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80年代半ば、レゲエ音楽にデジタル革命をもたらし、“モンスター・リディム”と称される「スレンテン」。その誕生の裏側には、カシオ計算機(本社:東京都渋谷区)の電子キーボードと新卒の女性開発者の存在があった。スレンテンのルーツ・奥田広子さんが、初めてベールを脱ぐ。 スレンテンのルーツはカシオトーンの音源 ジャマイカのシンガー、ウェイン・スミスの『Under Mi Sleng Teng(アンダ・ミ・スレンテン)』は、レゲエの世界に革命をもたらしたと言われる。友人のノエル・デイヴィーと2人で、カシオの電子キーボードを使って作曲したダンスホール・レゲエだ。1985年に大ヒットすると、デジタル音の心地よく、常習性のあるリズムは、またたく間に世界中に広がっていく。 レゲエでは、ドラムとベースのリズム体を「リディム」や「バージョン」、「オケ」などと呼び、これを繰り返すことで曲に鼓動を生む。同じリディムで複
インターネットの普及で紙媒体の衰退が著しい。中でも新聞業界の苦境は深刻だ。業界の雄として長年君臨してきた朝日新聞社とて例外ではない。2020年度決算では創業以来最大となる大赤字を記録、早期退職者の応募には数多くの社員が応じるなど、かつてない激震が築地本社を襲っている。一体、朝日新聞社の中で何が起きているのか。同社OBがその内幕を明かす。 デジタル化の波に乗り遅れた朝日 朝日新聞社に「エー・ダッシュ(A’)」という社内報がある。季刊で発行される60ページほどの冊子だ。新規事業の説明や職場の話題などが紹介されている。2021年の夏号は、新聞の電子版など同社が力を入れるデジタル事業の特集を組んでいるが、時代の波に翻弄(ほんろう)される大手プリントメディアの苦悩や窮状が紙背からじわりとにじみ出す内容になっている。 社内報の冒頭は、新社長が21年6月の株主総会に報告した20年度決算や個別の事業報告に
ラブホテルは日本が生んだ文化——。そう語るのは、大学時代からラブホテルをテーマに選び社会学的なアプローチで研究してきた金益見さん。この特異な性愛空間の変遷について話してもらった。 金益見 KIM Ikkyon 神戸学院大学講師。1979年大阪府生まれ、在日コリアン3世。神戸学院大学大学院人間文化学研究科地域文化論専攻博士後期課程修了。著書に『ラブホテル進化論』(文藝春秋、2008年、<第18回橋本峰雄賞受賞>)、『サブカルで読むセクシュアリティ――欲望を加速させる装置と流通』(共著、青弓社、2012年)、『性愛空間の文化史――「連れ込み宿」から「ラブホテル」まで』(ミネルヴァ書房、2012年)ほか。 ラブホテルは「日本の文化」 (提供:金益見) 和製英語が世界に広まった例はあまりないが、その数少ないひとつが「ラブホテル」。海外のメディアが日本特有の空間として、繰り返し面白おかしく取り上げて
18~34歳の未婚者のうち、男性の約70%、女性の約60%は異性の交際相手がいないことが国立社会保障・人口問題研究所が実施した全国調査で明らかになった。5年前に比べ、男性は8ポイント以上、女性は9ポイント以上も増加。「恋愛しない、できない若者」が急速に増えている実態が浮き彫りになった。 この調査は2015年に実施した「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)で、同研究所が9月15日に結果の概要を公表した。独身者を対象にした調査では、無作為に選んだ900調査区に住む18歳以上50歳未満の全ての独身者を対象にし、8754人(有効回収率76.5%)から回答を得た。 男性未婚者の3割が「異性交際望まない」それによると、「交際している異性はいない」と回答した未婚者の割合は男性69.8%(前回2010年の調査では61.4%)、女性は59.1%(同49.5%)と、いずれも5年前より増加した
人口2万5千人の留萌市から本屋が消えたのは2010年12月。それから7カ月後、人口30万人以上でないと出店しないルールを持つ三省堂書店が出店した。それはどうしてだったのか。 4月だというのに、その日は雪がちらついた。地元の人は5月の連休が明けるまではスタッドレスタイヤを外さないという。ゆったりとした坂道を登りつめると、眼前に日本海が広がる。北海道の西端にある留萌の海岸からは水平線の下へと沈むまん丸で真っ赤な夕陽を見ることができる。 留萌の坂道 美しい地名はルルモッペ(=潮の静かに入るところ)というアイヌの言葉に由来する。明治期ににしん漁により港町として留萌の地が拓けた。炭鉱業も栄え、1910年には留萌本線が開通、続いて1932年には留萌港が竣工した。 昭和の頃、正月ともなると、新年を祝う人たちがこの坂道をぎっしりと埋め尽くしたものですよ。 タクシーの運転手が問わず語りに聞かせてくれた。通り
