典──『鉤十字の夜』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2020/03/16
    #sfjpn
  • 二年連続でヒューゴー賞・ローカス賞を受賞した、自省的な人型殺人警備ユニットの日常録──『マーダーボット・ダイアリー』 - 基本読書

    マーダーボット・ダイアリー 上 (創元SF文庫) 作者:マーサ・ウェルズ出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/12/11メディア: 文庫マーダーボット・ダイアリー 下 (創元SF文庫) 作者:マーサ・ウェルズ出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/12/11メディア: 文庫この『マーダーボット・ダイアリー』はマーサ・ウェルズのSFアクション連作中篇集である。上下それぞれに二篇の中篇が収められていて、特に上巻の「システムの危殆」はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞の各ノヴェラ部門を授賞。続く「人工的なあり方」もヒューゴー賞、ネビュラ賞を授賞と(賞的な意味で)評価の高い作品。 それにこの創元文庫版は安倍吉俊のイラストもあいまって刊行がたいへん待ち遠しかったんだけれども、読んでみたらこれが期待通りのおもしろさ! 全篇通して自分のことを一人称で「弊機」を呼ぶ人型警備ユニット

    二年連続でヒューゴー賞・ローカス賞を受賞した、自省的な人型殺人警備ユニットの日常録──『マーダーボット・ダイアリー』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2019/12/15
  • 死者の能力を借用する死霊見師(英国諜報部)vs死者から情報を引き出す死骸検師(ソ連諜報部)の諜報戦!──『ネクロスコープ 死霊見師ハリー・キーオウ』 - 基本読書

    ネクロスコープ 上 (創元推理文庫) 作者: ブライアン・ラムレイ,夏来健次出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/05/31メディア: 文庫この商品を含むブログを見るネクロスコープというのは何がなんだかよくわからないがそそる書名である。その上、内容をみたら、時代は冷戦下、ソ連の諜報占術開発局に所属する死骸を扱う能力者と英国の諜報機関の霊的諜報戦を描く一大伝奇ホラー! とか書いてあり、そりゃ読まないわけないよね、ってことで読んだわけだけれども、まあおもしろい。 正直展開はかなり冗長で、各種演出もそこまで洗練されているわけではないのだけれども(というか描写と相まってかなり野暮ったい)、それはそれとして死霊見師というアイディア、それが冷戦下の諜報に活かされるシチュエーション、終盤にいたって凄まじい勢いでスケールしていく能力とその魅せ方のおもしろさなど、プラス点もわんさかある作品で、総

    死者の能力を借用する死霊見師(英国諜報部)vs死者から情報を引き出す死骸検師(ソ連諜報部)の諜報戦!──『ネクロスコープ 死霊見師ハリー・キーオウ』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2019/06/02
    #sfjpn
  • チェコSFのたどった道を振り返る──『チェコSF短編小説集』 - 基本読書

    チェコSF短編小説集 (平凡社ライブラリー お 26-1) 作者: ヤロスラフ・オルシャ・jr.,平野清美出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2018/10/12メディア: 単行この商品を含むブログを見る『チェコSF短編小説集』である。なぜ突然平凡社からSF、それもチェコの? と疑問に思ったのだが、あとがきをみるに、ちょうどチェコSFに興味がある編訳者がいた(平野清美氏)のに加え、チェコ大使のヤロスラフ・オルシャ・jr氏、チェコSF界の第一人者イヴァン・アダモヴィッチ氏という布陣が組めたのも大きいようだ。 さて、では次なる疑問はそもそもチェコにSFはあるのかだが(SFがない国があるのかというのも謎だが)、もともと〈ロボット〉という言葉の起源はチェコの作家であるカレル・チャペックによって生み出された言葉だし、『チェコでは年間五〇〇冊ものSF・ファンタジー作品が出版されているのだという(その

    チェコSFのたどった道を振り返る──『チェコSF短編小説集』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2018/10/15
    #sfjpn
  • SFファン交流会向けに作った冬木糸一の文学リスト - 基本読書

