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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (3)

  • あなたのことは好きじゃなかった - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。現在はワクチンがある程度いきわたり、感染者数がかなり減って、みんななんとなくうきうきしている。それでわたしも連休に帰省することにした。 わたしの地元では「東京で働いている娘が来て感染させた」となったら家族にものすごく迷惑がかかりそうで、帰省を控えていた。県の中核都市だから、知らない人もいっぱい歩いていて、娘が帰省したからその親が村八分になるみたいなことはないんだけど、それでもやっぱり、わたしはずっと、自分が生まれた町に帰れなかった。 わたしの生まれた家にはわたしの両親が住んでいる。両親は疫病前から家を売ってマンションに住もうという話をしていて、だからわたしは自分の生まれた家にお別れするつもりで来ていた。妹は県内に住んでいるからしょっちゅうこの家に来ているし、両親にも会っている。そんなわけでわたしだけがちょっとセンチメンタ

    あなたのことは好きじゃなかった - 傘をひらいて、空を
  • わたしの弟はワクチンを打たない - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。最初の通達から一年あまり、何度目かの通達のさなか、疫病のワクチンが提供されはじめた。それで全員が打つかといえば、そうではない。わたしの弟は打たないという。そして、わたしはそれを責めることができない。 弟は東京で一人暮らしをして、アルバイトで生計を立てている。今日働かなければ来月の家賃があやうい。運も悪かったし、弟の思慮が足りないところもあったと思うのだけれど、とりあえず自分で生活はできているのだし、人に大きな迷惑をかけているわけでもなし、責められるようなことではない。 わたしはそう思っているのだが、両親は「恥だ」と思っている。自分たちの助言をふいにして大学進学をせず、夢みたいなことを言っておかしな企業に就職してすぐに辞めてその日暮らしをしている、そんな浅はかな息子は心配するのも癪だと、そういうふうに思っている。 そうはい

    わたしの弟はワクチンを打たない - 傘をひらいて、空を
  • セフレですよ、不倫ですよ、ねえ、最低でしょ - 傘をひらいて、空を

    仕事の都合で別の業種の女性と幾度か会った。弊社の人間が、と彼女は言った。弊社の人間が幾人かマキノさんをお呼びしたいというので、飲み会にいらしてください。 私は出かけていった。私は知らない人にかこまれるのが嫌いではない。知らない人は意味のわからないことをするのでその意味を考えると少し楽しいし、「世の中にはいろいろな人がいる」と思うとなんだか安心する。たいていはその場かぎりだから気も楽だし。 彼らは声と身振りが大きく、話しぶりが流暢で、たいそう親しい者同士みたいな雰囲気を醸し出していた。私を連れてきた女性はあっというまにその場にすっぽりはまりこんだ。私は感心した。彼女は私とふたりのときには同僚たちに対していささかの冷淡さを感じさせる話しかたをしていた。 どちらがほんとうということもあるまい。さっとなじんで、ぱっと出る。そういうことができるのである。人に向ける顔にバリエーションがあるのだ。私は自

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