人のあらゆる営みは数え切れないほどの要因の複合からなり、単純な因果関係で理解したつもりになることは慎まなければならないものだ。にもかかわらず情報処理能力に限界のある人間は、それを単純な理由に落とし込んで理解しようとしてしまう。本稿が迫ろうとしている学力の個人差の原因についても、それは遺伝だ、いや環境だ、いや努力だ、いやいや教育だ、などとかまびすしい論争がこれまでも、そしていまもなされてきている。 実際はこういった要因(ここにあげたもの以外も、またここにあげたものの中身についても)がさまざまに影響しあって、学力というものを作り上げている。そんなことはちょっと考えれば分かりそうなものだが、「原因は複雑です、はいおしまい」、では何も分かったことにならないから、「その中でも一番大事なものは何か、そこさえ押さえておけば大丈夫」という決定因は何かを知りたくなる。 複雑さをできるだけ複雑なまま、どこまで