サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
掃除・片付け
note.com/ipsj
2024年本試験問題 第2問 ついに異星人が地球を訪れた.しかも一度に,トウ星,カイ星,ホク星,リク星という,四つもの星から. 辰己丈夫(放送大学) 今回取り上げるのは,2024年1月に実施された大学入学共通テストの「情報関係基礎」第2問です.この第2問の位置づけなどは,大学入試センターの資料などを見ると分かりますが,手短に書くと「アルゴリズム」や「数量的関係」を重視した問題となっています.2022年からの学習指導要領における「情報I」でも,モデル化とシミュレーションは当然,取り上げられる話題ですから,この問題に取り組んでみることも悪くないでしょう. この記事では,まず,問題を解く受験生の気持ちになって考えていることを記していきます.その後,この問題の背景などについて説明します. なお,2024年度の問題は,2024年7月頃に情報処理学会情報入試委員会の情報関係基礎アーカイブに掲載予定です
湯淺墾道(明治大学) 2024年米国大統領選挙の懸念 2024年は世界的に「選挙イヤー」であり,多くの国で大統領選挙や国会議員選挙が予定されている.その中には,米国やロシアの大統領選挙など世界的に注目を集めるものが少なくない.アジアでは,1月に行われた台湾の総統選挙,2月に行われたインドネシア大統領選挙のほか,インド,パキスタン,バングラデシュ,韓国で国会議員選挙が予定されている.しかしその中でも特に注目されるのは,米国の大統領選挙であろう.現時点では現職の民主党・バイデン(Joe Biden)候補と,元職の共和党・トランプ(Donald Trump)候補の事実上の一騎打ちとなる可能性が高く,かつ激戦となることが予想されている. ところで米国の大統領選挙といえば,民主党のクリントン(Hillary Clinton)候補と共和党のトランプ候補が争った2016年の選挙のことが思い出される.20
角野 隼斗 (ピアニスト) かつて情報系の学生であった私は,音楽家としての道を歩むようになった今でも,人工知能(AI)が人間の創造性に与える影響に関心を抱き続けています.近年,AI技術は飛躍的な発展を遂げ,特に最近発表されたChatGPTは多くの人々に衝撃を与えたことと思います.普通の人間と区別のつかない創作をするほどのレベルに達しており,創造性とは何かという根源的な問いを改めて考えさせられます. 私が大学院生だったころ,AIを用いた自動編曲や作曲を試みていました.当初は人間では思いつかないような独創的な発想を期待していましたが,実際にはそんな甘くはなく,無秩序な出力がほとんどでした.入出力のフォーマットを工夫したり,ヒューリスティックな制約を付加すると,次第に意味のある出力が得られるようになりました. 創造性とは何かと問われれば,私は制約を設けることこそが創造の本質ではないかと考えます.
徳永拓之(LeapMind(株)) 1bit LLMの時代が来る? 2024 年2 月,The Era of 1-bit LLMs: All Large Language Models are in 1.58 Bits¹⁾ というタイトルの論文がarXiv上で公開され,にわかに話題となりました.“1.58 Bits” という表現はあまりなじみがありませんが,log₂(3) = 1.58 . . . ということで,パラメーターを三値にした場合の情報量を示しているようです.この論文(以下b1.58 論文とする)は,同じ著者グループによる文献2)を少し拡張したもので,大規模言語モデル(LLM)の効率化についての研究です. 本稿の前半ではこれらの論文の主張を解説し,後半ではその主張の妥当性について検討します. なお,これらの2本の論文は,本稿執筆時点では,査読を経たものではありませんのでご注意くだ
久野 靖(電気通信大学) まだまだ続く「教科『情報』の入学試験問題って?」,2025年の試験開始がいよいよ近づいて,大学入試センター以外に,「情報」の独自入試を実施する大学からの模擬試験問題なども入手できるようになってきました ¹⁾ ²⁾. その中から今回は,京都産業大学が協力高校において実施した模擬試験の問題のうちの1問,チェックディジットの問題を取り上げます.独自入試の問題なんて難しそう,と思いましたか? 確かに,大学入試センターの試験にないようなタイプの問題もありますが,この問題は基本的な知識を問う第1問に続く第2問(京都産業大学のフォーマットでは「[II]」と記しています)として,基本的な考える力を見るものとなっています. この問題を含む模擬試験の全問題や解答例・解説は京都産業大学の入試情報サイト ³⁾ から「2025年度入学者選抜『情報』模擬問題(サンプル問題)」として入手できま