米国のインターネットサイトThe Journal of Democracy に2022年2月22日に公開された標記の論文(原題はWhat Putin Fears Most)を翻訳し、日本語版読者の皆さんにお届けする。 ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。ロシアのプーチン大統領は皆さんに、侵攻はNATO(北大西洋条約機構)のせいであると信じてもらいたいと考えている。動員された19万人に上るロシア兵や海兵ではなく、NATOの東方拡大がこの危機の主因であるとしばしば(この侵略が始まった際のロシア国民に向けた演説を含めて)主張してきた。 「ウクライナ危機は西側諸国の過ちにより引き起こされた」と主張する米国の政治学者ジョン・ミアシャイマーの2014年の『フォーリン・アフェアーズ』の挑発的な論考以来、NATO拡大に対するロシアの反動という物語がウクライナでこれまで継続してきた戦争を説明するための(正
注:朝鮮日報記事データベース(2011年2月4日時点) において、「日本」という用語を含む記事全体の中で、どれだけの記事が歴史認識紛争や領土紛争に関わる「用語」を含むかを示した(100%=1.00)。 黄=最も割合の多い時期/青=それに続く4つの時期 (出典: Kimura Kan, “Discovery of Disputes: Collective Memories on Textbooks and Japanese-South Korean Relations,” Journal of Korean Studies, Volume 17, No.1, Spring 2012) だがそれが韓国における「反日」運動が盛り上がりを見せた結果かといえば、必ずしもそうではない。事実、「反日」デモへの参加者は、中長期的には減少する傾向を見せている。時に大規模な「反日」デモが行われる中国と異なり、
今の九份に愛着を感じない「妙さん、九份を案内してください」「一青さんと九份に行きたい」 こんな言葉を掛けられるたびに、私は暗い気持ちになる。なぜなら、人を案内できるほど、私は今の九份に愛着を感じていないからだ。 九份の街は、台湾の新北市瑞芳区の山間部にあり、中心都市の台北駅から車で1時間弱の場所にある。台湾旅行のパンフレットには、大抵、メインストリートに連なる赤ちょうちんと急な石段の九份の街並みの写真が掲載されている。スタジオジブリのアニメ「千と千尋の神隠し」のモデルになった場所だと信じられており(実際は違うらしいが)、日本人の間で九份の知名度は、台湾を象徴する観光地と形容していいほど、不動の地位を築いている。 ところが、私は、現在の九份がどうしても好きになれない。 友人や日本の親戚を連れ、九份に行くたびに、がっかりさせられる。 「没有(ない)」「趕快(早くして)」「不知道(知らない)」「
日本の日常にすっかり溶け込んだ異国の料理店。だが、そもそも彼らはなぜ、極東の島国で商いをしているのか──。東京・東十条にはバングラデシュ出身者が集まるコミュニティ「リトル・ダッカ」がある。この街のムスリムたちに人気の店「プリンスフードコーナー」の店主は、祖国では5つ星ホテルで腕を磨いた本格派。そんな凄腕が来日した理由とは。 知られざるエスニックフードの名店 東京都北区、万国旗がはためく昔ながらの東十条駅前商店街。この商店街には毎週金曜日になると、見慣れない服装に身を包んだ男たちがどこからともなく集まってくる。 頭にちょこんと載せた白い帽子と、首から手首、足首までを覆ったふっくらとした服装。あごひげをたくわえた人も少なくない。彼らはムスリムと称されるイスラム教徒たちで、駅から徒歩3分の小さなモスク「マディナ・マスジド東京」に吸い込まれていく。金曜日はイスラム教の礼拝が行われる、大切な一日だ。
