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2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻により、私たちは日々、彼の地のニュースを目にするようになった。だが、現在進行中の「戦争」の背景には何度も国境線が変更されてきた両国の複雑な関係があり、それを理解するのは島国に暮らす日本人の感覚ではなかなか難しいところも多い。両国の歴史や文化をより深く知るには、緊迫の度合いを深める情勢を追うばかりではなく、たとえば身近な食文化について考えることも役立つだろう。その手がかりのひとつとなるのは、ロシア料理の代名詞として日本でも親しまれている真っ赤なスープ、「ボルシチ」だ。実際のところ、ボルシチはウクライナにルーツがある料理だが、「ロシア料理」として世界に普及している。なぜウクライナ発祥のスープがロシア料理とされるようになったのか、ウクライナのボルシチとロシアのボルシチは何が違うのかなど、ロシアや周辺国の食文化に詳しい沼野恭子・東京外国語大学大学
日本の障害者運動史を研究しはじめて約20年になる。振り返ってみれば、この間、ずっと「国家や社会に抗うマイノリティ」を追いかけてきた。 ただし、私が追い続けてきたのは「巨大権力に立ち向かった果敢な英雄」というわけではない。正確に表現するのが難しいのだが、強いて言えば「自分自身の痛みと向き合い続けていたら、いつの間にか国家や社会に歯向かわざるを得なくなった人生を、結果として歩んでしまった人物」ということになるだろうか。 特にこの4~5年は、約半世紀前に起きた事件のことを考え続けていた。昨年は文字通り「寝ても覚めても」といった状態だった。その事件は、私に根源的な問いを突きつけてくる。個人は国家に抗うことができるのか。なぜ個人が国家と対峙せざるを得ない状況が生まれるのか。個人が国家に歯向かうことにどんな意味があるのか。こうした問いについて、取り憑かれたように考え続けていた。 『モナ・リザ展』初日に
1923(大正12)年、関東大震災直後に自警団や軍などによって多くの朝鮮人が虐殺されたことは、中学の教科書にも載っている近代史上の大事件だ。ところが近年、ネット上に、「虐殺などなかった」と主張する人々が現れている。 荒唐無稽にもほどがあるが、それで済む話ではない。なぜなら、そうした主張が実際に現実世界に侵入し、虐殺事件をめぐる教育や展示、犠牲者の追悼などを潰そうとする動きとなって現れているからだ。 関東大震災時に広まった朝鮮人の狂暴などについてのデマに注意を呼び掛ける警視庁のビラ。東京都復興記念館所蔵資料より 朝鮮人虐殺事件とはなんだったのか まずは、朝鮮人虐殺とはどのような事件だったのか振り返ってみよう。 歴史の教科書、たとえば『中学社会 歴史』(教育出版)は、「混乱のなかで、『朝鮮人が暴動を起こす』などの流言が広がり、住民の組織した自警団や警察・軍隊によって、多くの朝鮮人や中国人が殺害
露骨な性差別、セクハラ事件が頻繁に起こる昨今。それでも、そういった事実を頑迷に認めたくないという人たちがいる。財務省セクハラ騒動の際にも、中高年幹部を集めてセクハラについて研修をした様子が報道されたが、あれは本当に効果があったのだろうか? 大人になってから、それは人権侵害だと教えたところで、差別的な態度は直らないのではないか? と疑問に思う。 ジェンダー差別について発言を続ける太田啓子弁護士に、これから社会に出ていく子どもたちにどのようにこの現状を教えていったらいいのか、性差別の社会と親子でどう向き合うか、お話をうかがった。 今回のテーマは、〈わが子を性差別や性暴力の加害者にしないために〉ですが、これは私が、二人の息子を育てる中で日々、考えていることでもあります。息子たちは今、小学校4年生と1年生。彼らが成長したときに、平気で性差別的なことを口にするような男性になってしまったらどうしよう─
