副題「われわれの内にひそむ女神ベローナ」。第二部「戦争の眩暈」は、戦争が人間の心と精神をいかにひきつけるかを、フランスを中心に研究したものである。 ――国家と軍隊を一体化しようとする傾向は、国民戦争を生む一方、平等で全体主義的な国民を生む結果となった。……(一方)古代中国に見られるように、文明が軍隊と国民とを分離しようと努力しこれに成功した場合(もある)。 彼の考えるジレンマとは、人間の社会的不平等が法制化されると、戦争は遊戯あるいは儀式のようなものとなる。人間が権利上平等である場合、戦争は無制限で仮借なき大量殺戮戦に変わっていく。 第1部 戦争と国家の発達 第一章 戦争の原型態と小規模戦争 戦争とは第一に組織行動であり、「破壊のための組織的企て」である。戦争の方法は、そのときの文明の状態と密接に関係している。戦争は文明とともに成長し、ときに文明を生みだす。社会の状態によって、戦争は社会の