「(ソニーも)変化しなければ、隕石で滅んだ恐竜のようになってしまう」 そんな危機感から、同社のビジネスを製造業からデジタルにシフトしたのが、元ソニーCEO・出井伸之氏。今ではデジタルのような「無形資産」で儲けることは当たり前になったが、出井氏が社長に就任した1990年代はまだ夢のような、にわかに信じられない話だった。 ときには“世界のワースト経営者”と酷評される厳しい状況も。出井氏は当時をどう振り返るのか? ノンフィクション作家・児玉博氏による評をお届けする。 ◆◆◆ 「うちは製造業の会社なんだぞ」 個人、法人に対し金融サービスを提供する会社「マネーフォワード」。2012年に創業された新興企業だが、株式市場が低迷する中でも、時価総額は1800億円を超え、投資家からの信頼は厚い。 創業者の辻庸介は京大を卒業後、入社したソニーでこんな体験をしている。大学でバイオの研究をしていた辻はソニーの入社