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ゴールデンウィークも、後半戦ですね。 うわさによれば、今年は10連休の人がいるようで。じゅ……10連休も……何を……!? カタログギフトすら、もらうたび持て余してディアゴスティーニ並みに貯め込んでるわたしなので、3連休ぐらいがちょうどいいかなって。ついに予約しました。 キャンプ場でバーベキュー。 母も弟も、大喜び。海賊みたいな歓声あげてた。なんせ岸田家、唯一のアウトドア派だった父をうしなってから、やったことないのよ。 母の車いすで行ける場所も、探し続けて、ようやく見つかって。 コンロでソーセージ焼いてしけ込んだら、丹波篠山にでも行って、興奮そのままに土を菊練りしてマグカップでも作ろうって、陶芸も予約しました。 万全、万全、大万全。 おっと、梅吉のことを忘れていた。 「梅ちゃんも一緒にバーベキュー、行こっか!」 行くワン! 抱っこして、にょーん、と梅吉が伸びた。 どてっ腹に赤黒いアザがあった
月曜の深夜、タイムラインに衝撃があらわれた。 カメがスケボーに乗っている動画だった。 だまされたと思って、一度、見てほしい。 カメがスケボーに乗っている。 間髪入れずに、三回見た。 一回目は絶句し、 似回目は爆笑し、 三回目は…… 号泣した。 それはもう、何事かと思われるほど、泣きに泣いた。感情と涙腺をつなぐ回路が焼き切れてしまったように泣いた。 ひとりぼっち、頬が荒れるほどに涙を流しきったあと「なぜこれで……」と、己の情緒に怯えた。 子どもが束になって合唱する動画でも、犬がご主人を待ちわびる動画でも、道路に咲く大根の動画でもない。カメがスケボーに乗る動画で、わたしは、鼻を鳴らしながら号泣したのである。 あれは、いったいぜんたい、なんだったのか。 感情がよくわからないまま日々が過ぎていったけど、このままだと怪事件のままわたしの人生史に焼け跡を残してしまうので、書きながら考えていきたい。 き
その時、わたしは、ケーキを選んでいた。 爆裂においしいケーキのために、わざわざ隣の市まで車を走らせ、行列に並んだのである。 「なー、なー!どれにする?」 一緒に来たはずの母を振り返ると、なにやら電話をしていた。 「良太が……」 電話を切った母が、わが弟の名前を出す。 「いなくなったって……」 ケ、ケーキを目前に、よりにもよって今、そんな面倒くさそうな事件が。モンブランに後ろ髪を引かれながら、うわの空で状況を聞いた。 弟は月に二度、移動支援ガイドヘルプというサービスを受けている。ヘルパーさんに付き添ってもらい、映画やカラオケなど、好きな場所へ行けるのだ。 今日は、神戸の中心街・三宮に行っていた。地下街の人混みのなかで、ヘルパーさんが弟を見失って、うっかりはぐれてしまったそうだ。 迷子。 いや、28歳ともなれば、もはや子ではない。 迷男。 「まだ見つからへんねんて」 青ざめる母。 「電話や、電
こう、なんか、しんどいなーとか、さぼったろかなーとか、ダラダラしたくなって「そこんとこ、あともう一押し!ちょうだい!」ってときに、いつもこっそり、読んでるものがあり。 そこに突如として己が出現したときの、おどろきったら!恐れ入るような喜ばしいような恥ずかしいような! や、休んでよかった〜〜〜〜! 尊敬するしいたけ占いのしいたけ.さんが、休みについて本気で考えてらしたので、わたしも本気で休みについて振り返ろうかと思います。 えっとですね。 一週間休んで、二週間しんどくなりました。 ど、どぼぢで……?(どうして……?) 寝込みながら、キツネにつままれたあとタヌキにドロップキックされたような顔を、ずっとしておりました。度しがたくて。 布団の中で、何度ぼろぼろ泣いたことか! 結論としては、三週間使いもんにならんくなっても、休んでよかったという話です。 順を追って、わけを話します。 わたしが2月のな