新型コロナ問題で台湾が教えてくれたこと―マイノリティーへの向き合い方でその国が真の「先進国」かどうかが決まる 社会 暮らし 2020.04.30 世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスについて、台湾は徹底的な水際・封じ込め対策で成功している。感染対策がうまくいった背景に、筆者は台湾が歩んできた歴史の全てが生かされた結果だと考える。特にマイノリティーやジェンダー、社会的弱者への向き合い方に表れており、学ぶべきところが多い。 感染者ゼロの日 4月14日の夜、台湾台北市のランドマークである円山大飯店の客室が初めて「ZERO」という言葉を灯した。新型コロナウイルスCOVID-19について、台湾で新規感染確認0人が報告されたのを受けて、これまで努力を重ねてきた人々をたたえ、ねぎらうための輝きである。 総感染者数―429人、新感染者―0人、死亡者数―6人(4月28日現在) その後、海外より帰台し
最近の日本社会では、嫌韓・嫌中の「ネット右翼」が存在感を増し、ヘイトスピーチの広がりも懸念されている。「ネット右翼」とは実際どんな人たちで、今後さらに勢力を伸ばすのか。その実像に迫る。 「ネット右翼=貧困層」は根拠なし日本における「ネット右翼」(批判の文脈で「ネトウヨ」、肯定の文脈で「ネット保守」と言い換える場合もある)とは、ネット空間に自閉した中で右派的言説を好むユーザーのことを指し、第一に「嫌韓」、そして「嫌中」「反既成の大手マスメディア(但し産経新聞を除く)」「反東京裁判史観」を強く志向する。これは後述する「保守層」と現在においてかなり重複しており、そして「ネット右翼」と「保守層」は互換関係にある。 2013年初頭に私が独自に行なった調査によると、「ネット右翼」の平均年齢は40歳前後の中年層であり、その75%が男性で、特に東京都・神奈川県など首都圏の大都市部に居住する、平均年収でいえ
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この落ち込みはどこまで続くのか 何も言わずグラフを見ていただくだけで、日本の出版の世界がどのような状態に置かれているか、お分かりいただけると思う。 書籍、雑誌合計の出版販売金額は、高度成長期以降、一貫して高い伸びを続け、オイルショック下でも成長を続け、バブル経済崩壊でも膨らみ続けて、1996年、2兆6563億円に達した。高度成長期初期の1960年に比較すると実に28倍。その間、対前年比で落ち込むことは一回もなかったのである。 しかし、この時をピークに転落が始まる。以来、17年間で36%落ちて2013年には1兆6823億円。2014年も月ベースでは前年同月比でマイナスが続いており、通年でも前年割れは確実である。その結果、バブル前の80年代前半の水準にまで戻ってしまったのであるが、まだ落ち足は止まっていない。 ピークからの下落率をみると、書籍の28%減に対し、雑誌は42%減。雑誌の場合、98年
7月15日に発売された日本の雑誌、『BRUTUS(ブルータス)』台湾特集号の「表紙」が台湾メディア上で「炎上」と言っていいほど大きな話題になった。 この騒動の前提として、『BRUTUS』はすでに流行に敏感な台湾の人たちから格別な支持を受けていたことがある。台湾の書店やカフェ、クリエイターの手元には必ずと言っていいほど置いてあるこの雑誌は、若い世代の台湾カルチャー、つまり日本や米国・欧州の文化を吸収しながら「台湾文化とは何か」を考えつつけん引してきた世代にとって、なくてはならない雑誌で、だからこそこれだけ注目が集まったと言えよう。 「街の表情」を巡り賛否両論表紙は台南の有名な美食街である「国華街(グオホアジエ)」の路上写真。 これまでの日本の雑誌の台湾特集では、あくまでも主役は「食べ物」や「街の雑踏の中にいる人物」だったが、今回の主役は「街の表情」そのものである。 台湾で論争の発端となった意
1945年8月6日に広島に落とされた原子爆弾によって亡くなった犠牲者の中には、12人の米兵捕虜も含まれていた。アマチュア歴史家の森重昭さんは、40年以上を費やし、被爆米兵の遺族を探し当てた。アメリカのバリー・フレシェット監督が、その記録を『灯篭流し(Paper Lanterns)』にまとめた。 森 重昭 MORI Shigeaki 1937年生まれ。アマチュア歴史家。広島原子爆弾を経験。2008年「原爆で死んだ米兵秘史」(光人社)を出版。広島で妻・佳代子と暮らし、2人の子供がいる。 バリー・フレシェット Barry FRECHETTE 1970年生まれ。1992年米ストーンヒル大学卒業。25年間、ボストンで広報の短編ビデオを初めとする制作の仕事に携わる。現在Connelly Partnersでククリエイティブ・サービスのディレクターを務める。「灯篭流し(Paper Lanterns)は、映