ある女子高生の研究発表に衝撃 先日、進学校として知られる某高校で授業を行った。 それは3年生の生徒たちがグループ別に関心のあるテーマを選び、数回の授業時間を使ってそのテーマを掘り下げ、最後の授業時間に講師を招いて授業を受けるというものだった。私を講師に呼んでくれたグループのテーマは「JKビジネス」。生徒たちはまず、私の著書『難民高校生』(13年、英治出版)や『女子高生の裏社会』(2014年、光文社)を読み、小さな班に分かれて“調べ学習”を行い、そこで学んだことや考えたことをまとめて班ごとに発表。それについて講師である私がコメントを返した。 多くの生徒たちは、授業を通して日本における子どもの性の商品化を自分ごととして捉えていたが、一組こんな発表をした班があった(以下要約)。 「援助交際に関わる人がいることで、私たちのような“一般”の女子高生や女性が性的対象になることの抑止力になっています。性
最近、リアルに「単身女性として、先の人生への不安を突きつけられる」出来事に遭遇した。きっかけは、引っ越しを思い立ったこと。仕事の合間にネットで賃貸物件の情報を見たり、不動産屋をまわって気になるところを内見したりしていたのだが、なかなかいい部屋がない。特に私は猫飼いの身。「ペット可物件」となると、部屋探しはイバラの道だ。 そんな中、奇跡的に様々な条件がぴったりの物件と出合った。「ここだ!」と、喜び勇んですぐに申し込んだところ、翌日に不動産屋の青年から「大変申し訳ないんですが……」と、沈んだ声で電話があった。入居審査で「NG」だったというのである。 なんで? どうして?――混乱する私に、実直そうな青年は言った。 「おそらく、仕事が不安定だからではないかと……」 確かに私はフリーの物書き。しかし、今まで部屋を借りるにあたって「ペンネームは何か?」「どんな媒体に書いているのか?」などを根掘り葉掘り
凶弾に斃(たお)れた安倍晋三氏が残していった(彼らしい)途方もない置き土産が、連日大きな注目を集めている。旧称「世界基督教統一神霊協会」(現在の「世界平和統一家庭連合」)と自民党との長年の癒着が続々と明らかになっているからだ。マスコミは「旧統一教会」と書くけれど、そのカルト性を表すには「神霊」をつけるべきだと思う。また、元の正式名称では「協会」となっているのだから、従来のキリスト教の教会と区別する意味でも、ここでは「旧統一神霊協会」と書く。 そんな折に便乗商法よろしく、のこのこと顔をだすのだが、ほとんど無名とはいえ一応小説家を肩書きとしているぼくは、過去に旧統一神霊協会にはまりかけた経験があった。でもそのことを、つい最近まで公の場で話したことはない。 なぜって、それはできれば隠しておきたい自分の恥部に当たるから。「小説家」という、対象と距離を保つ冷静さと批判的分析力を足場にする(とイメージ
『鬼滅の刃』という作品がこれほどの人気作となり、未曽有(みぞう)の記録を打ち立てているのはなぜなのか。様々な理由があるでしょうし、それは様々な専門家や評者、読者やファンが今後それぞれの角度から分析していくことだと思います。 私はここで、マンガの『鬼滅の刃』を一読者として正面から読みながら、自分なりにその秘密に迫ってみたいと考えています。ネチネチした進み方になるかもしれません。私が自分なりに言葉にしてみたいのは、『鬼滅の刃』という作品が、この世界の残酷さと理不尽さにいかに向き合っているかということ、自分の中にもひそんでいるかもしれない「鬼」の怖さをごまかしていないこと。にもかかわらず、この作品の主人公たちが人間の日々の努力や勇気の意味を、そして他人に対する強い信頼の心を見失っていないのはなぜかということです。そしてそれらすべてが、きっと若者や小学生たちの心にも届きえている――その意味について
2015年にノーベル文学賞を受賞したベラルーシ出身の作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによる証言集『戦争は女の顔をしていない』は、1985年に原著が刊行され、日本でも2008年に群像社により翻訳出版された(現在は岩波現代文庫に所収)。そのコミック版(小梅けいと作画、KADOKAWA)は、2019年4月にComicWalkerで連載が始まってすぐに、読者から熱い歓迎の声が寄せられた。 舞台となっている「独ソ戦」に関しては、ナチスの蛮行や太平洋戦争と比較すると、これまで日本ではあまりスポットが当たることがなかった。コミック版の何が読者を引き付けたのか、そしてマンガだからこそ伝えられるものはあるのか。コミック版の監修を担当した、マンガ家・速水螺旋人(はやみ・らせんじん)さんに話を聞いた。 500人以上の「語り」から、見えてくる戦争 独ソ戦とは1941年から45年にかけておこなわれた、ナチス