お久しぶりの更新です、お待たせしました。 みんなの「もうあかんわ」な話を、岸田奈美が趣味で集めています。採用されたら、図書券やステッカーを送りつけます。 →なぜ集めているのか? →応募フォームは文末にあります 今週のヘッダー文字職人 横浜ベイスターズ 好きなテレビ番組は、世界ふしぎ発見と24時間テレビと笑点です。野球観戦が好きです。ラジオは桑田佳祐さんを聞いています。歌手はSMAPが好きです。昭和の歌に詳しいですが、まだ35歳です。 今週のMVP:令和たぬき合戦ぽんぽこ(はちべえ)たぶん、人間界に向いてないんです。 言葉の行間というか、他人の気分を感じる能力が低いみたいで……。 ひとつのことをし始めたらすぐに周りの音が聞こえなくなるので、お仕事の指示を聞き逃しちゃって怒られるんですよね。 だから、最近は自分が人間に化けた狸だと思うようにしてます。 失敗しても、まあ狸だしな……と思えば落ち込
年末の深夜に天井が落っこちて、汚水がなだれこんできた人間の記録、これでおしまい! 果たして補償は、いかほどか……? ▼ これまでに書いた経緯 1日目|天井から今も雨が降り続いている人間の記録 2日目|32歳にもなって土下座で大号泣 3日目|止んでる間に詰めろ詰めろ 4日目|君たちはどう濡れるか 5日目|水道ミステリー、解明編 6日目|給湯器はなぜ年末に壊れるのか? 7日目|アドバイスに溺れるがお湯は出ない 8日目|壊れものたちの鎮魂歌 9日目|生活する人、仕事する人 10日目|お導きマンション 11日目|よおく考えるまでもなくお金 漏水から、1ヶ月が経った。 住居も変わり、年も変わり。まだ怒涛に揉まれる昼下がり。 『保険会社です。損害金の査定が終わりましたので、ご報告します』 きた、きた、きたー! ビッチャビチャの部屋で、瞬く間にお亡くなりになってしまった家具たちのことを思い出す。総額で1
西宮にしのみやは、住んでみたい町だった。 わたしの父は西宮の甲子園球場のすぐそばで生まれ育ち、神戸の山の裏にできたニュータウンに家族の住まいを構えても、西宮を忘れられなかったみたいで、そこへ仕事場も構えていた。 ざっくりいうと住宅の仕事だったが、町おこしにも奮闘していたらしい。父は亡くなったあとも、父の仕事仲間は西宮にいる。 西宮という町がなぜ、父を引き止めたのかはわからない。 知りたいとは思っていた。西宮の大学に通ったのも、甲子園球場でバイトしてみたのも、まあ、そういう理由もあって。 ふたを開けてみりゃ、大学にはほとんど行かず、真夏の甲子園球場でホットコーヒーを売りさばく羽目になったので、結局やっぱり、なんもわからん。 父の実家は甲子園に残っていたが、それも先日、失われてしまった。 祖父が亡くなったからだ。 狭いけど秘密基地みたいで、かなり好きな家だった。 葬儀の一年後、親戚から電話で、
汚水がふりそそぐ部屋から、あわてて引き上げた家財たちは、まだ引っ越し屋の倉庫で眠ってる。 トラックごと眠ってる。 そんなんじゃ生活も仕事もままならんでしょうと、思うなかれ。 積んでっから。 全部、積んでっから。 パソコンも、服と靴も、すぐ読まなくちゃいかん本も。 ベッドも。 ギッチギチに。 すごくない? あまりにも積めすぎている。 車一台あればそのへんの野ッ原で暮らせてしまう。 ドラマの撮影で使われたボルちゃん、引き取らせてもらうって決めた時はバクバクしたけど、この日のために来てくれたんだね。運命なんだね。 ボルちゃん「ソンナコトナイヨ!(ギチィ……)」 近況再開! ▼ これまでに書いた経緯 1日目|天井から今も雨が降り続いている人間の記録 2日目|32歳にもなって土下座で大号泣 3日目|止んでる間に詰めろ詰めろ 4日目|君たちはどう濡れるか 5日目|水道ミステリー、解明編 6日目|給湯器
