私が『反=文藝評論』に載せ、『村上春樹スタディーズ05』にも再録された村上春樹批判の評論中に、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に出てくる「太った美人の少女」の、やたらと主人公にセックスを迫る描写の引用がある。果して英語版でもここはそのまま訳してあるのか、と今日駒場の図書館でアルフレッド・バーンバウムの英訳を見てきた。「31」で女が、「ねえ、精液を呑んでほしくない?」と言うところは訳してあったが、その後、もう一度女が「精液呑んでほしくない?」と言い、「あたしじゃあ興奮しない?」かなんか言って、主人公が、興奮している、勃起しているから、と言って見せる部分は、カットされていた。そりゃあ、そうだろう。こんなところまで訳したら、村上春樹はポルノ作家だと思われるよ。思わない日本の読者が、あまりに変。 川端康成の『雪国』に「この人指し指がいちばんよく君を覚えていたよ」というエロティックなせ