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12月19日 追記 こちらの記事が、とんでもねえ経緯と熱量で、英語ほか10言語に翻訳されました! 英語翻訳された奇跡の舞台裏note 英語翻訳版の記事 全財産の内訳は、大学生の時からベンチャー企業で10年間働いて、したたり落ちるスズメの涙を貯め込んだお金と。 こんなもん、もう一生書けへんわと思うくらいの熱量を打ち込んで書いた本の印税だ。 それらが一瞬にして、なくなった。 外車を買ったからだ。 運転免許もないのに。 「調子乗ってんなよお前」と思った人も、「どうせ“わたしのマネをすれば秒速で車が買えるんですよ”ってやばいビジネスに誘うんだろ」と思った人も、一旦、聞いてほしい。 わたしは、わたしなりに、誇らしい使い方をしたのだ。 あまりにも誇らしいので、一連の流れを12月6日放送の「サンデーステーション(テレビ朝日)」で取材してもらうことになったけど、時間が限られているTVでは、わたしの本当の思
岸田家の歴史を揺るがす大事件が起きた。 わが弟が、莫大なお金を稼いだのである。 大金とは、彼が三十年働いて手にするはずの金額だ。 それを数時間で。 田舎の片隅にある剥がれたフローリングの我が家から、絶世の富豪が爆誕した。血統書のない梅吉(犬)も、高貴なチャウチャウに見えてくる。 弟は生まれつきダウン症なので、障害のある人が集まる福祉作業所で、平日の朝から夕方まで働いており、日給は500円だけど昼食が450円なので、手取りは50円だということは、一旦、横に置いておく。 富豪が爆誕したのだ。 (※賃金は弟の障害の程度、作業所が受注できる業務の量、通っている人数などの兼ね合いがあり、弟も働くというよりは、みんなで喋ったり、散歩したりすることをなによりの目的にして通ってるので、ゆるく受け入れてくださる福祉作業所のみなさまにとても感謝しています) さて、その気になる稼ぎ方であるが。 手書きカレンダー
わたしの弟・岸田良太には、生まれつき知的障害がある。ダウン症だ。(詳しくは「弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった」に書いた) 言葉がうまく伝わらない、発音もわかりづらい、みんなと同じことができない、いつもぼーっとしている。 でも、だめなところばかりじゃない。 玄関に靴を脱ぎ散らかし、母からいつも「あんたはムカデか」とお叱りを受けるわたしに比べ、よっぽど弟の方がきれい好きで、しっかりしてる。 難しい言葉はわからんが「ありがとう」「こんにちは」だけはハッキリ言えるので、すれ違う近所の人たちに挨拶と愛想を振りまきまくる弟は、愛されている。 先日もこのわたしを差し置き、内緒でからあげクンをオマケしてもらっていた。 わたしと弟で同じふるまいをしても、わたしは「アホ」で片づけられ、弟は「お調子者」と呼ばれる。後者がちょっと得をしている気がする。 かれこれ24年間、弟はずっとそんな感じで、楽しそ
お下がりの洗濯機をいつ持っていけばいいかという連絡を母にしたら、いま病院のレントゲン検査にきているとのことだった。 心臓に人工弁を入れている母は、“念のため”の検査がやたらと多い。いつも飄々とした外科医の先生が「うん、今日も異常なっしーん」と壁に貼りつけた検査の書類を見ながら、もう当り前に決まってたことかのごとく言ってくれるのだが、超弩級な心配性の母は、いつもあれこれと質問をする。 その質問が、なんか、天王寺動物園のトラの背中にマウンテンゴリラが乗って檻から逃げ出した想定の避難訓練というか、とにかく「そうはならんやろ」と言いたくなるような想像の産物なので、母はだいたい「そうはならんのですよ」と先生に笑われて、すごすごと診察室をあとにすると言う。 「もう病気はいやや、ピンピンコロリがいい」 母が電話で、さめざめと泣いた。 「すでに病気で二回死にかけとるから、あなたの場合はピンコロ ピンコロ