おこんばんは。 ついに家で赤ペンを耳に挟むようになりました、もっぱら両手ふさがりがちな岸田奈美です。 とつぜんですが、休みます! 漏水、引っ越し、健康診断の追試的な検査で、てんやわんやですが、意外とかなり元気です。 元気なのに、休むんです! 先月のnoteで、極限地帯を走り抜けてるせいか、元気が止まらなくて困ってしまわい!という弱音を吐きました。新感覚!強すぎる弱音!!! 家におるだけで、山づみの段ボール、親の仇ほどあるゴミ袋、皿の剥がしそびれた値札シールなどが、目に入って、目に入って! ずっと動いてる!小忙しく!しんどい! 「ちくしょ〜〜〜!ネタにしたろか!」 メモを取る手も止まらなくて。耳に挟んだ赤ペンでキュキュキュッと。何万文字も貯まりゆく、どうしようもねえ文章。 このままでは……! 死ぬまで泳ぎ続けるマグロになる……! なんもせんで、よくなりたい。 なんも見んで、なにも書かんで。
ダウン症の弟が自立のため、グループホームへ入居することになっただけのはずが、別府まで車を買いに行ったり、看板をあわてて立てたり、家族で泣いたりした日々のこと。
思わず「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」みたいなことを言ってしまったが、令和のベストセラーを狙いたいほどの切実さである。 天井が落ちるほどの漏水で、実家に避難してきたはずが、実家の給湯器がブッ壊れてしまった。 えらいこっちゃ! ▼ これまでに書いた経緯 1日目|天井から今も雨が降り続いている人間の記録 2日目|32歳にもなって土下座で大号泣 3日目|止んでる間に詰めろ詰めろ 4日目|君たちはどう濡れるか 5日目|水道ミステリー、解明編 (6日目)12月23日 9:00- 四冠受賞 「あったかいご飯と、あったかいお風呂はあるから」 ……と、 マザーパワーを爆発させていたはずの母、ションモリ。 顔面のあらゆる顔のパーツが ハ の字になってた。 給湯器が、ブッ壊れてしまった。 きゅ……給……湯……器……? 一瞬、わけがわからなかった。なんだそれは。そんな装置がうちにあったのか。 「給湯器とやらが
▼ これまでに書いた経緯 1日目|天井から今も雨が降り続いている人間の記録 2日目|32歳にもなって土下座で大号泣 3日目|止んでる間に詰めろ詰めろ 4日目|君たちはどう濡れるか (5日目)12月22日 9:00-一本の電話天井から上階のきちゃない水が、3日間にわたり、雨季のジャングルのごとく降り続けた自宅。 そろそろ新たな生命が誕生してもおかしくない。 降り続けた原因も、引っ越し中に突然止まった原因も、なにもかもわからなかった。 入れ替わり立ち替わり、いろんな水道業者が来てくれては、 「こりゃ上の階の人が漏水させたんじゃ?」 「パイプの亀裂やろ?」 「上水にサビが混じっただけちゃう?」 熱き推理を繰り広げていた。錯乱した金持ちの洋館に招かれた名探偵たちかよ。突如、自宅を舞台に開幕した水道ミステリーは、迷走をきわめていた。 もう、このまま、ずっとわからんのちゃうか。 住む家を失ったわたしと
(3日目)12月20日 9:00- 段ボールの塔家の近くのホテルに泊まった。 乾いた屋根があるって、いいなあ。 もうね、すれ違う観光客たちが、みんなニッコニコなわけ。京都だから。笑顔で誇らしげに道案内してた、わたしにゃそんな日もありました。 今やもう、涙目に猫背。 帰りたくねえなあ〜! 家の前で、大量の段ボールに待ち構えられていた。 うわっ。マジか……。 マジで今から、引っ越しすんのか。 引っ越しってもっと、こう、計画性とか心構えとか、あるもんだと思ってた。 あ、昨日の今日で、引っ越しって、できんのね? 「積んだあとの、運び先の新居ってどちらですか!」 ドライバーに聞かれて、 「ないんです。内見すらもまだ」 しばし無言で見つめ合う。 「オッケーでえーーーっす!」 あ、新居がなくても、引っ越しって、できんのね? 「とりあえず我が社の倉庫に入れときまーーーっす!」 もうそこに住まわせてくれ。