安倍政権の一番の目玉である経済政策「アベノミクス」。政府は「戦後最長の好景気」とうたうが、景気回復を実感できない人も多いのでは? なぜ政府が発表する「成果」と人々の生活の「実感」がずれるのか。著書『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書)などで、安倍政権の経済政策のカラクリを読み解いてきた弁護士の明石順平さんに聞いた。 アベノミクスとは何だったのか ──「アベノミクス」という言葉は多くの人が知っています。しかし、実際にどんな成果を上げているのかを理解している人は少ないのではないでしょうか。 明石 ほとんどの人が知らないと思いますね。アベノミクスは「(1)大胆な金融政策」「(2)機動的な財政政策」「(3)民間投資を喚起する成長戦略」という「三本の矢」を柱とする経済政策と言われています。しかし、事実上は「大胆な金融政策」に尽きると言っていいでしょう。 ──大胆な金融政策とは、どういう
【今週のミニ知識】ブレッツェル/ロッゲンミッシュブロート/シュトーレン/ツォプフ ものしり雑学事典 ミニダス~【世界のパン】 今日から使える“ものしり”雑学! イミダス編
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(19年8月1日―10月14日)。その企画展である「表現の不自由展・その後」がきっかけとなって、さまざまな騒動が巻き起こった。一部作品の公開中止と再公開。そして文化庁の補助金不交付決定……映画作家・想田和弘さんはこの問題をどう見るのか、ご寄稿いただいた。 あいちトリエンナーレにおける企画展の一つである「表現の不自由展・その後」(以下、「表現の不自由展」とする)が、外部からの脅迫を受けて「危機管理上の正当な理由」によって中止された。それを受けて、トリエンナーレに対して交付される予定だった補助金7820万円が、9月26日、文化庁によって突然、全額不交付と決定された。補助金の交付を決定する採択をした外部審査委員への意見聴取を行うことなく、文化庁ないし文部科学省のトップの独断で決定されたようである。 この一連の事件は①「表現の自由」を脅かす問題であると同時
2019年12月18日、伊藤詩織さんが「勝訴」という紙を掲げた写真を見た瞬間、胸が熱くなった。 山口敬之(のりゆき)元TBS記者による性行為の強要をめぐる裁判で、東京地方裁判所は山口氏の「不法行為」を認定し、損害賠償金330万円の支払いを命じたのだ。彼女が顔を出して記者会見をしてから実に2年半。その間、筆舌に尽くしがたいセカンドレイプや誹謗中傷に晒された。 判決が告げられた後、19年4月には裁判での尋問を前に自殺未遂をしていたことも告白した。が、勝訴という結果を手に入れたのだ。 復讐したいわけではない、司法がちゃんと機能しているか、それを確認したい――そんな詩織さんの思いは果たされた。しかし、山口氏は判決を受けてすぐに控訴した。 そんな判決が出る少し前、性被害についてある声明が出された。それはドキュメンタリー映画『童貞。をプロデュース』(チップトップ製作、SPOTTED PRODUCTIO
「すごーい!」「たーのしー!」などのゆるいセリフと魅力あふれるキャラクター、その一方でどこか不穏な気配も感じさせるストーリー展開が話題を呼び、2017年を代表するヒット作となったアニメ『けものフレンズ』。ヒットの秘訣は何だったのか? なぜ放送終了後もその熱量が持続し続けているのか? アニメ特撮研究家の氷川竜介氏が分析する。 「けもの」を媒介に拡大するヒット作 深夜帯で2017年1月から3月まで放送されたTVアニメ『けものフレンズ』(全12話、テレビ東京ほか)の人気拡大が止まらない。動物を擬人化した美少女キャラ《フレンズ》を描く点では、特に珍しいものではない。近年、他にも動物テーマの児童向け作品が複数あった。だが、過去のどれとも違う新しいタイプのブームを起こして注目が集まっているのである。 本編が2話ずつ収録された公式書籍『けものフレンズBD付オフィシャルガイドブック』の第3巻の帯には、「2
