群れで暮らし、たくさんのメスを率いるライオンのオスは絶対的王者というイメージがある。しかし生物学者の田島木綿子さんは「実は交尾の主導権はメスにある。オスは一斉に発情するメスたちの要求に応えて1日50回以上の交尾を繰り返すことも。しかし、それを拒否すれば群れから追放されてしまう」という――。 ※本稿は、田島木綿子『クジラの歌を聴け』(山と溪谷社)の一部を再編集したものです。 トゲトゲの陰茎で排卵を促すライオンのオス 哺乳類の陰茎は、基本的に「弾性線維型」と「筋海綿体型」の2種類に分けられる。要は線維質が多いか、筋肉と血管が多いかの2つに大別される。 筋海綿体型の陰茎をもつ動物の中には、交尾中にメスの排卵を促すという、さらなるツワモノも存在する。ライオンをはじめとするネコ科の動物である。 ネコ科のオスは、陰茎の表面に「角化乳頭(陰茎棘きよく)」と呼ばれる無数のトゲ状突起があり、交尾中にこのトゲ