日本における前衛文学の旗手であり、戦後最大の知性とも評された、作家・批評家の花田清輝(はなだ・きよてる、1909〜74)は、1950〜60年代、文学者が大量に映画批評に参入していた時期において、最も精力的に映画批評に取り組んだ一人である。 しかし、吉本隆明との戦争責任をめぐる議論で「敗北」したことが影響してか、死後現在に至るまで、再評価されているとは言えない。 私がなぜ花田清輝の名を挙げたかというと、彼を含む映画批評を手掛けた文学者の中でも、最も多くアニメーションを批評材料として取り上げ、しかもその批評内容が斬新だったからである。 特に、1950年代、礼賛される以外になかったディズニー映画について、そのリアリズム志向を「なぜアニメーションであんな記録映画のような映像を作る必要があるのか」と、厳しく批判していた点が印象的だった。 具体的には、「漫画映画の方法」というタイトルで、雑誌「キネマ旬