「アウシュビッツ否定論者」がはるか昔から繰り返し現れるように、歴史を揺らそうとする動きは絶えません。 歴史とはなにか、その役割とはなにか。フェイク・ニュースが溢れかえる「ポスト・トゥルース」の時代を生きる私たちは、歴史学と歴史物語をどのように読むべきなのか。修正主義に抗うには、歴史学になにが必要なのか。 集英社新書から『近現代日本史との対話 【幕末・維新―戦前編】』『近現代日本史との対話 【戦中・戦後―現在編】』という、あわせて1000ページを超える著作を刊行した歴史学者、成田龍一教授にうかがいました。 歴史を通して考える、「私たちは何者か?」 最近、日本では「私たちは何者か」を問う、歴史に関する書籍が注目を集めています。2016年にはイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』(河出書房新社)が大ヒットし、2018年の同著者の『ホモ・デウス』(同)と合わせて100万部以
コロナ禍で強行した東京オリンピックが幕を閉じた。 感染症の影響にとどまらず、このオリンピックは、招致が決まった当初からさまざまな疑惑や不祥事に“伴走”されながら準備が進んできた。そして、開会式直前になって演出チームの作曲担当・小山田圭吾氏、演出担当の小林賢太郎氏がそれぞれ辞任、解任で姿を消すことになった。 中でも小山田圭吾氏の辞任については、いまでもネットを中心にさまざまな議論が交わされている。今回の辞任の原因になったのは、1994年と95年にそれぞれ音楽誌とサブカル誌に掲載されたインタビューで語った自身のいじめ加害体験だ。さらにそのいじめには、障害のある同級生へのいじめであることも明かされている。 小山田氏は、80年代末、「フリッパーズ・ギター」という音楽ユニットでその名前を知られるようになり、90年代にはソロユニット「コーネリアス」を結成。69年生まれの小山田氏は当時20代半ばで、音楽
離婚や別居を理由に、両親のどちらかによって監護されている子が、引き離しを目的にもう一方の親への中傷、悪口を吹き込まれ、それが原因で情緒不安定や対人関係の困難を生じること。片親引き離し症候群ともいう。1980年代初めごろ、アメリカ人精神科医のリチャード・ガードナーによって提唱された概念で、親権問題の裁判を通じて広く知られるようになった。注意すべきは、子どもが非監護の立場にある親に対してマイナスのイメージを持っているとしても、安易に片親疎外症候群であると判断すべきではない。片親の愛情不全という事実によったものなのか、あるいは監護している親の心理的影響によるものか、しっかり見極めることが重要である。なお片親疎外症候群という概念に対しては医学的にも心理学的にも様々な議論があり、症候群や疾患と認定している専門職団体はない。
かねて問題視されてきたコンサートチケットの高額転売。厳密な個人確認を行うなどの対策を取るアーティストもいるが、インターネット上の転売サイトをのぞいてみれば、定価の何倍もの値段でチケットが流通しているのが実態だ。こうした事態に経済学はどう応えることができるのだろうか? 経済学の中でも「マーケットデザイン」という新しい学問分野の専門家である坂井豊貴教授は、「ダフ屋は悪くないが、ダフ屋を必要とするいまのチケット市場の出来はひどく悪い」、「適切にデザインされたオークション市場でチケットを売れば、アーティスト側は儲かるし、ファンはダフ屋に仲介料を払わなくて済むようになる」という。 チケット転売に反対する音楽業界 「私たちは音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します」――。日本音楽制作者連盟、日本音楽事業者協会、コンサートプロモーターズ協会、コンピュータ・チケッティング協議会ら4団体は、2016年