2023年2月3日、日付が変わるギリギリで思い出した豆をひとりで、鬼のお面をしながら、四方八方にまき散らしていたときでした。鬼みずから。少子化。 「岸田奈美さんのエッセイが、難関中学の今日の入試問題に出ました!」 なんですって! 調べたところ、東京の筑波大学附属駒場中学校だった。都内……偏差値……1位……!? 昨年は、京都大学医学部の入試でミャンマー行きのエッセイを、灘中学校の模試でバズった母のエッセイを使ってもらった。偏差値が、偏差値が軽々とスキップでわたしの頭を飛び越えていく。 出題されたのは、光村図書「飛ぶ教室 第65号(2021年4月発行)」に寄稿し、「ベスト・エッセイ2022(2022年8月発行)」に転載されたエッセイ。 ダウン症の弟が、ガラスを割った罪を、近所の子どもからなすりつけられそうになったときのこと。なつかしい。 設問も一緒に、読ませてもらったから、解こうとした。 結果
これは、あなたのために書いている。 春から大学生や社会人になって、新しい環境にドキドキして。 大変なことが起こっている世の中で、将来や収入に不安を感じて。 家族や友人のいない都会で、漠然と寂しくなって。 そんなあなたのために、書いている。 ちなみにわたしは、このどれにも当てはまらないが「明日の運転免許試験の練習のために路上教習を受けに行ったら、縦列駐車に20回以上失敗して“もう勘でいきましょう”と教官から冷静に言われ、ヘトヘトに疲れきり、自由が丘の裏路地の階段でうなだれていた」せいか、そんなあなたに見えてしまったらしい。 はじまりのお姉さんたち 「すみません。いまから友だちの集まりっていうか、ちょっとしたホームパーティがあるんですけど、バースデーケーキ買えるところ探してるんです〜〜〜!このあたりで美味しいケーキ屋さん知りませんか?」 顔をあげたら、きれいなお姉さんが二人いた。 まず知らん人
キナリ★マガジンで5ヶ月間、10万文字にわたって連載してきた「姉のはなむけ日記」を、9000文字にギュッとして書いた総集編です。全文、無料で読めます。 ゾッとした。 この二年間で、ばあちゃんは認知症になって施設で暮らしはじめ、車いすに乗っている母は心内膜炎で死にかけ、わたしは会社をやめて作家業についた。 ダウン症で4歳下の弟だけは、実家で暮らし、福祉作業所へ通って手仕事をし、マイペースを貫いていた。 ふと立ち止まって、ゾッとしたのは。 この先、わたしや母の身になにかあれば、弟がひとりぼっちになるということ。 わたしですら、ばあちゃんの介護がはじまったとき、役所で福祉の手続きをしたらあまりに面倒でややこしく、泡吹いて倒れそうになったのだ。 障害があってうまく話せない弟は、ちゃんと頼れるんだろうか。 いざというときに頼れる先は、多いほうがいい。弟は26歳。いい人間関係ををつくるには時間がいるの
※この記事は、後述の理由により、11月8日(月)23:59まで公開していました。しばらくマガジンのアーカイブとして読めます。 ※死を煽る内容ではないですが、「死ね」という言葉が頻出します。2021年11月8日(月)15:02追記:わたしが一番祈っていた形で、ここに登場する方々のもとに届きまして、もしかしたら先方の優しさかもしれないですし、そりゃそうだと思うんですが、ものすごく、ものすごく深い理解と希望を示してくださいました。届けてくださったみなさん、ありがとうございます。今年の10月、わたしがTwitterで投稿したダウン症の弟の写真に、「ガイジ(障害児)は生きる価値なし死ね」と返信をした人がいました。 その人のアカウントは、わたしだけではなく、障害のある人たちを手当り次第に攻撃するために作られていました。 それから、その人とご家族と、ダイレクトメッセージでやりとりをしました。返信について
ここには、7月22日15:29〜22:00まで、小林賢太郎氏の東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式のショーディレクター解任の一報を受けて、いちファンとして、過去にnoteで彼の作品を熱烈に紹介した作家として、思うことを書いて、公開していました。 解任にいたる判断には納得しているものの、どう受け止めればいいのか言葉にできず、戸惑って苦しんでいるわたしのようなファン、そして、いつもわたしの書くものに寄り添ってくれる読者のみなさんへ向けた内容でした。 小林賢太郎氏の解任の判断に異議を唱える内容でも、彼の活動を擁護する内容でもなく、ファンとしてコントの存在を認識していたわたしがどんな意識を持ちたいと願うかという差し出がましい内容でした。 決して短くなく、読みやすくもない文章だったと反省していますが、貴重な時間を費やして最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございました。 SNSで記事が