    先週の土曜日、SFファン交流会で文学について牧さんと西崎さんと語る機会がありまして、事前に質問に答えて作ってきたリストが下記になります。特に縛りはありませんでしたが、いちおうSFファン交流会ということでどれもSFっぽい要素のある作品を選んだ感じ。そのため、僕のオールタイム・ベスト文学というわけではない。 会では、三人それぞれまったく作品がかぶることもなく、好みがはっきり出ていておもしろかった。以下、簡単に紹介でも。 特に話題にしたい、名作という作品を10作品。 われらが歌う時 上 作者: リチャード・パワーズ,高吉一郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/07/30メディア: 単行購入: 2人 クリック: 32回この商品を含むブログ (65件) を見るリチャード・パワーズの中でも最も好きな作品。三代にまたがる家族の物語。ユダヤ人、黒人女性の夫婦がまだまだ人種差別の激しい1930年

    SFファン交流会向けに作った冬木糸一の文学リスト - 基本読書
    okemos
    okemos 2018/09/18
  • 全長1.6キロメートルにも及ぶ巨大な竜──『竜のグリオールに絵を描いた男』 - 基本読書

    竜のグリオールに絵を描いた男 (竹書房文庫) 作者: ルーシャス・シェパード,内田昌之出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2018/08/30メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るなぜこの世界には竜がいないのか。他の何がなくてもいいから、竜だけは──”恐竜”ではなく、人間を遥かに超える知性と肉体と能力を持った圧倒的な”竜”が──居てほしかったと、この現実に対して思うのである。ただ、そう思う人間がたくさんいるからこそ、ファンタジィでは様々な形で、魅力的な竜が描かれてきたのだろう。 連作中短篇集であるこのルーシェス・シェパード『竜のグリオールに絵を描いた男』は、そんな僕がこれまで読んできた中でも最良のドラゴン小説にして、最高のファンタジィ小説のうちの一冊になった。ここには、素晴らしい一匹の竜がいる。 ”始まり”が訪れる前の永遠のひととき、まだ”言葉”が炎の中で発せられることもな

    全長1.6キロメートルにも及ぶ巨大な竜──『竜のグリオールに絵を描いた男』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2018/09/01
    懐かしいタイトルが出てきたな。 #sfjpn
  • 中国SF、めちゃくちゃおもしろい──『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』 - 基本読書

    折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036) 作者: 郝景芳,ケンリュウ,牧野千穂,中原尚哉,大谷真弓,鳴庭真人,古沢嘉通出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/02/20メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (8件) を見る折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (ハヤカワ文庫SF) 作者: ケンリュウ,中原尚哉,大谷真弓,鳴庭真人,古沢嘉通出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/10/03メディア: 文庫この商品を含むブログを見る『紙の動物園』、『母の記憶に』の今をときめくケン・リュウによって精選され、英語圏へと紹介された13篇から成る中国SFアンソロジーの邦訳版が書『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』になる。もともとこのアンソロジー自体はケン・リュウの知名度も相まって話題になっており、非常に高い期待

    中国SF、めちゃくちゃおもしろい──『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』 - 基本読書
    okemos
    okemos 2018/02/22
    #sfjpn
  • SFまで10000光年 by 水玉螢之丞 - 基本読書

    SFまで10000光年 作者: 水玉螢之丞出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/07/23メディア: 単行この商品を含むブログ (4件) を見る絵と手書き文字で彩られたページはいつも独特な雰囲気を漂わせ、当たり前のようにそこにあったのでこの先もずっとあるものだと思い込んでしまっていたが、終わるときは終わってしまう。書『SFまで10000光年』は昨年の12月13日に亡くなられた(解説、大森望さんの言葉を借りれば「最大公約数的には、たぶん、イラストレーターということになるだろう」)水玉螢之丞さんの、同名のSFマガジンでの連載をまとめたコミック・エッセイのような作品である。1993年1月号から一旦の区切りと成る2002年12月号までが納められている。SFマガジンではその後、2003年から『SFまで100000光年』と名前を変えて、亡くなる直前まで連載を続けていた。cakes.mu

    SFまで10000光年 by 水玉螢之丞 - 基本読書
    okemos
    okemos 2015/07/26
    #sfjpn