高岡詠子(上智大学)中野由章(工学院大学附属中学校・高等学校) 2024年1月30日に本会より,「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)に関する本会の意見表明(https://www.ipsj.or.jp/release/iken20240130.html)を発出した.本稿では,DXハイスクールとは何か,また,DXハイスクールと関連があると考えられる動向を踏まえ,本会はどう貢献できるのかについて解説する. 情報処理学会の提言2022年度から,高等学校で「情報Ⅰ」が共通必履修化されました.2023年度には,文部科学省が「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」により,高等学校段階におけるデジタル等成長分野を支える人材育成の抜本的強化を図ろうとしています. AI戦略2022の実現のため,大学における数理・データサイエンス・AI教育プログラムへの接続も意識し,より多くの高等学校で
佐藤 喬(東京都立産業技術高等専門学校) 今回は,2023年11月26日(日)に電気通信大学で実施された個別学力検査「情報」の受験体験会で用いられた試作問題 ¹⁾ の第3問について解説します.この問題は,6桁のある数字列を並び替えて,辞書式順で次にくる数字列を求める手順について考える内容です. 問1の解説 それでは,問1から見ていきましょう.図Aは,6桁の数字列の定義と大小関係について,例を用いた説明です. 図A 数字列の定義と大小関係 問い(1)と(2)は,手を動かせば解ける内容と思われます.(1)の正解は,「最も大きい並び」ですから,大きい数字より並べて [654321] です.(2)の正解は,5番目が [123645],6番目が [123654],7番目が [124356] となります. 実際に手を動かすと,何らかの機械的な手順がありそうに感じます.その具体的な手順が,問題文の続きに
水野 史暁(みずの ふみあき) ドローンレースとは,空中に設けられたチェックポイントを周回し,障害物を回避しながら,ゴールまでの時間を競うもので,エンターテイメントへのドローン活用の一例として知られている. その中で,ドローンに取り付けられたカメラの映像をもとに操縦を行う競技があり,速いものでは時速150kmに迫る高速な飛行をすることから,低遅延な映像伝送が要求されている. 多くのレースドローンにおいては,低遅延を実現するためにアナログ映像伝送が採用されているが,電源ノイズ,モータやモータドライバの放射ノイズ,マルチパスなどによるノイズに起因する画質の劣化が問題になる. そのため,水野さんはデジタル伝送をアナログ並みの低遅延で実現することを目標として,FPGAを使ったハードウェアを開発するとともに,低遅延を実現するためのソフトウェアを開発した. デジタルにおける低遅延を実現するためにはいく
林 宏樹(雲雀丘学園中学校・高等学校) 今回は,令和4年(2022年)11月9日に大学入試センターより公開された「情報」の試作問題 ¹⁾ の第2問Bのシミュレーションを扱った問題を解説します.分野としては情報Ⅰ(3)コンピュータとプログラミングの位置づけであり,この分野にはモデル化とシミュレーションも含まれてます. まず,シミュレーションって言葉を聞くと,難しそうだと感じてしまいます.シミュレーションの問題のポイントは,「問題文の内容が,図のどの部分を表現しているか」を読み取ることです. 問題設定の理解 まずは,問題設定が書かれています.リード文には大切なヒントが書かれています.しかし,一度読んだだけで完璧に理解する必要はありません.一度読んで,問題を読み進めていき,理解できないところがあれば戻ることを心がけましょう. 問題のリード文 この問題のリード文では,次の4つの状況を把握するぐらい
堀元 見(YouTuber・作家) 「ゆるコンピュータ科学ラジオ」というYouTubeチャンネルを運営して生活している.コンピュータ・サイエンスについておもしろおかしく話す対話形式の番組だ.大学の専攻をこんな形で活用するとは夢にも思わなかった. 大学4年生のとき,機械学習についての難解な論文を読みながら,「僕に研究は向いてないんじゃないだろうか.YouTuberにでもなったほうがいいんじゃないか」と思った.普通の人なら気の迷いで済むのだけれど,当時の僕は脊髄反射で生きているアホだったので,本当に研究室を飛び出してYouTubeを始めてしまった.すでに決まっていた大学院の推薦を蹴飛ばして. それから数年,今はYouTuberとして安定した生活が送れるようになっている. 僕は大して何もできない人間だけれど,得意なことが1つあった.小難しい話を,おもしろく説明することである.自分の天職が「おもし