2023年6月25日 追記 マガジン整理してて入れ直したら、更新通知扱いになってしまいました…。公開時から内容変わってません、すみません。 ※ここには2020年7月28日19:06まで「一世一代の大告白を受けた」という記事がありました。たくさんの人に読んでいただきましたが、24時間で消えるからこそ書けたものだったので、ここは跡地となります。
仕事で札幌へ行く用事ができたので、いま空港にいる。 京都からだと、伊丹空港までリムジンバスで一時間。関西空港までだと十五分ほど遠くなるし運賃も倍になるけど、こっちの方が航空チケットが安かったので、関西空港を選んだ。 空港までのリムジンバス乗り場は、京都駅の八条口にある。 八条口といっても、タクシーのロータリーから遠い位置にあるので、市街からタクシーで行く人は「八条口まで」じゃなくて「アバンティ前まで」って伝えた方がおすすめ!わたしみたいに時間ギリギリになって、息を切らして駆け抜けた道を振り返りたくなければな! 空港までの道のりをゆっくり歩けた記憶がないので、いつもどっかでキャリーバッグを死体のように引きずって走っている。心斎橋筋商店街の店先でチェーンに繋がれて投げ売りされてる安いやつだと一瞬でコロコロがお陀仏になったし、なにより空の状態でも重いので、わたしの持ち物のなかでもキャリーケースは
新作を月4本+過去作300本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくための恥さらしマガジン。購読してくださる皆さんは遠い親戚…
最後まで読むと、なんと読者プレゼントなるものがあります。あと本屋さんに勤めている人にもお願いしたいことがあります。3月13日追記)広告の掲載エリアは、東京版(埼玉・神奈川・千葉の一部を含む)を予定しています!見れない地域の方が多いので、見れた方はぜひ、写真などUPしてくださると嬉しいです! 人生で一度は、札束の風呂に肩までつかりたいとまでは言わずとも、お金の使いみちに悩んでみたい。 みりんと、みりん風調味料の値段を見比べて、いつも後者を手にとってしまうわたしは、常々そう思っていた。 そのわたしが、まさにいま、お金の使いみちに悩んでいる。 こんな日が来るとは思わなかった。 なんのお金かというと「全財産を使って外車買ったら、えらいことになった」というnoteを書いたら、読者さんたちから集まったサポートだ。 (※母の入院にともなってガッと増えたサポートは、もちろん母の療養生活と祖母と弟のために全
『いたいよー』 入院している母からのLINEだ。 早朝、朝、昼、晩、深夜。時報のように送られてくる。 『いたい、なんもできない、つらいー』 開腹手術を受けて、一週間。まだ傷がじくじく痛むという。 『わたしがいま一番やりたいこと、わかる?』 『わからん』 『寝返り』 ごろんごろんもできず、車いすにも乗れず、ひたすら腹の痛みを耐える母。 『起きるのもしんどい、ごはんも見たくない。ずっといたい。ちょっとでも気を抜いたら病む』 病んでるから入院しとるんやで。お見舞いも禁止されている今、わたしにできることは『そうかあ』『かわいそに』と、相槌を打つぐらいだ。 それぐらいしか。 相槌すらもバリエーションが枯渇しはじめた。励ますために新しいLINEスタンプを買ってみた。根気よく励ます方も、なかなかしんどい。 そんなある日。 入院先の病院の厨房に、緊急の修理が入った。 ただでさえ、そうそう美味しいとは言えな
2週間とちょっと前に「全財産を使って外車買ったら、えらいことになった」というnoteを書きました。タイトルで、話がほぼ終わっとる。 年の瀬のクッソ寒くて、クッソ忙しいなか、80万人が読んでくださいました。そして、サポートという応援のお金が1500人から届きました。 令和のクリスマスキャロルは、ここにあったんや……! 「おもしろいやんけ」と思ってくださった気持ちが、天にも届いたのでしょうか、普段はここぞというタイミングでありえない爆運をダメな方向へ炸裂させてしまうわたしのもとに、何ごともなくボルボが納車されました。 去年のわたしだったら、ストリートファイター2のボーナスステージ並にボルボがボッコボコに破壊されるなにかを発生させていました。みなさんのおかげです。 さて。 みなさんからいただいたお金ですが、ボルボの購入代、改造代、車検代に充てるのは、ちょっと違うなと思いました。 なぜならボルボは