中央アジア、ウズベキスタンとカザフスタンにまたがる塩湖、アラル海は、かつて世界第4位の湖水面積を誇っていた。しかし、旧ソ連時に行われた灌漑(かんがい)政策などが原因で水位が急激に低下し、面積は50年間でおよそ10分の1に縮小。生態系へのダメージ、湖底の表出と砂漠化など、「世界最悪」といわれるほどの深刻な環境破壊をもたらした。2014年にはついに、アラル海が「消滅」したと報道され、最悪の結果を迎えたかのような情報が流布した。しかし、アラル海の湖水が一部ながら残り、中には水位が復活しているエリアもあることはほとんど知られていない。アラル海は今、どうなっているのか? 現地事情に詳しい地田徹朗・北海道大学スラブ研究センター助教に最新の現状を聞く。 世界に激震、「アラル海消滅」のニュース 14年10月、かつて世界第4位の面積を誇った中央アジアのアラル海が「ほぼ消滅」した、あるいは「消滅」したというニ
大韓民国(韓国)での徴用工問題を巡る裁判で新日鉄住金への賠償判決が確定した。ところが、この判決を巡って日韓双方の意見が異なる。この食い違いはどこから生じているのか。韓国ではなぜこのような判決に至ったのか。「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」の呼び掛け人の一人で弁護士の殷勇基さんと、日韓請求権協定に詳しい新潟国際情報大学教授の吉澤文寿さんに話を聞いた。 韓国大法院判決と日本政府見解 2018年10月30日、韓国の最高裁判所に当たる韓国大法院は、戦時中の元徴用工4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた裁判で、新日鉄住金の上告を棄却。4人合わせて約4000万円の賠償を命じた。 韓国大法院判決は、「原告ら損害賠償請求権は、『日本政府の韓半島に対する不法的な植民支配及び侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権』であって請求権
12年ぶりの日本製ゴジラとして大ヒットした『シン・ゴジラ』。62年前、水爆実験の落とし子として生まれたゴジラが、3.11(東日本大震災と福島第一原発事故)を経た日本で、どのように蘇ったのか? 観た人誰もが語りたくなる「シン・ゴジラ」の意味と意義を、特撮研究の第一人者が解き明かす。 特撮の新たな可能性を求めて 庵野秀明総監督・樋口真嗣監督の『シン・ゴジラ』は、2016年の最も重要な実写映画となった。それだけでなく、観客が鑑賞後に自説を語りたくなったことでも、大きな話題を巻き起こした。日本政府の政治家・官僚たちを主役に据えた点、徹底したリアリズムでゴジラ災害の描写に福島第一原子力発電所の事故対応を想起させる描写を重ねた点など、論点は数多い。 日本の理想と現実のギャップをゴジラという無限パワーを持つ異物で照射し、原始的な畏怖心を喚起したことで、一般的な拡がりを持つ話題作となったのだ。これまで、「
アベノミクスの「成長戦略」の目玉だった原発輸出。安倍晋三首相の肝いりで推し進められてきたが、日本の三大原子力メーカーが手掛けた輸出案件はいずれも頓挫した。まず東芝が2017年、米国における原発建設で巨額の負債を抱え込み、海外原発事業から撤退。そして今年初め、日立製作所が英国での原子力発電プロジェクトを“凍結”し、三菱重工もトルコで進めていた原発建設計画に見切りをつけた。これらだけではない。他の案件も撤回されるか、あるいは暗礁に乗り上げるなどしている。 政府は「海外市場を活用する」ことで、「原子力の技術、人材、産業基盤の維持・強化」を図るとしてきた。国内では原発の新増設が見込めそうもないからである。しかし原発輸出のために会社の屋台骨がぐらつくような事態に陥っては元も子もない。メーカーは「もう限界」(日立製作所の中西宏明会長)と白旗を掲げた。それでも安倍政権は、「日本の原子力技術への期待の声は
『小さいおうち』が描く戦前の中流家庭の豊かさ 昭和初期を描いた中島京子さんの小説『小さいおうち』。2010年に刊行され、第143回直木賞を受賞した作品だ。14年には名匠・山田洋次監督によって映画化された。この小説が最近、あらためて読み直されている。決して劇的とはいえない静かな物語の向こうに、「今」という時代の危うさが透けてみえるというのだ。中島さん自身はどんな思いで今の世相を見つめているのだろう。お話を伺うことにした。 『小さいおうち』の舞台は1930年代後半(昭和10年以降)、東京の私鉄沿線の町に住むサラリーマン家庭の「平井家」だ。主人公は東北からこの家に女中としてやってきた「タキ」という名の少女。彼女は平井家が暮らす赤い三角屋根の和洋折衷の美しい「文化住宅」に心惹かれる。それがつまり、「小さいおうち」だ。タキはそれ以上に、この家の「奥さま」である時子の優雅さに憧れ、彼女に仕えることに幸