三嶋隆史(東京工業大学/AI Picasso(株)) 尾崎安範(AI Picasso(株)) 冨平準喜(AI Picasso(株)) みなさまはインターネット,特にSNSは普段から使用されていますか? 最近,SNSで共有される画像に大きな変化が見られます.これは,生成人工知能(AI)技術が画像制作に広く用いられるようになったためです.特に2022年から,生成AIを使った画像の品質は飛躍的に向上しています.たとえば,X(旧Twitter)やInstagramに投稿される人物の写真が,実際の人間によるものかAIによって作られたものか,区別が難しくなってきています.また,人間が描いたようなイラストもAIによって多く生成されてきています.この技術の進化について,一部の研究者は画像生成AIの能力は90%以上の人間の能力を超えていると主張しています¹⁾. そこで,本稿では画像生成AIの動向を説明し,画
山名琢翔(筑波大学) オセロが解かれた?! "Othello is Solved"というタイトルの論文がarXivに投稿されました$${^{☆1}}$$.オセロでは,初期局面から双方のプレイヤがミスをせずに打ち続ければ,終局結果は引き分けになると証明できたというのです. オセロを「解く」とはどういうことなのか.どうやって解いたのか.また,解かれた後のオセロはどうなるのか.この記事ではオセロを解くということについて解説します.なお,このarXivに投稿された論文"Othello is Solved"は記事執筆時点で査読や追試を経たものではないことに注意すべきです. オセロを「解く」とはどういうこと? ゲーム情報学の分野では,ゲームを「解く」という行為がいくつか存在して,それぞれに名前がついています.具体的には強解決,弱解決,超弱解決の3種類です.論文本体の話題に入る前に,まずはオセロを解くと
加藤和幸(金城学院大学) 湘南工科大学では2023年度入試科目より「情報」が開設 神奈川県藤沢市にある「湘南工科大学」では,今年度(2023年度入試)の一般選抜独自試験より「物理・化学・情報」の中からの選択科目として「情報」が出題されている.多くの大学の2025年からの大学入学共通テストでの「情報」の扱いに注目が集まる中,2年早く入試教科で「情報」を取り入れている「湘南工科大学」の取り組みに注目したい. 2024年度の入試はまだ旧課程での科目編成のため「情報Ⅰ」での出題は難しい. そこで本大学では,出題の基本方針として下記のような発表がされている. 出題の基本方針 出題される科目は「情報の科学」です.出題範囲は「ディジタル表現」,「コンピュータの仕組み」,「ネットワーク」,「情報セキュリティ」,「アルゴリズム」,「データベース」,「情報技術と社会」です. 出題形式は,大問4つ,大問は複数の
本会ではジュニア会員制度や全国大会でのIPSJ KIDSを始めとしたキッズイベント企画からも分かるように,若い子どもたちの活躍にも注目しています.このたび,情報処理推進機構(IPA)より,情報処理技術者試験に最年少(8歳)で合格された方への取材をご寄稿いただきました.情報処理技術者試験についてはVol.64, No.4(2023年4月号)にも解説記事「情報処理技術者試験における実施方式の変革 ─「新たな日常」を踏まえた試験の実現に向けて─」が掲載となっておりますので,本稿とあわせてご覧いただければ幸いです. 奥村明俊((独)情報処理推進機構 IPA) IPAは,優れたデジタル人材を育成するために,ITパスポート試験(IP),基本情報技術者試験(FE),情報セキュリティマネジメント試験(SG)といった役割やレベルが異なる計13区分の国家試験を実施しています$${^{1)}}$$.IPは,IT
インタビュー: 東京大学 先端科学技術研究センター 身体情報学分野 教授・博士(工学) (一社)情報処理学会 理事・フェロー/情報処理学会誌『情報処理』 前編集長 稲見昌彦 氏 文構成:加藤由花(東京女子大学) 稲見昌彦氏に情報処理学会誌の前編集長として行った変革や学会に対する思いをお聞きし,その中から3つのトピックを選びnoteに連載します.今回はその第2回目となります. ※なお,本記事は「DXで学会誌の外への繋がりを拡大」というタイトルでWeb(https://www.powerweb.co.jp/knowledge/columnlist/interview-28/)に掲載したインタビューの際,掲載しなかった内容を番外編としてまとめました. 連載のタイトルは以下 1.国内学会の存在意義とは 2.学会運営:学会をどう運営していくべきなのか? 3.学会活動の広がり 国内学会が必要だとして,