ジブリパークの凄みは、どこにあるのか? 2022年11月1日、愛・地球博記念公園のなかにオープンした「ジブリパーク」へ、弟と行ってきましたレポート。 オープン初日のチケットを、運良く買うことができまして。 入場できたのは「ジブリの大倉庫」エリアのみでしたが、とてつもなく大切で切ない何かを、ドドドと怒涛のように受け取り、たまらなくなってしまったので、言葉にしておきます。 「ジブリパーク」のちゃんとした案内や魅力は、ほかの人がエエ感じの写真とともに沢山シェアされてるので、そちらを頼ってください! ここにあるのは、創作とジブリに救われて育ったがゆえに、感情を地球投げされ、深読みしすぎながら勝手に泣いている、わたしのド感想です。 徹夜で書いたら、13,000文字になりました。どうかしている……。 【だいたい書いてあること】 ●都合により規模は小さいが、雑さがなく、宮崎吾朗監督が丁寧に愛を込めて作っ
向田邦子さんのエッセイ「ゆでたまご」が、SNSで話題になっていた。嬉しい。声が裏返った。 好きで好きで好きすぎるがゆえに、SNS上の反応ではまだ誰も書いていない感情がわたしのなかにあるので、いてもたってもいられず、恥も外聞もなく乗っかってみる。あとから恥ずかしくなってくると思うので、気が済んだらこのページは跡形もなく爆散する。 ゆでたまごは、向田邦子さんが「愛」について語る、文庫なら3ページに満たないエッセイだ。 「男どき女どき」に収録されているので、詳しくはおのおの手にとってほしい。 ざっとしたあらすじは、 小学校四年生の向田さんのクラスには、片足と片目の悪い“I”という子どもがいた。秋の遠足で、Iさんの母親が「これみんなで」と風呂敷と古新聞に包んだ大量のゆで卵を向田さんに押しつけ、向田さんはひるんだが、断ることができず受けとった。母親は歩いていくIの背中を見守っていた。運動会の徒競走で
週刊少年ジャンプの『友情・努力・勝利』だけでは、どうやらどうにもならないことがあると知ったのは、大人になってからだ。 苦境から一歩を進むために、わたしがひとつ足すとすれば『時間』である。 映画『THE FIRST SLAM DUNK』に、緻密な『時間』の物語をみた。 原作・脚本・監督の井上雄彦さんは『時間』を表現する境地にたどりついた漫画家だ。人間の本質を描こうとするほど『時間』の表現が自然と組み込まれていくのかもしれない。 漫画が視線の創作だとすれば、映画は時間の創作。 物語の体験速度をコントロールするのは、漫画ならページをめくる読み手にも委ねられるが、映画では完全に作り手だ。 映画の制作資料集の では、たった一秒か二秒のワンカットに対して、井上さんが「一瞬うれしさこみあげる」「落ちながら目線はリング方向、球と脚を伸ばすのは同時」「喜びで眉をわずかに動かす」と、納得するまで何度も直してい
ラーメン屋の行列に並んでいた。 京都の自宅へ遊びにきた母が 「ラーメン食べとうて、しゃあない」 と、眼をかっ広げて言うのである。 母はたまに、そういう猛烈な天啓が下る。 車いすなので、こぢんまりした店にはひとりでフラッと入れないからだ。 ならば、どうしても食べさせたいラーメンがある!京都の名店! 麺屋猪一! いつ来ても行列で、ミシュランにも載り、外国のお客でごった返してる。 おっ。 本店近くの“離れ”なら、今日は20分ぐらいで入れそう。 天啓!!! というわけで、並んだ。 待ってる間に、メニュー表を見る。 「1400円!?!?!?!!」 ビビった。 2年前に初めて食べたときは、900円。 昨年は、1000円だったのに。 つ、強気ィ! 原材料の高騰で値上げするのは、まあめずらしくもないけど、なかなかにウッとなる金額である。 観光で来た人、それも外国からなら、ぜんぜん出せるか。そっか。え〜〜〜
今日、たぶん、神様に会った。 よく澄んで晴れた、秋の午後だった。 総胆管結石で入院している母からLINEで連絡があった。 「退院、来週明けやって」 もともとは何週間か入院するかもと聞いてたので「あらま!」と弾んだ返信を打っていたら。 「肝臓が回復したらすぐに、また入院やって」 わたしは「あらま!」を「あらま…」にサッと打ち直した。 3日前に内視鏡での手術を終えたばかりの母だったが、結石が大きく、取り去れなかった。年内にもできるだけ早く、お腹を開く手術を受ける。この病気では、よりにもよって一番難しい手術だ。 「命にかかわるようなことはないんやって」 母の連絡を受けて、わたしはまず、年末の旅行のキャンセルに取りかかった。母が行きたいと願った場所だった。 レンタカー、飛行機、ホテル、次々と予約を取り消す。キャンセル料で3万円ほど引かれた。母からは、ドラえもんが天を仰いで大泣きしているスタンプだけ
