先日,神戸製鋼所の佐藤廣士代表取締役副社長にインタビューさせていただく機会に恵まれました。同社の技術系のトップである佐藤副社長は,海水淡水化装置に利用するチタンパイプの防食技術の研究で学術功績者らに贈られる紫綬褒章を2003年春に受章されるなど,研究者として輝かしい経歴をお持ちの方です。そんな佐藤副社長がインタビュー中に意外(少なくとも私には)なことを仰いました。「僕は研究者の皆さんに勧めているんです。工学博士を取ったら,それまでやってきた研究を捨ててしまうことを」。 佐藤副社長は,チタンの表面処理などの研究で工学博士の学位を取得されました。紫綬褒章を受章されるくらいですから,私は,佐藤副社長はその道一筋の研究者かと勝手に想像しておりましたが,お話を聞くと全くそうではありません。工学博士の学位を取得されると,ご自身の希望でチタンから鉄鋼の研究に移られ,その後もアルミ,機械,工具と,同社の要