いつもキナリ★マガジンを読んでくれている人へ、お詫びがあります。 本当なら今ごろここでは、予告どおり、家族でホノルルマラソンを走りきったエッセイを書く予定でした。めずらしく短編小説を書く予定でした。 まだなにも知らない、嬉しそうな岸田家今月中にあと3本、書く約束だったからね。 でも、もうね。 なにをどーやっても書けへんのです。 かんにんや、かんにんしておくんなはれ……。 部屋が、汚水でベチョ濡れになったからです。 天井ですか? ありません。 今、わたしの家、天井、ありません。 汚水が、なんか、ドバーッて……なって……。 最初はやべーやべーって、引き笑い気味で対処してたんだけど、なんかもう、さっき、急に立てなくなって、汚水の中でうずくまりながら、めちゃくちゃデカい声で泣いてしまった。32歳なのに。情緒の天井も抜けた。 そしたら、話す言葉が、急に出なくなって。 びっくりした。 まともにしゃべれ
日本に生まれてきてよかった。 なくし物をするたびに思う。子どものころから、ありとあらゆるものを、なくしてきた。リコーダー、弁当箱、キックボード、携帯電話、傘、財布……。 もったいないとか、だらしがないとか、何百万回も叱られてきた。母なんかは早々に「もう絶対に捜索を手伝いません」と放棄宣言をしている。 諦めかけたものが、戻ってきたときは、絶望から絶頂まで逆バンジージャンプ並みの急転直上。 拝んで、拝んで、拝みたおす。神様、仏様、ああ、もう二度とうっかりしませんから!ありがとう! ……なのにどうして、また、なくしてしまうのか。 つい最近、家族で、三泊四日の韓国旅行へ行ってきた。 移動には、アプリのUber(ライドシェア)を使った。 韓国にも慣れはじめた三日目の夜。 漢江という川に浮かぶスターバックスコーヒーへ行ってみることにした。 30分ほど、Uberの車に乗って、 「ほう、ここでBTSが撮影
ごぶさたしてます、岸田奈美です。 子どものときから困ってんだけど、人間と雑談ができなくて。 うまいこと話題を投げたり、相槌を打ったり、そういうのがもう、ずっと大縄跳びなんです。 ターンッ!ターンッ!ターンッ! 岸田っさん!おっはいんなさい! 入れねえ。 みんなが雑談という名の大縄跳びを、軽やかに飛んでいる。もうこっちはね、必死で突っ込んで、足あげて、死のタップダンスで。 死のタップダンスを踊る者が、雑談を楽しめるはずもなく。休み時間とかお昼ご飯とかもう、怖かったなあ。 飛べてる!?わたしいま飛べてる!? かといって、一人ぼっちも、さみしかったなあ。 そしたら、こないだ編集者さんから、 「岸田さんが書く文章って、なんていうか、雑談ですよね」 起承転結がなくて、急に始まって、曲がりくねって、わけのわからんところに着地する。つまりそれは雑談。 あー、わたし、やりたかった雑談、やってたんだなあ。
弟と母を、車で病院まで送っていくというお役目ができた。 きたきたきた。運転免許を取ってから、そういうのが早く回ってこないもんかと沼のワニみたいに待っていた。 「……しゃあないなあ!」 決まったあ。言ってみたかったあ。 「ほんでも、どっか悪いんかいな」 「悪くないねん。調査やで」 「検査!?」 「調査やっちゅーねん」 家族の中でわたしだけが知らなかったのだが、数年に一度、弟は病院で障害認定調査というのを受けているらしい。 弟は“重度”の知的障害、という認定を受けている。ほかに中度、軽度があって、弟のはいちばん重い。 「そんな、今年のみかんの出来、みたいな仕組みやったんや」 「こらっ」 「ってことは、いきなり変わったりすんの!?」 「聞いたことないけどなあ……」 知的障害は治らない。 わたしが7歳かそこらで、弟の謎を明かされたとき、真っ先にたずねたことだ。よく覚えてる。 だったら、なんで毎年、