送迎車のためならエンヤコラと大分県別府市の車屋さんまで行ったら、なんと、ほぼ新車のセレナと出会えたのだった! 車屋の馬〆さんから、くわしい仕様や納期の説明を受けていると。 電話が鳴った。 グループホームの責任者、中谷のとっつぁんからだ。ちょうどよかった。セレナを入手できたって言おう。喜ぶぞォ。 「もしもし、お姉さんですか」 「はーい!ちょっと聞いてくださいよ、中谷さん。ありましたよ!車!セレナ!ほぼ新車!7人乗り!」 「えっ、はっ……ええ……!?」 興奮のあまりたたみかけてしまった。しかし、中谷のとっつぁんの反応が予想と違う。ここは「ええっ!?」ではないのか。 いやな予感がした。 「あの、それはもう、本当に、ありがとうございます……そんないい車を……」 「どうしました?」 「ええ、あのですね、お姉さんのお耳に入れておきたいことが」 基本的にわたしのお耳には普段、右から左に抜けていくザルの役
※下着のお話なので、苦手な方はご注意ください。 わりと、こだわりの強いタイプです。 でも、これだけは決めているんです。 「モテている女」のアドバイスにだけは、一切のプライドをかなぐり捨て、従うことを。 東にパーソナルトレーニングジムがあると聞けば、私財を投じて馳せ参じ。 西に3kg痩せ見えパンツがあると聞けば、半月間もやしをすすることになろうと手に入れる。 情報に振り回されすぎて、5日間絶食ダイエットをした直後、コラーゲン鍋をかっ込んで東梅田の真ん中で吐いた時は、どうかと思ったけど。 とにもかくにも、この3年間、慎ましやかにそんな感じです。 先日、弊社ビルの同じフロアで働く、モテ女と慎ましやかに飲みまして。 「ブラデリスニューヨークのブラジャーだけは絶対買うべき」と言われまして。 行ったんですよ。飲みが終わった、その足で。 ゆるふわフットワークです。ふわっふわに浮ついてます。 ブラデリスニ
高校から帰ったら、母が大騒ぎしていた。 なんだなんだ、一体どうした。 「良太が万引きしたかも」 良太とは、私の3歳下の弟だ。 生まれつき、ダウン症という病気で、知的障害がある。 大人になった今も、良太の知能レベルは2歳児と同じだ。 ヒトの細胞の染色体が一本多いと、ダウン症になるらしい。 一本得してるはずなのに、不思議ね。 「良太が万引き?あるわけないやろ」 ヒヤリハットを、そういう帽子だと思っていた母のことなので。 「ちゃうねん!あるんやて!」 ニコラスケイジを、そういう刑事だと思っていた母のことなので。 この手の岸田家大騒動は、本気にしてなかった。 どうせ勘違いだろうと。 でもね、母が言うには。 中学校から帰ってきた良太が、ペットボトルのジュースを持って帰ってきたそうで。 お金はビタ一文持たせていなかったそうで。 文無しだったそうで。 (息子を文無しって言うのも、どうなん?) 私は昔、拾
近隣住民の人に、管理責任者である中谷のとっつぁんが早速、話を聞きに行ってくれた。 「車、いつ乗れるんかなあ」 そんな緊迫した状況はつゆ知らず、弟は別府の温泉でホクホクになっていたのだった。 ポペンッ。 スマホの通知が鳴る。中谷のとっつぁんからだった。障害者は気持ち悪い、という言葉が蘇ってボディーブローをくらったような心地になったわたしは、スマホを触るまで一度えずいた。グエェ。 「事情を聞いてきて、まあ、ひとまず、反対されている理由がわかりました」 中谷のとっつぁんが教えてくれたことには。 なんと、障害のある人が、先にあちらのご自宅を訪れていたというのだ。 わたしはてっきり、会ったこともない入居者たちに「気持ち悪い」とイチャモンをつけているんだと思っていたので、びっくりした。 グループホームは、入居を希望する人のために、見学の時間を設けている。 弟が中谷さんと初めて会う、少し前。 その日も、