4月17、18両日(現地時間)、アメリカのフロリダ州にあるトランプ大統領の「マール・ア・ラーゴ」で日米首脳会談が行われた。会談後の共同記者会見で「トランプ大統領との友情と信頼関係を更に深めることができた2日間であった」と強調したように、安倍晋三首相にとって今回の会談の最大の目的はトランプ氏との蜜月関係の演出だった。 安倍首相が「100%共にある」と繰り返しアピールする日米関係だが、日米地位協定の運用をめぐって現在、両国の主張が対立し協議が難航している問題がある。 2017年1月16日「日米地位協定の軍属に関する補足協定」に署名する岸田文雄外務大臣とキャロライン・ケネディ駐日大使。写真:つのだよしお/アフロ 補償金の支払いを巡って対立する日米政府 2年前の2016年4月28日夜、沖縄県うるま市で20歳の女性がウオーキング中に米軍属のアメリカ人男性に襲われ、殺害される事件があった。この事件で、
医療保険や年金などの制度によって、誰もが最低限の生活を営めるように富を再分配するのが「社会保障」。ところがなんと、日本では社会保障制度が逆に貧困を拡大しているのだという。一体なぜ、そんなことになってしまったのか。 ◆社会保障制度で逆に貧しくなる唯一の国 社会保障は本来、私たちの生命と尊厳を守るためにあるはずだ。このようなことを言えば、何を当たり前のことを、と言われるかもしれない。しかし、社会保障制度があることによって生活がより厳しくなり、困窮状態に追い込まれる国が世界に一つだけある。その国とは実は、私たちが住む国、日本である。 このことを理解するために、一つのグラフを紹介しよう。OECD(経済協力開発機構)がまとめた、社会保障制度による貧困率の削減効果の各国比較である。これは、「共稼ぎ世帯・単身世帯」と「両親のうち一人が就業する世帯」とに分けて、社会保障によってどの程度、貧困率を小さくでき
コロナ禍の繁華街「新世界」と通天閣(大阪市浪速区) 総合的な目で大阪維新の会を分析する必要性 2021年10月31日に行われた第49回衆議院議員選挙において、大阪維新の会を母体とする日本維新の会は、大阪府内において圧倒的な勝利を収め、前国会から4倍近い議席増を果たした。メディアは維新の躍進を報じ、一部の論者は大阪における維新支持の構図が極めて盤石であるとの分析を報告している。論評のいくつかは、大阪府内で強化される「維新の会」の支持が、メディア支配やポピュリズム的傾向によるものではなく、大阪維新の会の政策運営に対する有権者の合理的な評価の結果であるとしている。例えば、関西学院大学教授の善教将大(ぜんきょう・まさひろ)氏は、維新の会の衆議院選挙における躍進の背景として、大阪府と市の行政機能の調整に際してリーダーシップを発揮した大阪維新の会に対する大阪府民の評価が広がったのではないかと分析を加え
自民党の勉強会で発言を 先日、自民党の一億総活躍推進本部「女性活躍・子育て・幼児教育プロジェクトチーム」の勉強会に呼ばれ、JKビジネスなどに取り込まれる子どもたちの現状を話す機会をいただいた。これまで、JKビジネスの現状や中高生支援の必要性などについて、民進党、公明党、日本共産党、社民党、生活者ネットワークなどの議員たちとは、党の勉強会や、女子高校生サポートセンターColabo(コラボ)の研修への参加や視察などを通して意見交換してきたが、自民党の勉強会に呼んでいただいたのは初めてだった。 ちょうど、政府が2017年4月を「AV出演強要・『JKビジネス』等被害防止強化月間」としたタイミングでもあった。強化月間とは言っても、結局、JKビジネスで働く少女の一斉補導をしたことばかりがメディアでも報じられた。買う側の大人を減らすための対策や、子どものケアの視点を持った取り組みよりも、商品とされる子ど
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