KIKUI Shinya 2022 / Photo by Pixabay 会話が知性の催淫剤であるように、孤独は精神の催淫剤だ(シオラン) 私は〈孤独依存症〉であった。 この病名は一般に知られていない。なぜなら私がさっき適当に思いついた造語だからだ。 アルコール依存症やギャンブル依存症がそうであるように、「孤独」もまた人を失墜させる病巣である。 しかも「孤独」はどこにでも偏在し、いたるところ目に見えぬかたちで心身に侵襲(しんしゅう)してくる。 まるで精神的なハウスダストだ。 部屋の中で静かに過ごしているだけだというのに、いつのまにか体内をむしばみ、解消困難な不調をもたらす。 住居と違って自分の体から引っ越しができない以上、この「孤毒」は静かに積もっていく。 アルコール依存症やギャンブル依存症と同様に、「孤独」にも依存性がある。 初めは日常の延長にすぎない、気まぐれな塞(ふさ)ぎ込みなのだ。