スタジオジブリ『君たちはどう生きるか』を観た。 これだけを伝えたくて書いてるようなもんだけど、 なんも読まんといて。 なんも聞かんといて。 楽しみたいならば、今すぐチケットを買って、映画館へお行きなすって。 ツイッターも映画.comも、開くんじゃない! ネタバレがどうとかいう次元ではなく、映画にまつわる、どんな人のどんなささいな言葉も、なんぼの点数の星も、あなたの体験を汚してしまう。 子どものころに図書室で、だれにもなにも言われず、手にとった本がある。まっさらな心を掴んで引きずり込んで離さなかった、そんな本がある。 あるでしょうよ。 あれです。 あのときと同じ。 あなたは今、本棚の前に、ひとりで立ってる。 おもしろかったらとか、つまんなかったらとか、考えたらあかん。子どもを連れて行って楽しめるかも、どうでもいい。 楽しんでもいいじゃん。寝てもいいじゃん。 体験のほうがだいじ。何十年か先で、
2021年にわたしが買ったり、読んだり、観たりしてご満悦したものを1万文字で紹介します。書きすぎ。 ただね、こう、人間が言う「好きなもの」ってのはあまり信用ならんわけですよ。なぜなら、われわれは純粋ではないので。好きなものだけを遊び散らかしていた三歳児の頃とはもう違う。大人になりました。大人になりすぎたのかもしれません。 それを好きだということで、社会的にどう見られるか、どんな地位を築けるか、という打算がとんでもない速さで、できるようになってしまった。ちくしょう。誰かわたしの頭をこん棒のようなもので殴って三歳児に戻してくれ。 しかし。たとえ無意識にイキりまくっているとしても。わたしは、出会ってよかったものを、「良すぎんか??????」と叫びたいのだ。 ということで、よろしくお付き合いください。 リンクから買おうがわたしには1円も入りませんし、PR費用も一切頂いておりませんので、安心してどう
このnoteは、Googleの「#近所は宇宙だ」という取り組みに賛同し、依頼をもらって書きました。個人商店をはじめとしたスモールビジネスは、コロナの影響でたいへん困っています。みんなで「近所のお店」を応援し、冒険と発見で、スモールビジネスを元気にしよう。「Googleさん、めっちゃええこと言ってくれるやん」と諸手をあげて賛同したはいいが、行きつけの近所の店がまったく思い当たらない。 神戸の田舎町から東京に出稼ぎにきて、もう4年が経つというのに。よく行く店といえば、コンビニ、スーパー、すぐさま飯が出てくるチェーン店くらいだ。 これはやばい。 実はやばさだけは、前から薄々と感じていた。 知らない人との会話が、苦手すぎるのだと。 「何名様ですか?」「ご注文は?」以外の声をかけられると、「あっ」「えっ」と反射的に言ったのち、口をぱくぱくさせてしまう。たとえそれが、どれだけフレンドリーであっても。
子どものころ、大人気のお歌があった。 「奈美ちゃん、奈美ちゃん、どっこですか〜♪」 先生が歌えば、 「ここでっす、ここでっす、ここにいます〜っ♪」 子どもらは大喜びで、返事をする。 母が歌う。 「良太くん、良太くん、どっこですか〜♪」 弟はいつもどこかにいたけど、それは絶対に、ここではなかった。 ジッとしてられない弟だった。 だまってられない弟だった。 保育園でも、小学校でも、歩道でも、公園でも、どこでも無尽蔵に跳ねまわっていた。軌道がまったく読めないので、スーパーボールみたいだ。 捕まえられるのは、母だけ。 母が弟を取り押さえるときの爆発的な初速は、ご近所の間で「神戸市北区のフローレンス・グリフィス・ジョイナー」と褒め称えられていた。 小学校へ入学すると、弟はさらに速く、そして給食によって重くなり、体当たりでしか止められなくなった。 母はまもなく「神戸市北区のリーチマイケル」の称号も得た
2月16日の今朝、日本テレビ「スッキリ」にコメンテーターとして、出演させてもらいました。 母の入院や、祖母と弟の暮らしのことで、えらいことになっていたので、4日前くらいまで「これ、出演できるのか……?」と思ってました。 だけど、コロナ対策で一切、顔を見て話すことができない母(親の顔が見てみたいという言葉をマジの用法で使った)が、病室からテレビでわたしの顔を見ることを楽しみにしていました。地上波を使った面会て。 それに、いまこういう類まれなる経験をしてるからこそ、伝えられることがあるんじゃないかと考えなおしました。 起こってるペースこそめずらしいけど、こまかく見ていくと、みんながいつも苦しんでいることだから。 そんなわけで、元気に出演させてもらいました。 超絶に夜型のわたしが。 4時30分起きで。 「スッキリ」って8時から放送なんだけど、6時にはスタジオに入って、メイクやら打ち合わせやら、す
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