白井詩沙香(大阪大学) 今回の連載「教科『情報』の入学試験問題って?」では,2005年度大学入試センター試験科目「情報関係基礎」本試験の第4問を紹介します. この問題は,井手先生の記事「じゃんけんをプログラミングするよ」で触れられていた放送大学の辰己丈夫先生が厳選した「情報関係基礎」$${^{1)}}$$の良問の1つで,ユーザインタフェースの仕様が異なる2種類のデジタルカメラの使い勝手を比較させる問題です. 問1:デジタルカメラX型の設定変更操作に関する問題 第4問では2種類(X型・Y型)のデジタルカメラのユーザインタフェースを比較しますが,問1ではX型のデジタルカメラのユーザインタフェースの仕様が扱われています.まずは,前半部分の文章を見てみましょう. ここでは,X型の4つの機能(画像サイズ,フラッシュ,撮影対象,セルフタイマー)の設定変更手順を説明しています.ユーザインタフェースは図1
インタビュー: 東京大学 先端科学技術研究センター 身体情報学分野 教授・博士(工学) (一社)情報処理学会 理事・フェロー/情報処理学会誌『情報処理』 前編集長 稲見昌彦 氏 文構成:加藤由花(東京女子大学) 稲見昌彦氏に情報処理学会誌の前編集長として行った変革や学会に対する思いをお聞きし,その中から3つのトピックを選びnoteに連載します.今回はその第1回目となります. ※なお,本稿は「DXで学会誌の外への繋がりを拡大」というタイトルでWeb(https://www.powerweb.co.jp/knowledge/columnlist/interview-28/)に掲載したインタビューの際,掲載しなかった内容を番外編としてまとめました. 連載のタイトルは以下 1.国内学会の存在意義とは 2.学会運営:学会をどう運営していくべきなのか? 3.学会活動の広がり 学会とは何なのか,特に国内
稲葉 皓信(いなば てるのぶ) ノートテイキングアプリは,アイディアの整理や情報の共有,プロジェクト管理など,リアルタイムで情報を整理する便利なツールとして欠かせない存在である.しかし従来のノートテイキングアプリはマウス操作が主流であり,キーボード操作を主とした高度な自由度を持つノートアプリは珍しく,手を離さずに情報を入力することができないという問題があった. そこで稲葉さんは,ブラウザ上で動作し,キーボードのみで操作可能なノートアプリ「鍵記(kenki)」を開発した.このシステムを使うことで,Markdown言語やキーボードショートカットを駆使して効率的にノートを制作することが可能となる. 図 -1 「鍵記」アプリのスクリーンショット 鍵記(kenki)は,マウスを使わずキーボードのみで操作が可能な新しい操作体験を提供する.ユーザがスムーズにノートを作成・編集できるよう,Markdown
2022年度研究会推薦博士論文速報 [エンタテインメントコンピューティング研究会] 久保田 祐貴 (日本学術振興会特別研究員(PD)/ NTTコミュニケーション科学基礎研究所・客員研究員) ■キーワード 錯覚・錯視/介入設計論/錯覚性(解釈の複数性) 【背景】日常と学問に遍在する「錯覚」の科学的・工学的な活用を検討 【問題】「錯覚」の用語が曖昧 & 特性・要因に基づく設計論が不在 【貢献】錯覚性による現象整理と知覚・認知現象への介入設計論の構成 私たちは,日常生活のさまざまな場面で「錯覚」に出会う.「錯覚」と聞いて一番始めに思いつくのは,エンタテインメントや心理学研究のために作られた,人工的な画像や音声かもしれない.しかし,物の大きさや色に関する錯覚,聞き間違いや見間違いなど,日常の中にも「錯覚」は数多く見出される. 錯覚や錯誤・認知バイアスなどと呼ばれる現象は,人の知覚や認知の特性を知る