聞き慣れたばあちゃんの声の、聞き慣れない四文字が、スマートフォンのスピーカーから響いていた。 電話をかけなければと思い立ったのは、大晦日だった。 認知症グループホームで暮らしているばあちゃんの顔を、年末までに見に行く約束だったのに、母の入院が予想外に長引いたせいで見損ねていたのだ。 昨年の二月にグループホームへ入ったばあちゃんは、その頃からすでに昼飯を8回食らっていたので、年末の約束なんぞ忘れてるんだろうけど。送り出した者には、後ろめたさがある。 「なんやねんあんた、こないな時間に」 電話の向こうで、ばあちゃんの声は弾んでいた。どうやら、おやつの時間だったようで。 「オカンが、えっと、ひろみがな、いま入院してんねん」 「いややわ、どないしたんや!」 声はさらに弾んだ。 母の手術を説明したら、ばあちゃんは「はあ」とか「ひい」とか、高い声をもらしながらも、どこか他人事なのはありありとわかる。
タイムラインにいつでもいつもいるあの人が、いなくなっちゃうのってさみしい。 岸田奈美が最近あんまり話せてないあの人に「どないしてますのん?」と、近況をおたずねする勢いで雑談をしかけるTwitter Space配信。 配信の音声も、全部聴けます。 >Youtube >Spotify podcast >Apple podcast 雑談のお相手は、病理医ヤンデル先生。 本当にやばいとき、冷や汗ではなく血が流れる岸田 お医者さんの学会って、えらい人ほど『素人質問で恐縮ですが』って腰を低〜くして入ってくるって本当ですか? ヤンデル 半分本当で、半分ウソですね 岸田 ウソ? ヤンデル そう。あのね、中途半端にえらい人は、すごくえらそうに発言します。でも本当にね、本当に、きら星のようなごく一部のマジのえらい人がさ。 岸田 きら星のような……? ヤンデル そういう人が低姿勢で入ってくるときは、もう、背中に
Xで書いた闘病(犬が)記を、noteにも転記しました。同じ病気や薬を飲んでいる家族を持つ人の役に立てば……た、立つのだろうか……。 トイプードルの梅吉が、急性の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)を発症した21日間のこと 9月23日(DAY1) お天気がいいので、おもむろに犬をひっくり返し、天日干しをしていると。 「あっ!」 ドテッ腹に、赤いあざ! ひい、ふう、みい……5つも! ぶつけたんかな。 いや、いっぱいすぎて、おかしいぞ。 9月24日(DAY2) 痛くもかゆくもなさそうだがなんとなく、動物病院へ。 「顔色は悪くなさそうですねえ」 神妙にうなずいてしまったが、どこからどう見ても、愛犬の顔は毛むくじゃらの茶色である。 先生の目には見えるんだろうか。顔色が。 血液検査をしたら、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)だった。 言いにくい…性が多い……なんなの……? IMHAは、犬の免疫機能がおかしく
