展示をつくる 水族館の展示は大洋や水辺の自然の抽象です。日本の伝統的な芸術である日本庭園、盆栽などの中には、高度な自然の抽象があります。伝統芸術の中での自然の抽象は、水族館の水槽デザインの進歩の中に反映されています。成功した展示では自然の抽象化がうまくなされています。 水槽の中に、水生生物の生息環境をつくり、観覧者の鑑賞に堪える自然を再現することは、水族館の展示の最重要テーマでもあります。水槽展示にいかに自然を象徴するかに筆者は20年以上取り組んできました。今回は上野動物園水族館、葛西臨海水族園、アクアマリンふくしまを通じた、筆者の取り組みをもとにまとめました。水生生物の生息環境としても、それを鑑賞する側からも満足のいく水槽デザインとはいかなるものか――。 水槽デザインの「アクアスケーピング(Aquascaping)」 ランドスケープ(Landscape)は、景観、都市計画と訳されます。1