デング熱の主要な媒介蚊はネッタイシマカであるが、現在わが国には分布が認められていない。一方、第二の媒介蚊であるヒトスジシマカ(図1)は第2次世界大戦中に、沖縄、長崎、大阪等で数万人規模のデング熱の流行に関わっている。2002年にハワイの100人規模の流行、台北における数十人規模の流行にも関わっている。近年、インド洋島嶼国、インド、東南アジア等で流行しているチクングニア熱の主要な媒介蚊はヒトスジシマカで、この流行は、2006年に検出されたウイルスの変異によって、ヒトスジシマカ体内での増殖活性が著しく高まったことが原因である。2007年に北東イタリアの小さな村で起こった突然のチクングニア熱の流行もヒトスジシマカが媒介蚊で、約300人の患者が発生し1人が死亡した。 この場合、1人の患者が原因で流行が起こったことが重要なポイントである。わが国の状況は、イタリアと同様に媒介蚊の生息密度が高いことから