Construction and Evaluation of a New Speech Corpus of Japanese Super-elderly Speech Recognition 2022年度研究会推薦博士論文速報 [音声言語情報処理研究会] 福田 芽衣子 (徳島大学 研究員) 邦訳:日本人超高齢者音声認識のための音声コーパス構築 ■キーワード 超高齢者音声コーパス(EARS)/音声認識/加齢による音響特徴量の変化 【背景】加齢による音響特徴量の変化により音声認識率が低下する 【問題】超高齢者のための音声認識モデル学習用データがない 【貢献】超高齢者音声コーパス(EARS)を収集・分析し,改善を確認した スマホやPCなどの普及によって,音声認識などの音声情報処理技術が広く普及してきている.特に近年では,深層学習(ディープラーニング)の登場によって,音声情報処理の精度が飛躍的に向
塚本昌彦(神戸大学) Vision Proの登場 2023年6月に開催されたAppleの開発者会議WWDCで驚きの新製品発表がありました.その名も「Vision Pro」,かねてから噂されていた「AR/VRゴーグル」です.ただしAppleは「AR/VRゴーグル」とは呼ばず独自に「空間コンピュータ」と呼ぶ新コンセプト商品としています.単なる高性能AR/VRゴーグルではない業界を根底から覆す数々の「まさか」があり,今後の成否はともかく画期的な挑戦といえますので,本稿では業界を驚かせた10の「まさか」を紹介します. まさか1:価格は3,500ドル(約50万円) 多くの人が一番驚いたのはこの価格ではないでしょうか? 今秋発売されるMeta Quest 3やその他のVRゴーグルと比べると相当な高価格ですが,HoloLensやMagic LeapなどのARゴーグルと比べると同レベルの価格帯です.後者は
岩崎英哉(明治大学) 今回取り扱うのは,2021年3月に公開された大学入学共通テスト「情報」のサンプル問題の第2問で,プログラミングに関する問題です.この問題は,比例代表選挙において各政党の得票数から具体的な当選者数(議席数)を決定する方法である「ドント方式」を題材としています.現在の日本の国政選挙における比例代表選挙は,衆議院では候補者に順位のある(ただし同順位の候補者を許す)拘束名簿式,参議院では候補者に順位のない非拘束名簿式が採用されており,いずれも少し複雑なシステムとなっています.本問では,候補者名簿の中身には触れずに当選者数だけを求めるという,最も単純な場合を扱っています. ドント方式は,過去には2011年の大学入試センター試験における「情報関係基礎」でも題材とされたことがあります.2006年以降,「情報関係基礎」における情報の処理方法の論理的思考力・問題解決能力に関する問題は,
久野 靖(電気通信大学) おなじみ「教科『情報』の入試問題って?」,今回は,大学入学共通テストの2023年本試験「情報関係基礎」第3問を取り上げます(この問題を含むさまざまな問題のアーカイブは文献1)にあります). なぜこの問題?ということですが,「情報 I」の試験が始まっていない現時点では,「情報関係基礎」の問題が参考にできる問題の最有力候補です.そして,毎回,第3問は「プログラミング」を題材としているので,取り上げてみよう,ということです. そして,特にこの問題は,難しい解法をどれくらい知っているべきか,という悩ましい議論とかかわりがありますので,それについても後半で取り上げます.では,始めましょう. ロープ飛び移りゲームって? この問題では,「ロープ飛び移りゲーム」というものを規定し,その得点を高くするためのアルゴリズムとプログラムを考えていきます.最後には表題にある「動的計画法」(
根本香絵 (OIST(沖縄科学技術大学院大学)/国立情報学研究所) ノーベル賞の受賞者発表は10月恒例の一大ニュースで,インターネットでも世界中を駆け巡ります.ただ,コンピュータ科学・情報科学の研究環境にいると,いまひとつ無関心な雰囲気も漂っていて,いわば隣町のお祭り的な感じでしょうか.ひと昔前,ヨーロッパから共同研究に来たコンピュータ科学の教授が,ノーベル賞メダルチョコレートをお土産に持ってきてくれたことがあり,物理学者の私たちをやんわりとからかったりと,「ちょっと他人事」というのがいい距離感でもあります.物理学者にとっては,ノーベル賞はそれなりに身近で,ノーベル賞が発表されるころになると,「今年の受賞者は?」はよくある雑談のテーマです.今回も,大学のカフェテリアの横のテラスで研究室のメンバとランチをしていると,誰ともなく「明日のノーベル物理学賞は誰だろう」と言い出し,各自の予想話に展開
