疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのために外で人と食事をするのはたいそう不自由になった。夜中まで自由にお酒を飲むといった、かつてありふれていた遊びは、ずいぶん難しいものになった。 しかしそれは「大半の人にとって」という但し書きのつく事象であるようだった。なんとなれば私の目の前にいる女は涼しい顔で繊細な杯をかたむけ、「二軒目までつきあってもらいますから」と言うのだ。疫病前とまるきり同じである。ここはきっと、特段のコネクションと割高な料金をもって疫病前の当たり前の夜を体験させる店なのだ。 彼女は私よりずっと若く、私よりずっと収入が多い。結婚相手はさらに羽振りがよいのだそうで、つまりはたいそう裕福なのだ。たいそう裕福だから私と割り勘で食事はしたくないという。それで私はときどき彼女に呼ばれ、飲み食いしてふんふんいって帰ってくる係をやっている。 私がのこのこ出か