日本の入れ墨は、出現や消失を繰り返し、江戸時代に形も美しさも大きく発展する。その知られざる歴史をひも解く。 古代から日本各地で習慣とされたイレズミ 皮膚に傷をつけて色素を入れ、文様や図、記号、線などを残すイレズミは、人類の最も古い身体加工法の一つで、世界中で行われてきた。割礼(かつれい)や纏足(てんそく)、首の伸長などと同様に起源は定かではない。しかし、日本で出土する土偶や埴輪(はにわ)の線刻から、古代よりイレズミの習慣が存在したと推定される。 日本の南端にある奄美群島から琉球諸島にかけて、女性は「ハジチ」と呼ばれるイレズミを指先から肘にかけて入れる習慣があった。記録として残されているのは16世紀からだが、それ以前から行われていたと推測される。特に手の部分のイレズミは、女性が既婚であることを表し、施術が完成した際には祝福を受けるなど、通過儀礼の意味合いも持っていた。島ごとに施術される範囲や