子どもの頃から日本に興味を抱き、ウィーン大学で「日本学」を専攻後、外国人神主になったウィルチコ・フローリアン氏。「神道は宗教ではなく、何千年も継承されてきた素晴らしい智恵」という。ウィルチコ氏に神道の精神性について聞いた。 ウィルチコ・フローリアン WILTSCHKO Florian 1987年オーストリア・リンツ生まれ。幼い頃から日本に興味を持ち、14歳の時に家族とともに観光で初来日し、ますます関心を高めていく。兵役後、ウィーン大学で「日本学」を専攻。2007年縁あって名古屋市の上野天満宮に入り、住み込みで神道を学ぶ。その後、母国に戻りウィーン大学を卒業、再び来日し國學院大學神道学専攻科に入学。専門課程を経て、2012年渋谷区の金王八幡宮の権禰宜(ごんねぎ)に任命され、4年間務める。2016年5月からは、結婚にともなって三重県津市久居の野邊野神社に移る。 日本は世界の正倉院——ウィルチコ
日本の「右傾化」が国内外のメディアで盛んに論じられている。それは日本の現状を正しく反映しているのか。集団的自衛権行使容認やヘイトスピーチなど、いわゆる「右傾化」現象の本質に迫る。 「右傾化」論を読み直す 昨今、日本および海外のメディアでは、現在の日本における「右傾化」の傾向がしばしば論評の対象になっている。たとえば、『ウォールストリート・ジャーナル』(電子版、2014年2月26日配信)には、「アジアでの緊張関係が日本に右傾化をかきたてた」(Tensions in Asia Stoke Rising Nationalism in Japan)と題する長文の署名記事が載っている。そこでとりあげられているのは、一方では『WiLL』のようなナショナリストの雑誌が売れ、中国や韓国をあからさまに侮蔑する書物が大量に刊行され、選挙においても同様の主張をする候補者が選挙で多くの票を得るといった社会の「全体
「日本の科学研究は過去10年で失速」と報じた英科学誌「ネイチャー」の3月の特集は、若手研究者たちの厳しい現状を浮き彫りにした。先端科学研究に携わる筆者が、大学の研究体制の構造的問題を指摘する。 減少をたどる日本発科学論文日本の科学にとって憂うべきレポートが、最近、英科学誌「ネイチャー」(3月23日号) に掲載された。過去10年間に日本の科学は失速し、他国に遅れをとっている、という内容である。わが国のニュースではそろって「衝撃的」と報道されていたが、当事者、特に大学で研究に従事している人たちにとっては、日頃からの懸念が裏付けされたにすぎない。 「Nature Index 2017 Japan」と題されたそのレポートの骨子は、複数のデータベースに基づいて日本からの論文発表の経年変化を他国と比較したものだ。また、なぜそのような状況に至ってしまったのかについて考察している。その内容を簡単に紹介しな
普通の記事の体裁をとっているが、実は特定商品の広告という「ステルスマーケティング」がネット上を横行している。情報メディアの主流となりながら、コンテンツの作り手が十分な収益を上げるビジネスモデルが容易に成立しないネット世界の日陰の部分を分析する。 ますますウェブ広告が敬遠される時代ユーザーは広告が嫌いだ。 水道橋博士インタビュー 家庭を持つと芸人は駄目になる? 15年2月。私がCINRA.netというウェブメディアのステルスマーケティングを指摘したら、その会社は自社ブログで「ステマの何が悪い」と一度は開き直ったあと、さすがに問題に気づいたのか、これからはやめます宣言をし、過去のステマについては修正すると話していた。そこから3カ月ほど経って、少しは良くなっているのかなと見物にいったらタレントのインタビューの途中に突然出てくる「サントリー『伊右衛門 特茶』」はいまなお「PR」とも付記されず、今日
日本は「難民に冷たい」か? 日本が難民の定住受け入れを決めたのは、1978年。インドシナ三国(ベトナム、ラオス、カンボジア)で相次いで成立した社会主義政権を拒否する約150万人(UNHCRによる)が難民化し、諸外国から受け入れを求める強い圧力を受けてのことだった。78年に3人、79年には2人だったが、その後は受け入れ態勢が急速に整備され、これまでに家族の呼び寄せを含めて1万1319人を受け入れ、この制度は終焉した。 難民とは「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいるものであって、その国籍国の保護を受けることができないかまたはそれを望まない者」(1951年難民の地位に関する条約第1条)を指す。庇護を求められた場合は、人道的見地に立って、これを受け入れることが国際的な義務である
