ヒラメやカツオなどの鮮魚をはじめ、メヒカリ、サバの干物が並ぶ。いわき市小名浜のさんけい魚店の三代目女将(おかみ)、松田幸子さん(37)の元気な声が響く。 「旬の魚が入ってますよ」「いつものお刺し身盛り合わせですね」。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から九年半、漁業関係者にどんなに厳しい逆風が吹いても、一日も早い本格操業を願い、頑張ってきた。 しかし、東電福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水について、政府の小委員会は最終報告書で海洋放出、大気放出するのが現実的な選択肢として政府に提言した。 今、処理水を保管するタンクを置く場所が原発敷地内に少なくなってきており、処分方法の決定が近づいているとされている。これまでの苦労が思い出され、未来への不安が膨らんでくる。 原発事故直後、長年通う常連客からも「福島県沖で捕れた魚は本当に安全なのか」「干物は放射性物質で汚染されてい