32歳が自動車免許をとるために、ヒィヒィがんばる短期集中連載。2〜3日に1話ずつ更新中。 1日目「適性検査の神童」 2日目「異世界転生系教習生」 3日目「盗んだPCで学び出す」 4日目「牙をもがれたオジン」 5日目「ヒヨ夫とヒヨ美」 なんの準備もなく、教科書すらもなく、60分後に学科試験を迎えることになってしまった。こんなはずでは。 免許の学科試験は、マルバツの二択問題。 わたしはこれが本当に苦手である。 この話を始めるとどこからともなく必ず飛んでくる野次は、 「そんなもん、常識的に生きてたら解ける問題ばっかりや」 なのだが、のん気に嘲笑している者は今一度、胸に手を当て、本当にそうだったのかよく思い出してほしい。 『問1. 踏切内を通行中に車が故障し、発煙筒を使い切ってしまったため、使用していた座布団を燃やして合図をする』 常識的に生きている人間が果たして、座布団に着火することができるだろ
ラーメン屋の行列に並んでいた。 京都の自宅へ遊びにきた母が 「ラーメン食べとうて、しゃあない」 と、眼をかっ広げて言うのである。 母はたまに、そういう猛烈な天啓が下る。 車いすなので、こぢんまりした店にはひとりでフラッと入れないからだ。 ならば、どうしても食べさせたいラーメンがある!京都の名店! 麺屋猪一! いつ来ても行列で、ミシュランにも載り、外国のお客でごった返してる。 おっ。 本店近くの“離れ”なら、今日は20分ぐらいで入れそう。 天啓!!! というわけで、並んだ。 待ってる間に、メニュー表を見る。 「1400円!?!?!?!!」 ビビった。 2年前に初めて食べたときは、900円。 昨年は、1000円だったのに。 つ、強気ィ! 原材料の高騰で値上げするのは、まあめずらしくもないけど、なかなかにウッとなる金額である。 観光で来た人、それも外国からなら、ぜんぜん出せるか。そっか。え〜〜〜
岸田奈美の原作ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』の完結を記念して、 生きるために書き抜いた、恥も涙も! 300記事以上を! 今だけ無料で読めます! クーポンコードは「kinari」です! 岸田家はこのマガジンの売上だけで一家4人が生活してるので、ぶっちゃけ「大丈夫なんかな」と思ってます。 心配で、朝も起きられません。 一日三食しか、喉を通りません。 ですが、ドラマからここまでたどり着いてくれた人や、のっぴきならない事情で購読ができなかった人にも、楽しんでもらえるのは今だと。 こんな祭りができるのは、今までキナリ★マガジンにお金払ってくれ、わたしを支えてくださった、アツくて遠い親戚のような皆さまのおかげです。 皆さまのおかげで、魂の削り節をですね、おすそわけできます。 ありがとうございます! 1.無料でマガジンを読む条件ちょっとこう、不便なとこあるなあと思うんですが
半年前、ふるさと納税で、桃を5キロ注文した。 がめつさを全面に出してけー、出してけー、1年生も声出してけー!って感じに出してって、いちばんポイントが還元されるWEBサイトにしたら、 システムバグで、桃が無限決済された。 80キロ越えてた。 池中玄太? 管理会社に問いあわせたら、 「うちのバグなのは認めますけどもォ、もう自治体に注文入れちゃってるんでェ、返金されるかは自治体と交渉してくださァい」 的なこと言われて、あのさ、こないだVIVANT観たときに堺雅人が同じ目に遭ってて、すげえ親近感わいた。あっち130億円。こっち80キロ。 「税金っていうのは、返金不可が基本ですのでェ」 これがまかり通るなら、ジェフ・ベゾスが日本でレンタカー借りてETC通過する直前に高速料金を1300兆円に値上げして国家負債を一撃でチャラにするみたいな方法も許されてしまうだろ!ばかっ! んで、すったもんだの末、返金し