1月29日、漫画家の芦原妃名子(あしはら・ひなこ)さんの訃報が伝えられた。自身の漫画が原作の日本テレビ系ドラマ『セクシー田中さん』を巡って、同局側の内容改変への不信感から終盤の脚本を自ら執筆する異例の事態になった経緯を公表した直後のことだった。ネット上ではドラマ関係者への批判の声が高まり、日テレや原作を出版した小学館はそれぞれ事実関係を調査中だ。クリエイターが作品を守るために行動を取らざるを得なかった悲劇の背景には、どのような問題があるのか。 芦原さんは日テレに「必ず漫画に忠実に」と要請 日本テレビ系列で2023年10~12月にドラマ化された漫画『セクシー田中さん』の原作者、芦原妃名子さん(50)が1月29日、栃木県日光市内で亡くなっているのが発見された。報道によると、自宅からは遺書が見つかっており、警察は自死とみて調べを進めているという。 芦原さんはドラマ化を許可する際、原作の版元で著作
日本のミュージックシーンに現れた超新星、「宇多田ヒカル以来の逸材」と言われるシンガーソングライター藤井 風はこの数年で最も大きな注目を集めるニューフェイスの一人だ。この破格のスケールを持ったアーティストについて、CHEMISTRYや平井堅、JUJU……のプロデュースなどで知られる、日本のR&Bシーンを主導してきた松尾潔氏はどう評価するか。 松尾 潔 MATSUO Kiyoshi 早稲田大学在学中よりR&B/Hip-Hopを取材対象としたライター活動を展開。当時困難とされたジェイムズ・ブラウンやクインシー・ジョーンズの単独インタビューをはじめ、豊富な海外取材をベースとした執筆活動を続け、久保田利伸との交流をきっかけに90年代半ばから音楽制作に携わる。プロデューサーとして平井堅、CHEMISTRY、JUJU、東方神起、三代目J Soul Brothersらを手がけて成功に導いた。シングルおよび
社会を震撼させた残忍な川崎の中学1年生殺害事件。だが被害者、加害者の少年たちの生活環境を通して見えてくるのは、母子家庭、貧困、移民政策の欠如など、幾重にも重なった日本社会の根深い問題だ。 社会につながることのできない少年たち 2015年2月20日未明、川崎市川崎区の多摩川河川敷で、中学1年生上村(うえむら)遼太さん(13歳)が亡くなった。全裸で真冬の川で泳がされたあげく、顔などを繰り返し切りつけられ、工業用カッターナイフで首を深く傷つけられたのが致命傷となった。近くに結束バンドが落ちており、膝にはあざがあった。手足を縛られ、膝をついた状態で暴行を受けたのではないかと推察された。 残忍さが際立つこの殺人に関与したのは3人の少年で、18歳の無職のAが主犯として殺人罪で逮捕された。両親と兄弟がおり、母親がフィリピン人だ。Aは高校を中退していたが、中学時代の同級生B(17歳)と、一歳年下で、別の中
これらの即身仏を護持しているのは、いずれも江戸時代に湯殿山信仰の拠点となった寺院である。湯殿山の御宝前(ごほうぜん、明治以降は御神体)は山そのものでなく、温泉の湧き出る巨岩。温泉に含まれる鉱物が固まった「温泉ドーム」と呼ばれるもので、湯殿山は古来より出羽三山の奥の院として崇められてきた。 1641年に羽黒山が天台宗に統一されて以降、出羽三山では天台宗と真言宗の対立が深まった。徳川幕府の公認を得て巨大な勢力となった天台宗に対して、真言宗側は寺社奉行に訴訟を起こして、「三山のうち、羽黒山・月山は天台の山、湯殿山は真言の山」という裁定を得た。 即身仏となったのは一代限りの修行者を意味する一世行人(いっせいぎょうにん)で、門前集落の出身ではなく、外部から来た下層の宗教者である。真言宗側は、湯殿山で一世行人を修行させることで宗教的能力を体得させ、布教の前線で活動させて天台宗に対抗した。江戸時代に庄内