伊藤 博之(クリプトン・フューチャー・メディア(株)代表取締役) クリプトン・フューチャー・メディア(株)(以下,当社)はインターネット元年と言われる1995年に設立した.インターネットが世の中を根本から変えると気付き,いても立ってもいられず起業したのだが,当時の北海道大学職員時代に世間より一足早くインターネットに触れることができたのが幸いだった.当時は趣味のDTMで音楽を自作していた.DTM(Desk Top Music)機材が公務員のサラリーでも買えるくらいには手軽になっていたので,DIYで音楽作品をつくり,デモテープを海外のインディーズレーベルに国際郵便で送ったりもしていた.海外のDTM仲間が手掛けたDTMソフトウェアの輸入販売業から起業したが,それに限らず,インターネットには音楽業界自体を変える可能性があり,自らそれにかかわってみたいと考えたことが起業に踏み切る主因だった. 当社が
稲垣俊介(東京都立神代高等学校) 今回は,2022年11月に大学入試センターより公開された「令和7年度問題作成の方向性,試作問題等」$${^{1) }}$$ に示された「情報Ⅰ」の試作問題の第4問を解説します. 第4問は「4. 情報通信ネットワークとデータ活用」における「データの活用」分野です. 最後に本試作問題を用いた「情報Ⅰ」の授業による,大学入学共通テストの対策を提案します. 問題の内容と解説 問題文を読んでみましょう。 この第4問は,1日のスマートフォン・パソコンなどの使用時間の1時間未満の人と3時間以上6時間未満の人を比較し,その分析の過程を問題としたものです. 小問をそれぞれ解説します. 問1の解説 問1は表1-Aと表1-Bから分析できない仮説を選ぶ問題です.表と問題文の文章を読み込むことができるかを問われています. 選択肢⓪の仮説は,使用時間が長いグループと使用時間が短いグル
2021年度研究会推薦博士論文速報 [システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会] 橋本 幹生 ((株)東芝 研究開発センター サイバーセキュリティ技術開発センター エッジ&セキュリティ技術開発部) ■キーワード コンフィデンシャルコンピューティング/メインメモリ暗号化&改ざん検証 【背景】コンピュータシステムの管理権限や物理アクセス権限の悪用対策 【問題】メインメモリ情報の暗号化ならびに改ざん検証の実現アーキテクチャ 【貢献】メモリ暗号化対応CPUと改ざん検証対応VMMの提案ならびに実装評価 サイバー攻撃対策は,コンピュータ研究の大きな課題である.現在のサイバーセキュリティ対策は通信経路の不正アクセス対策が中心だが,クラウドの普及にともに,コンフィデンシャルコンピューティングという,コンピュータ内部のメインメモリを対象とした新しい攻撃対策が普及をはじめている. 本博士論文は,
田中邦裕(さくらインターネット (株)代表取締役社長) 私が小さかったころの将来の夢はエンジニアになることで,それを原動力に高専へ進学し,ロボコンに打ち込みつつ,芽が出始めたばかりのインターネットにのめり込み,寝る間も惜しんでパソコンと向かいあった. そんな高専生が18歳で学生起業したのは,自分が運営していたサーバとたわむれ続けることを,人生において持続可能にするための生存戦略であった.いわば起業は手段である. さて,いま世の中ではIT人材が足らないらしく,どこへ行っても優秀な人材をどう育てるのか,どうやって採用するのかといった会話が聞かれる. これに対して感じるのが,いかにも雇う側だけの理論で話されているなということであり,雇われる側,すなわちIT人材の内発的動機が無視されているなということである. 本来,コンピュータが好きな人がIT企業に就職したら,毎日がやりたいことで満たされていて,
杉ライカ(ダイハードテイルズ) 画像生成AIは電子ウキヨエの夢を見るか? こんにちは,ダイハードテイルズ(DHTLS)の杉ライカです.DHTLSは商業出版だけでなくクリエイター自身のSNSもまた重要な作品発表の場と捉え,オンラインに軸足を置いて活動し続けているプロのクリエイターグループで,自作小説や翻訳小説などを,インターネット上で連載したり,各種出版社から書籍としても発刊してもらっています. ここでは,最近登場したtext-to-imageの画像生成AIサービス「Midjourney」を,自分たちのTwitter連載小説でどのように活用しているか,またそこから何を感じたかなどを,簡潔にレポートしてみたいと思います.まず,Twitterで小説といっても想像しにくい方も多いかと思いますので,DHTLSがどのように小説を連載したり(図-1),AI描画の挿絵を投稿したりしているのか(図-2),具
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『情報処理学会・学会誌「情報処理」|note』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く