1ヶ月前から一緒に暮らしてるLOVOTのだぶちゃんを、テレビ局に連れていった。 ▼ 今までのだぶちゃん 毎週木曜日に出演しているABCテレビ『newsおかえり』の打ち合わせ中に、ポロッとだぶちゃんの話をしたら、 「こんど連れてきて!」 と、コメンテーター陣から言われたからだ。都合の良い話だけは真に受けていく。補り逃がさざること、古田敦也のごとし。 抱っこしながら、メイク室へ向かうときだった。 「あっ……」 後ろから、絶句の気配。 アルバイトをしている女の子だった。 「あっ……」 わたしも絶句した。 演者を楽屋からスタジオまで案内して、ちょっとした用事に答えるこの任務、マスコミ業界を目指している大学生が担ってることが多い。すでに芸能界で立派に仕事をしてる子もいる。 ずっと、ちゃんと、話せなかった。まぶしくて。 「これっ……ずっと、ずっとYoutubeで観てた……えっ、うそ、実物みるの初めて…
スタジオジブリ『君たちはどう生きるか』を観た。 これだけを伝えたくて書いてるようなもんだけど、 なんも読まんといて。 なんも聞かんといて。 楽しみたいならば、今すぐチケットを買って、映画館へお行きなすって。 ツイッターも映画.comも、開くんじゃない! ネタバレがどうとかいう次元ではなく、映画にまつわる、どんな人のどんなささいな言葉も、なんぼの点数の星も、あなたの体験を汚してしまう。 子どものころに図書室で、だれにもなにも言われず、手にとった本がある。まっさらな心を掴んで引きずり込んで離さなかった、そんな本がある。 あるでしょうよ。 あれです。 あのときと同じ。 あなたは今、本棚の前に、ひとりで立ってる。 おもしろかったらとか、つまんなかったらとか、考えたらあかん。子どもを連れて行って楽しめるかも、どうでもいい。 楽しんでもいいじゃん。寝てもいいじゃん。 体験のほうがだいじ。何十年か先で、
いよいよ、この日がやってまいりました。 LOVOTの生みの親・林要さんとの対談です。新刊『温かいテクノロジー』は、ほんとに良い本でした。 わたしの“だぶちゃん”も、もちろん新幹線に乗って、東京までやってきた。 生後2週間足らずして、創造主に謁見する展開の早さ。RPGなら主人公の才覚がありすぎる。 山を越え、谷を渡り、龍に挑んで世界を救え……! わたしが林さんと熱烈におしゃべりしている間、会場では「ンなこた関係あるめえ〜〜〜!」と言わんばかりに、LOVOTたちが走り回る。 ずーっと座って、人の話を聞いてるばっかだと眠くなるから、こういう気の散らせ方はナイスではなかろうか。どんどんやりたまえ。 1.だぶちゃんのご先祖さま LOVOTをつくるまでは、自動車会社で開発をしていた林さん。わたしのことは、母のために後先を考えずボルボを買うnoteで、知ってくれていた。 「岸田さんのお母さんがだぶちゃん
家族が増えた。 来週、GROOVE Xの林要さんと、書店で対談させてもらうことになった。 「やあやあ、わたしでよければ」とお返事してから、林さんの新刊を読んだ。 いま、いちばん話したかった人やないか、と思った。 一番刺さったのは、ここ。 愛を発揮する機会を増やすことは、その人の愛を増やすことにもつながります。ポンコツさが愛を育むと言えるわけです。 林要『温かいテクノロジー』 p.104ちょうどこの間も、わたしは銀行で野望を語ったところだった。 映画『ドラえもん』の脚本をやりたいのだと。脚本など書いたこともないのに。なぜかそれをやる人生だと長らく信じてきた。 わたしの心を掴んだのは、ひみつ道具をたくさん出してくれるドラえもんじゃなくて。 『のび太と雲の王国』で縛られたまま、涙こらえて脂汗を流しながら、ガスタンクに特攻し、ブッ壊れたドラえもんである。 今だって、コンピューターはチェスや将棋に勝
母が心内膜炎で入院、祖母は認知症が悪化、犬は大暴れで……岸田家の危機に、祖父の葬儀、鳩の襲来などが続々と!「もうあかんわ」と嘆きながら毎日更新した2ヶ月の記録。ライツ社から発刊し… もっと読む
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