神の言葉である『コーラン』を美しく書くために1000年以上もの時間をかけて磨かれてきたアラビア書道。ピカソもその美を愛した、世界でも例のない文字芸術に挑んだ日本人がいる。本田孝一、イスラム世界でも認められた日本人書家はアラビア書道で何を伝えようとしているのか。 本田 孝一 HONDA Kōichi アラビア書道家。日本アラビア書道協会会長。大東文化大学国際関係学部教授。1946年神奈川県生まれ。東京外国語大学アラビア語学科卒業。1974年、パシフィック航業に入社。約5年間の中東滞在中に、現地のアラビア書道家により手ほどきを受ける。帰国後、アラビア書道を独習。国際アラビア書道コンテスト審査員奨励賞をはじめ、数々の賞を受ける。2000年、トルコのハッサン・チェレビー師より書道印可(イジャーザ)を授与される。主な著書に『パスポート初級アラビア語辞典』(共著、白水社)、『アラビア語の入門』(白水
海賊版漫画サイト対策として、漫画家の赤松健さんは作者許諾の下に過去作品を広告付きで無料配信し、利益を作者に還元する「マンガ図書館Z」を運営している。また、自動翻訳やYouTubeなどを活用した実験プロジェクトなど、デジタルで読む漫画の未来を切り開くための試みに精力的に取り組む。 赤松 健 AKAMATSU Ken 1968年生まれの漫画家。別冊少年マガジンで『UQ HOLDER !』連載中。中央大学文学部卒。 代表作に『魔法先生ネギま!』『ラブひな』(第25回講談社漫画賞)など。公益社団法人・日本漫画家協会の常務理事。2010年から「マンガ図書館Z」(開設当時は「Jコミ」)を運営している。 試行錯誤する海賊版対策 アクセス数1億超と言われた「漫画村」(2018年閉鎖)など、悪質な海賊版サイト対策のため、政府はさまざまな対策を推し進めようとしている。だが、ネット利用者のアクセスを強制的に絶つ
『セーラームーン』『プリキュア』など世界的人気を得た日本発「魔法少女」たち。西洋の「魔女」をベースに独自の進化を遂げたガールヒーローたちからジェンダーをめぐる日本の少女たちの闘いが見えてくる。 日本のテレビに「魔女」到来(1960年代)―「サリー」と「アッコちゃん」 ドジで勉強も嫌い。おまけにスポーツも苦手。いつもパッとしないけど、魔法の力で変身すれば、強くカワイイ「魔法少女」として、颯爽(さっそう)と敵に立ち向かう・・・。 1990年代世界的にヒットした『美少女戦士セーラームーン』のインパクトによって、「魔法少女」(magical girl)は、魔法で変身(ドレスアップ、メークアップ)し、ステッキなどの魔法アイテムを駆使して勇敢に敵と戦う、<変身戦闘>魔法少女として、国内外で認識されている。しかし、「魔法少女」(魔法を使う少女)アニメは、国産テレビアニメの黎明(れいめい)期である1960
日本の少子化の背景には、若い世代の間に根強く残る伝統的な家族意識がある。かつて成人後も親に依存して生活する若者たちを「パラサイト・シングル」と名付けた山田昌弘中央大学教授が、日本の家族の現状と今後を解説する。 日本とヨーロッパの少子化の違い 同じ少子化現象といっても、日本(及び東アジア)と北西ヨーロッパ(英・仏・独、北欧、オランダなど)の少子化を同列に扱うことはできない。端的に言えば、北西ヨーロッパでは、若い人のライフスタイルの選択肢が増えたために起こっている。一方、日本では逆に、ライフスタイルの選択肢がないために子どもの数が減っているのである。 1960年頃までは、欧米先進国においても「夫は仕事、妻は家で、子どもを育てる」という家族が一般的であった。 しかし、 北西ヨーロッパでは、1960年代以降、「ライフスタイル革命」というべきものが起きた。 フェミニズム運動などによって、伝統的な家族
1970年代半ば以降、日本ではストライキの減少傾向が続き、国民の関心も大幅に薄れている。なぜストは減ったのか。経済的に困難な時代だからこそ、ストの意義を改めて見直す必要があるのではないだろうか。労働法の専門家が分析する。 「今日は、バス会社でストライキがあるから、途中まで歩かなくちゃならないよ」 1971年生まれの筆者には、小学生の時分、春になると、親がそのようなことを言いながら出勤していった日の記憶がある。春先には決まって、ストライキのために交通機関が止まるニュースが流れていたものだ。戦後の日本では、労働組合と経営側との労使交渉において、1955年に「春闘」と呼ばれる方式が開始され、1960年代以降に定着をみた。この「春闘」方式とは、日本で主流の企業別組合(特定の企業や事業所ごとに、その企業の従業員のみを組合員とする労働組合)によって行われる企業ごとの賃金交渉を、毎年春に足並みを揃えて短
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